福島原発事故の放射能被害で、また福島県の組織ぐるみの隠蔽が明らかになった。

福島原発から5キロ地点に設置したモニタリングポストで、3月12日5時から福島原発1号機の水素爆発を起こした後まで計測した放射線データを、昨年9月に保存もせず記録も残さず完全に消去していたのである。

しかも、昨年9月に消去した結果から導かれる結論は福島県の計画的犯行である。

昨年9月といえば子供の甲状腺検査で甲状腺がん患者が初確認された時期である。

そして、福島県が実施する福島健康調査において、「秘密会」と称する事前の会議で本番前に「がん発生と原発事故に因果関係はない」との意見で委員会をまとまるよう「やらせ」の打ち合わせをしていた時期である。

参考記事:事前の秘密会で「やらせ」発覚の福島原発事故の健康調査、アンダーグラウンドで暗躍する原子力ムラ

つまり、福島原発事故後に初めて甲状腺がん患者が確認されたことから、がん発生と原発事故に因果関係が無いことを証明するために、因果関係の決定的な証拠となる放射線データを完全消去したということである。

このような、福島県民のためでなく行政保身のための行政となり、過失であっても誰も責任を取らない、公務員特有の体質はどうにかならないだろうか。

しかも、国民の生命と安全に関わる重大犯行であり絶対に許されないことである。
今回の放射線データの消去抹消は、福島県による業務上過失と言える犯行である。

被災者住民のために国会で取り上げて、徹底的な事実確認と責任追及が待たれる。

[3月7日 東京新聞]東日本大震災2年:福島第1原発事故 県、放射線データ消去 5キロ離れた避難所、緊急測定の半年後
東京電力福島第1原発事故を受けて11年3月12日午前5時ごろから、福島県が約5キロ離れた避難所に可搬型測定器を設置して緊急時放射線モニタリングを行いながら、測定器を回収した同9月にデータを消去していたことが分かった。県は「データを上書きし記録も残っていない」と釈明、国への報告も怠った。原発10キロ圏では同時刻ごろから線量の上昇が確認されているが、消去により国の指針が定める住民の被ばく評価もできなくなった。

県の放射線測定を巡っては、固定型モニタリングポストのデータ解析を終えるのが昨年9月と遅れ、政府・国会の原発事故調査委員会の最終報告書に反映されなかったことが既に分かっている。新たにデータ消去が判明し、原子力規制委員会専門家会合が検討中の緊急時モニタリングの改善策にも影響を与えそうだ。

県や東電への取材によると、県は11年3月12日午前3時ごろ、内閣府の原子力安全委員会(現・原子力規制委員会)の指針を盛り込んだ県の地域防災計画に基づき、大熊町内の原子力災害対策センター(オフサイトセンター)で東電に緊急時モニタリングへの同行を指示。観測地は「人が集まっている場所」とした。少なくとも3人の県職員らが防護服を着て、県保有の可搬型測定器や集じん器などを東電の小型バスに積んで出発。同5時ごろ、原発の西約5キロの大熊中学校に着き、約100人が避難する体育館わきに機器を設置した。

可搬型器はタンク内の燃料で自家発電して作動し、線量を表示する仕組み。通信回線の途絶で固定型モニタリングポストと同様、観測データを送信できなかったが、タンク内の燃料は半日分あり、1号機原子炉建屋が水素爆発した12日午後まで作動していた。

文部科学省が昨年7月にまとめた同原発事故の緊急時モニタリングの報告書は、中学校からの住民避難が終わった直後の「午前8時9分に県が大熊町内で」別の測定器により観測したのが最初と記載しているが、実際には少なくとも約3時間前から行われていたことになる。

県災害対策本部は「他の業務に忙殺され回収が遅れた上、メーカーには『データを取り出せない』と言われ、県内各地での観測に使うためデータを上書きした。線量は平時と同じだったと聞いているが、国には報告していない。大変申し訳ない」と謝罪している。

一方、メーカーは取材に「データは機器内の電子メモリーに蓄積され(ケーブルで)接続したパソコンに専用ソフトを使って取り出せる」と、県とは食い違う見解を示している。原子力規制委員会は「そもそもモニタリングデータを記録しないこと自体が想定されていない」(監視情報課)としている。

余りに放射線データ消去で福島県の原子力安全対策課の言い訳が不可思議である。

福島原発1号機から5キロ地点において、水素爆発の前後を計測できた放射線データを、福島県が政府に報告せず勝手に消去することができるだろうか。

しかも、福島県の原子力安全対策課という一つの組織だけで、止むを得ない理由から重要な事実が隠される放射線データを消去する判断を下せるだろうか。

さらに、「メーカーにデータが取り出せない」と言われたとする理由もメーカーが否定しており、一つの組織だけで勝手にこのような嘘をつけるだろうか。

極めつけは、「データを保存しておくべきだった」「国などと情報共有しておけばよかった」「データに目立った変化が無かったため消去した」「データの整理が不十分だったかもしれない」という謝罪である。

県の行政組織の一課に、放射線データの保存する判断、国と情報共有する判断、データの変化を調査する判断、データ整理の判断の決定権があるだろうか。

つまり、放射能データの消去する権限は原子力安全対策課にあるはずがないのだ。
少なくとも放射線データは福島県の佐藤知事も認識していたことが当然であろう。

そして、福島原発事故当日から4日分のSPEEDI予測データの消去に続いて、今回の放射線データの消去も福島県の組織ぐるみの犯行であったのである。

参考記事:福島県が原発事故当日から4日間1時間毎のSPEEDI予測データを消去、県までも組織ぐるみの隠蔽か

つまり、福島県庁はSPEEDI予測データを消去したことで福島県民が避けることができた被曝を招き、放射線データを消去したことで福島県民の健康被害と原発事故との因果関係を立証できなくしたのである。

福島県民を安全避難を怠り、情報提供を放棄する行為が行政サービスであろうか。

現在のところ、既存メディアでは原発事故と健康被害の因果関係はほとんどないとの報道がほとんどであるが、当時の検出データがはっきりしないのである。

明らかになったことは、原発から約5キロ地点で1号機の水素爆発前後を計測した放射線データを消去しなければならない理由があったということである。

そして、福島県で「がん発生と原発事故に因果関係はない」との見解をまとめるためには、放射線データは消去しなければならなかったということである。

もし、1号機の水素爆発前後の放射線データが健康被害と因果関係がないことを証明する数値であれば、決定的な証拠として絶対に消去しないはずである。

このことは、少なくとも福島原発1号機が水素爆発した影響と初の甲状腺がん患者が確認された結果に何らなの因果関係の可能性があるということとなる。

それでは、福島原発事故と周辺住民の健康被害の因果関係を無いとの結論を出すことは、福島県と政府にとってどのような意味を持つことになるのだろうか。

福島原発事故の発生と避難、賠償で被災者に対する責任逃れで間違いないだろう。

しかも、SPEEDI予測データを消去したことは約1年間も事実を隠蔽しており、放射線データを消去したことは約2年間も事実を隠蔽していたのである。

つまり、責任逃れの上に責任逃れを被せている点で手口が極めて悪質なのである。
しかも、この悪質な犯行に及んでも誰も責任を取らず誰も罰せられないのである。

結果的に、数年後数十年後に被災者が泣きを見る事態だけは何としても避けたい。
そのためには、少なくとも原発事故直後の放射線データの収集が不可欠となろう。

明日で丸2年となるがこのような事実が知らされるとは非常に残念で仕方が無い。
被災者住民のために国会で取り上げて、徹底的な事実確認と責任追及が待たれる。



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