一体、TPP交渉参加を巡って昨日と本日の間に何が起こったというのだろうか。
本日は一斉に、既存メディアがTPP交渉参加の全11カ国から日本がTPP交渉に参加を承認されて、7月のTPP交渉から参加すると報道している。
しかも、奇怪なことは誰の言質なのか曖昧にして断定的な表現をしたことである。
強いて挙げれば、朝日新聞では「交渉関係者」、NHKは「政権幹部」、FNNは「関係者」、ANNは「政府関係者」、MBSは「関係者」との表現であり、その他の既存メディアはそれさえ報じず断定するのである。
言ってみれば検察のリークと同様に政権のリークによる世論誘導と言えるだろう。
まず、おどろおどろしい政権リークによる既存メディアの偏向報道は下記の通り。
読売新聞:TPP全参加国が承認へ…日本、7月に交渉合流
朝日新聞:TPP、7月に交渉入り 全11カ国が日本参加承認へ
毎日新聞:TPP:日本の交渉参加 全11カ国が承認へ
日経新聞:TPP閣僚会合、19日午後開催 日本は7月から交渉参加
産経新聞:日本は7月マレーシア会合で初参加へ 全11カ国が承認へ
東京新聞:TPP日本参加、全参加国承認へ 7月交渉入り
時事通信:日本の参加、承認へ=TPP11カ国が閣僚級会合-7月に交渉入り
NHK:TPP 日本の交渉参加に同意の見通し
FNN:日本のTPP交渉参加、11カ国全てから承認される見通し
ANN:7月下旬に参加か…TPP日本交渉参加を11カ国承認へ
MBS:TPP交渉、7月にも日本参加へ
テレビ東京:日 TPP交渉参加 全11ヵ国承認へ
これら報道は、昨日まで報じられた経緯を振り返れば余りにも唐突過ぎるだろう。
どの記事を見ても、日本のTPP交渉参加が承認される見通しと7月下旬に開催するTPP交渉会合に参加できる見通しだけでそれ以外に何も伝えられない。
つまり、昨日まで日本のTPP交渉参加を承認することと引き換えに、交渉条件として日本に農業で譲歩することを迫っていたカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが軟化した理由が報じられていないのである。
16日までニュージーランドは関税撤廃の例外を認めない方針だったはずである。
参考記事:TPP前哨戦の第2ラウンドもNZに完全敗北か、米国の自動車と保険の次はNZの農業
日本は、承認を得るために関税撤廃の例外を認めないことで合意したのだろうか。
18日まで加国・豪州・NZの3カ国は全品目を交渉対象と要求したはずである。
参考記事:TPP交渉で日本がサンドバック状態、NZ・豪・加は例外なしを米国は7月参加を要求
日本は、承認を得るために例外なき関税撤廃の原則を守ると合意したのだろうか。
これら承認を巡り本日報じた内容は、カナダが日本のTPP交渉参加の承認と引き換えに、米国と同じ日本車の輸入関税を当面維持で合意したことである。
つまり、米国の自動車と保険で譲歩に続き、カナダの自動車で譲歩したのである。
[4月19日 時事通信]カナダと共同文書=TPP交渉参加へ詰め
政府は19日、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に向けた事前協議で、カナダに自動車輸入関税撤廃の猶予を認める共同文書を作成する方向で最終調整に入った。日本が交渉参加の同意を得るのにTPP参加国と文書を取り交わすのは、米国に次ぎ2カ国目となる。米国並みに自動車の輸入に特別な配慮を求めるカナダ政府の意向を受け入れた。コメや麦など日本の農産物の輸入関税に関しては、交渉入り後に議論を先送りする見通しだ。甘利明TPP担当相がインドネシアでカナダのファスト国際貿易相と会談し、共同文書の内容を詰める。
これにより、安倍政権は米国とカナダの北米市場で、日本の輸出産業の主力の自動車で競争力強化して輸出増加して経済成長する芽を摘んだことになった。
その結果、北米市場で関税品目の約5割を占める自動車の関税が当面維持すれば、全品目の関税撤廃で算出した政府試算の輸出効果は半減することになった。
このことで明らかになったのは、カナダは米国企業のいわゆるナワバリで米国が日本の関税撤廃に関して要求することはカナダも要求するということである。
そしてこの構図を拡大すれば、TPPは米国企業のナワバリであるNAFTA(カナダ、メキシコ)と、米国の得意産業である農業(カナダ、オーストラリア)で結束して日本に市場開放を迫る構想だったのだろう。
日本としては、これに対抗する勢力を形成してNAFTAに市場開放を迫れば良いのだろうが、自動車や機械、化学など工業品を主力とする国は皆無である。
さらに、農業で例外品目を設けるために対抗する勢力を形成すれば良いのだろうが、日本ほど市場規模が大きく従事者が多く人件費が高い国は皆無である。
つまり、日本はTPPで連携できずに孤立無援で交渉していくしかないのである。
現状において、TPP交渉の前哨戦では完膚なきまでに叩きのめされ、TPP交渉に参加しても形勢は非常に不利であり、結果は火を見るより明らかである。
「グローバル化は素晴らしい」との言葉だけで日本の国益を損ねては意味が無い。
「交渉力を発揮する」との言葉だけで日本の国益を勝ち取らなければ意味が無い。
守れなかったことを守れたと欺くことは、日本を売り渡すことに等しいのである。
守るべきものを守れぬのならば、TPP交渉の非を認めて潔く撤退すべきである。
日本の国益を守るためには、早期にTPP交渉から脱退を表明することしかない。
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