安倍総理の「なるべく早い段階」は野田前総理の「近いうち」と同じであろうか。

もし、「なるべく早い段階」が「近いうち」と同じく100日後に果たす約束との意味であれば、安倍総理は野田前総理と正反対で名宰相としてその名を刻もう。

なぜなら、日本が6月まで米国との事前協議を引き延ばせば、米国が必ず譲歩して日本の守るべき国益が確保できてTPPがTPPで無くなるからである。

参考記事:TPP交渉参加を粘れば米国は必ず譲歩、自動車部門と保険部門は別交渉で事前了承外に

しかし、国会答弁などを見れば米国に全面降伏して「まな板の鯉」状態と言える。

昨日も、生活の党のはたともこ議員の質疑で、安倍総理は自民党の政権公約である「TPP交渉参加の6つの判断基準」の1項目以外の5項目についてTPP交渉参加の条件ではないと国会で答弁したのである。

さらに、日米共同声明の事前協議で対処すべき懸案事項に「TPP交渉参加の6つの判断基準」の5項目が含まれていないことが明らかになったのである。

つまり、安倍総理は自民党の政権公約の6つの判断基準をオバマ大統領に説明したものの、米国に了承されず協議から外され議論の余地無しとされたのである。

そして、現在2国間で事前協議の対象となるのは、米国の国益となる日本の自動車制度と保険制度の破壊であり、米国の例外品目の確保だけなのである。

このことは事前協議さえ交渉力なしで、交渉参加も結果は同じとなることを示す。

日米共同声明の3つのパラグラフ毎に日米で勝敗を付けるとすれば、第1パラグラフは米国の勝利であり、第2パラグラフは引き分けであり、第3パラグラフは米国の勝利であり、トータルで米国の2勝1分が妥当な判定となるのである。

米国は、国益を守るために日本と相互で「例外品目」の設定で合意したことで、国内の工業製品に関する国内産業を守ることで反対勢力を封じ込めたのである。

米国は、国益を守るために自動車制度と保険制度の対処の明記で合意したことで、国内の自動車産業と保険産業を賛成勢力への取り込みに成功したのである。

さらに今後は、日本と「例外品目」の設定で合意したことを出汁にして、TPP参加国にそれぞれ特定した「例外品目」を設定できるよう強引に要請するのである。

一方、日本は第2パラグラフの「日本は農産品、米国は工業製品」で引き分けた例外品目の設定で合意しただけで喜んでTPP交渉に参加を表明するのである。

つまり、TPP交渉の参加も、例外品目の設定も、参加表明の時期も、TPPの枠組みも、妥結する制度も、全ては米国次第となってしまったのである。

このことは、下記にて安倍総理の米国の説明と調整との発言からも明らかである。

[2月28日 NHK]首相 TPP交渉参加決断時期は米と調整
安倍総理大臣は、衆議院予算委員会の集中審議で、TPP=環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加を決断する時期について、「日本とアメリカでタイミングを調整していくことになる」と述べ、アメリカ側と調整したうえで決める考えを示しました。

この中で安倍総理大臣は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加を決断する時期について、「これまでの交渉の経緯をよく精査し、国内の影響も勘案し、そんなに先ではなく、なるべく早い段階で決断したい」と述べました。そのうえで安倍総理大臣は「アメリカ側も国内や関係国に説明する必要があると思う。日本とアメリカでタイミングを調整していくことになる」と述べ、アメリカ側と調整したうえで決定する考えを示しました。

また、安倍総理大臣は、TPPに参加した場合に、産業全体や農業に与える影響をまとめた政府の試算について、「民主党政権では、役所ごとにまちまちに数値が違う発表をしていたので国民に混乱が生じた。政府として統一的な試算をするよう作業を進めているので、こうした試算も勘案して判断をしたい。準備ができしだい公表する」と述べ、政府として統一された試算を公表する考えを示しました。

安倍総理大臣は、国際共同開発が進められている次期戦闘機F35について、「武力を行使する可能性があるイスラエルにF35がいく可能性もあるが、そのことを理由に日本が共同生産に参加できなくていいのか。日本を守るため何をすべきかという観点で、現実的な踏み込んだ対応を考えて菅官房長官から談話を出したい」と述べ、近く日本企業がF35の製造などに参加しても、「武器輸出三原則」の例外として認めるための官房長官談話を発表する考えを示しました。

また、安倍総理大臣は、自衛隊の「敵基地攻撃能力」について、「アメリカに頼り続けていいのかという問題意識がある。日本がF35を導入することになれば、その能力をどう生かすか検討はしなければならない」と述べました。また、太田国土交通大臣は、沖縄県の尖閣諸島を巡る情勢について「今月4日に、尖閣諸島周辺の日本の領海内で、中国の海洋監視船2隻が、一時的に日本の漁船に接近するような状況になった」と述べました。

安倍総理のTPP交渉参加を決断する時期についての発言から、なぜ米国が帰国後すぐ「政府一任」をとりつけるよう安倍総理を脅迫したのか明らかになった。

米国は、日本が「政府一任」となることを受けて、日米共同声明にある「工業製品」を例外品目で合意したこと、自動車部門と保険部門で日本に対処するよう要請したことを国内で説明するためだったのである。

米国は、日本が「政府一任」となることを受けて、日米共同声明にある「日本の農産品」「米国の工業製品」を例外品目にすれば、日本がTPP交渉に参加するとTPP交渉参加国に説明するためだったのである。

そして、安倍総理がTPP交渉参加を判断する時期で「日本とアメリカでタイミングを調整していくことになる」と述べたのは米国待ちということである。

安倍総理について、保守・右翼の肩書きから国家主権を脅かす協定への参加に対して、少しは骨があると期待したのだが徐々に失望に変わりつつある。

下記の自民党の政権公約である「TPP交渉参加の判断基準」で、2項目~6項目はTPP交渉参加の条件でないと発言したのだから当然だろう。

●自民党のTPP交渉参加の判断基準
(1)政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

これでは、何のために自民党が長い議論を尽くして、TPP交渉参加しても国益を守られるよう、判断基準を6項目を決定したのかわからないではないか。

少なくとも、安倍総理は政権公約の「TPP交渉参加の判断基準」の2項目~6項目を条件でないとするなら、TPP交渉で2項目~6項目の条件が満たされなければTPPに参加しないと宣言すべきである。

自民党のTPP交渉参加に反対派は、安倍総理から日本がTPP交渉に参加して政権公約を守れなければ、TPPに参加しない言質を取るべきである。

事前協議で譲歩させれば譲歩させるほど本番交渉で有利となるのは明らかである。

安倍総理の「なるべく早い段階」をできる限り先延ばしできるよう、TPP交渉の反対派は業界を越えて、党派を超えて、自治体を超えて結集して安倍総理が政権公約を守るよう抵抗を続けなければならない。

状況を変える残された日数は米国が国内と関係国へ説明を完了するまでとなった。



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