野田総理は、消費税増税法案の成立と大飯原発再稼動で国民に嘘をついた事実を直視せず、何としても非難怒号に晒される選挙演説だけは逃げたいようである。

消費税と原発の争点化を阻止するため、総選挙の大敗を免れるため、第三極の合流を阻止するため、自民党のウィークポイントを突くため、日本維新の会に近づくため、前原グループが画策したTPP参加の公約化に同調した格好である。

TPPに国益が見えないまま開国や自由化を迫るのは国民を不幸にさせる。

[10日 毎日新聞]野田首相:「TPP交渉参加 公約に」 意向表明
野田佳彦首相は10日、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加について「TPP、日中韓の自由貿易協定(FTA)、東南アジア諸国連合(ASEAN)を含んだ包括的経済連携(RCEP)を同時に追求する。マニフェストに書くことになると思う」と述べ、TPP交渉への参加を次期衆院選の民主党マニフェストに盛り込む意向を表明した。視察先の福岡市内で記者団に語った。自民党はTPPに慎重な姿勢を示しており、次期衆院選の争点とする狙いがあるとみられる。

一方で首相は「(TPPに関し)特定の時期に、特定の表明をするという方針を固めているということはない」と述べた。年内の衆院解散の可能性についても「特定の時期は明示しない」と強調。次期衆院選で争点になるかについて「分からない。だが国民にわれわれの考えを示す必要がある」と語った。

政府・民主党内では、交渉参加を明確にすべきだとの声が出ており、前原誠司国家戦略担当相は9日の記者会見で、「TPP反対か賛成かを公約に掲げ争点化すべきだ」と強調。岡田克也副総理も同日の会見で「結論はそんなに先送りできない」と語るなど、首相に近い閣僚からTPP交渉への早期参加に前向きな発言が相次いでいた。

ただ、民主党内にはTPP交渉への参加に根強い反対論がある。輿石東幹事長は9日、TPP反対派の山田正彦元農相と会談し「そんなことで解散するのはあり得ない」とTPPの争点化を明確に否定した。

TPP参加で出てくるのは、「開国が正しい」とか「自由化が正しい」と言った抽象論ばかりで、TPP自体の具体的な是非については全く無視されている。

どの国と開国するのが国益に繋がるのか、どの国と自由化するのがメリットになるのか、肝心要の「日本にとって」という主語が無く正論を語るからである。

日本からTPPを見れば、TPP交渉参加国でシンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、ベトナム、ペルーは経済連携協定(EPA)を結んでおり、オーストラリアは経済連携協定(EPA)の交渉段階であり、カナダは経済連携協定(EPA)の交渉前段階であり、自由貿易が進んでいる国ばかりである。

つまり、日本はTPP交渉参加国のほとんどの国と、自由貿易協定(FTA)よりも幅広い分野での協定である経済連携協定(EPA)を結んでいるのである。

EPA締結国とさらにTPPを無理に結んだとしても相互の国益には繋がらない。
そして、TPP交渉参加国で残る国は米国、ブルネイ、ニュージーランドだけだ。

これは、TPP交渉による日本の国益は、米国、ブルネイ、ニュージーランドの3カ国との自由貿易によって得られる国益に等しいことを意味するのである。

人口を比べれば、3億1000万人の米国、40万人のブルネイ、430万人のニュージーランドであり、1億2000万人の日本は米国しか相手にならない。

つまり、TPP交渉に参加して多国間で交渉して妥協するよりも、TPP参加を止めて日米で貿易協定を締結するため、日米の2国間で交渉したほうが日本の要求は通るだろうし、はるかに日本の国益に繋がるのである。

逆に言えば、米国は日本との2国間で自由貿易協定を締結することを放棄して、日本に多国間でTPPを締結することを催促しているということになるのだ。

つまり、米国は日本との自由貿易交渉を有利に進めるため、TPPという箱を利用して2年前から仲間を集めて徒党を組み、日本市場を狙っていたのである。

ある意味、2年間用意周到に進めてきた米国の自由貿易戦略と言えるのである。

別にTPP交渉参加国の中で、米国が輸入割合の6割を占めており、輸出割合の5割を占めているからという理由ではなく、日本にとって国益に繋がる潜在的な貿易拡大が米国にしか望めない問題が潜んでいるのである。

しかも、日本にとって米国とこれから自由貿易してももはや薄利なのである。

輸出企業は、6重苦に耐え現地化も進み、飽和状態になりつつある。この上さらに米国の薄利な上澄みより、未開拓の国と自由貿易をしたほうが国益になる。

このことは、日本が米国と自由貿易しても国益に繋がらないことを証明する。
つまり、TPP自体が日本の国益にならない国で構成された枠組みとなるのだ。

そしてこの事実を伏せようとしているのが官僚機構であり既存メディアである。
TPP参加を正義のように語り、開国すべき自由貿易すべきと煽るのである。

日本にとってTPP参加は全く国益にならないことが明らかにも関わらずである。
その理由は官僚機構に「米国の国益こそ日本の国益」の神話があるからである。

官僚機構が築く既得権の社会主義ムラは米国に依存しており逆らえないのである。

その米国の目指すのが、オバマ大統領の「アジア最優先」という成長著しいアジアでの覇権であり、その足場固めがTPPをアジア圏における自由貿易のデファクトスタンダードにすることになっているのである。

そのためには、米国を排除する自由貿易交渉の枠組みとなる日中韓3カ国FTAとアジア16カ国広域FTAの締結前にTPP締結させなければならないのである。

前回は9月のAPECの前に野田総理がTPP参加表明との報道が流れたが、今回は今月下旬のASEANの前に同様の報道が流れているのである。

つまり、日中韓3カ国FTAもアジア16カ国広域FTAも阻止したいのである。
なぜなら、締結すれば米国はアジアでの影響力を排除されかねないからである。

現状のところ、両貿易協定ともアジアで存在感を示している日本と中国の間で尖閣諸島の国有化を巡る問題により、関係が悪化して交渉自体が進展していない。

おそらくTPPも日本が参加せずには米国に何らメリットがないため、日本を参加させるため2012年までという期限も延期することになるのだろう。

しかし、米国にも減税措置が2012年末で期限を向かえ、来年から政府の歳出を強制的に減らすという「財政の崖」を迎えるため時間がないのである。

そこで、米国の景気悪化を支える手段が次期総選挙のTPP参加の争点化である。
ここで次期総選挙の争点化すれば選挙後にTPP交渉参加の可能性が高いのだ。

TPP交渉参加の反対を明確に公約に掲げているのは、「国民の生活が第一」を中心とする「民意の実現を図る国民連合」に参加した政党だけである。

参考記事:「民意の実現を図る国民連合」が共同公約案、消費税反対も原発ゼロも法案成立の実現が国民との契約

「民意の実現を図る国民連合」以外の政党はTPPの交渉参加に賛成である。
TPP交渉参加して途中離脱したとしてもその後に弱みを残す可能性が高い。

TPPを「開国」や「自由貿易」という言葉に置き換えることは間違いである。
交渉参加しないことを「主権国家として恥ずかしい」とするのは間違いである。

TPP自体が日本の国益を損ねる国で構成された自由貿易の枠組みなのである。
そして他の自由貿易の枠組みの構築を積極的に進めたほうが日本の国益に適う。



最後までお読みいただきありがとうございます。
お帰りの際にポチっと押していただければ励みになります。

   

感謝します。今後ともよろしくお願いいたします。