大久保 理映
高速バス乗り場で見知らぬおばさまの身柄を託された。
「このひと、ここから乗るの初めてだから、無事に乗れるまでお願いします」と。
バスが来るまであと10分くらいはあるし風が強く寒くなってきたので
「向こうに待合室があってその正面に停まってるバスが動いたらまた乗り場に戻ってくればまにあいますよ」と待合室にいることをすすめて、私はそのままバス停に並んでいた。
お目当てのバスが動き出してバス停に来たが、おばさまがまだ出てこないので、待合室まで行ってみると姿がない。
あれ?と思ったら、おばさまの荷物らしきバッグと紙袋がベンチに並べてある。
どうやらお手洗いに入っているらしい。
しかし、2分待ってもおばさまは出てこない。
お年寄りはトイレ長いものね。
3分待っても出てこない。
まさかトイレ内で具合でも悪くなっているのか?
あと1分待っても出てこなければトイレのドアをノックしてみようかしら。
私もバス乗り遅れちゃうし。
よし、ノックするよ!と思った瞬間、ドアが開いておばさまが姿をあらわした。
「バスが来ましたよ、乗りましょう」と促してバス停へ向かう。
念のため行き先を聞いておこう。途中で降りたほうが便利かもしれないし、そもそもどこに停まるか知らなさそうだし。
「どちらで降りますか?」
「あら、どこに停まるのかしら?」
ほーら、やはり把握していなかった。
「八王子まで行きたいのだけど」とおっしゃるので「でしたら終点の東京駅で降りるのが便利ですね」と答えながら運転手さんに乗車券を渡して先にバスに乗り込む。
あとに続いたおばさまは「あら、ここで券見せるの?」とか言いながらバッグやポケットをゴソゴソ。
やっと乗車券を見つけて、「景色が見やすいほうがいいけど、真ん中のほうがあったかいわよね」とか言いながら、私の座った席の斜め後の席に紙袋とバッグを置いた。
「本日はご乗車ありがとうございます」
アナウンスが流れはじめた途端、おばさまが「ちょっと待ってください!ちょっと待ってくださいね!」と再びゴソゴソはじめた。
そして運転手さんに「あらやだ。私、ちょっと忘れ物しちゃって、ちょっと待っててくださる?」と言い出した。
発車時刻が迫ったバス車内は、空席のほうが多いながらも、「おい!オバサン!」というはりつめた空気が一瞬にして広がった。
最初に持ってた荷物全部揃ってるし、待合室出るときにベンチの上の荷物、私も確認したのになぁとなぜか私まで居たたまれない気持ちでそわそわしていると、おばさまはハンドバッグを持って小走りで戻ってきた。
えーっ!
貴重品入った一番肝心な荷物忘れてたの!?
貴重品だからとバッグから取り出してトイレ個室内に持って入って忘れてきたらしい。
うーん、そこまでは読みきれなかった!
私もまだまだ甘い!
「肝心なの忘れちゃった~」と照れながらおばさまが腰を下ろすのを見て、ようやく私の任務も完了、肩の荷が下りた。
予定より数分遅れながらも、バスはおばさまを乗せて無事に発車した。
高速バス乗り場で見知らぬおばさまの身柄を託された。
「このひと、ここから乗るの初めてだから、無事に乗れるまでお願いします」と。
バスが来るまであと10分くらいはあるし風が強く寒くなってきたので
「向こうに待合室があってその正面に停まってるバスが動いたらまた乗り場に戻ってくればまにあいますよ」と待合室にいることをすすめて、私はそのままバス停に並んでいた。
お目当てのバスが動き出してバス停に来たが、おばさまがまだ出てこないので、待合室まで行ってみると姿がない。
あれ?と思ったら、おばさまの荷物らしきバッグと紙袋がベンチに並べてある。
どうやらお手洗いに入っているらしい。
しかし、2分待ってもおばさまは出てこない。
お年寄りはトイレ長いものね。
3分待っても出てこない。
まさかトイレ内で具合でも悪くなっているのか?
あと1分待っても出てこなければトイレのドアをノックしてみようかしら。
私もバス乗り遅れちゃうし。
よし、ノックするよ!と思った瞬間、ドアが開いておばさまが姿をあらわした。
「バスが来ましたよ、乗りましょう」と促してバス停へ向かう。
念のため行き先を聞いておこう。途中で降りたほうが便利かもしれないし、そもそもどこに停まるか知らなさそうだし。
「どちらで降りますか?」
「あら、どこに停まるのかしら?」
ほーら、やはり把握していなかった。
「八王子まで行きたいのだけど」とおっしゃるので「でしたら終点の東京駅で降りるのが便利ですね」と答えながら運転手さんに乗車券を渡して先にバスに乗り込む。
あとに続いたおばさまは「あら、ここで券見せるの?」とか言いながらバッグやポケットをゴソゴソ。
やっと乗車券を見つけて、「景色が見やすいほうがいいけど、真ん中のほうがあったかいわよね」とか言いながら、私の座った席の斜め後の席に紙袋とバッグを置いた。
「本日はご乗車ありがとうございます」
アナウンスが流れはじめた途端、おばさまが「ちょっと待ってください!ちょっと待ってくださいね!」と再びゴソゴソはじめた。
そして運転手さんに「あらやだ。私、ちょっと忘れ物しちゃって、ちょっと待っててくださる?」と言い出した。
発車時刻が迫ったバス車内は、空席のほうが多いながらも、「おい!オバサン!」というはりつめた空気が一瞬にして広がった。
最初に持ってた荷物全部揃ってるし、待合室出るときにベンチの上の荷物、私も確認したのになぁとなぜか私まで居たたまれない気持ちでそわそわしていると、おばさまはハンドバッグを持って小走りで戻ってきた。
えーっ!
貴重品入った一番肝心な荷物忘れてたの!?
貴重品だからとバッグから取り出してトイレ個室内に持って入って忘れてきたらしい。
うーん、そこまでは読みきれなかった!
私もまだまだ甘い!
「肝心なの忘れちゃった~」と照れながらおばさまが腰を下ろすのを見て、ようやく私の任務も完了、肩の荷が下りた。
予定より数分遅れながらも、バスはおばさまを乗せて無事に発車した。