■ 中国工場スト拡大 台湾系工場で警官隊と衝突

【上海=河崎真澄】中国の江蘇省昆山市にある台湾系機械部品工場で7日、賃金制度の見直しなどを求めてストを行った従業員ら約2千人と警官隊数百人が衝突し、従業員約50人が負傷した。8日、香港紙などが伝えた。同市には台湾系企業が3千社あまり進出している。当局では近隣工場への波及や同市に隣接する上海市で開催中の上海万博への影響を懸念し、ストが起きた工場の周辺に1千人以上の警官隊を投入して警戒にあたっている。

従業員の自殺が相次いだ広東省深セン市の台湾系大手電子機器メーカー、富士康で半年間に2倍の賃上げが決まったことなどが影響したとみられる。同時に、中台関係をめぐる政治力の“逆転現象”が起きているとの見方から、台湾系企業の中国人従業員や労組が、低賃金労働を変えさせる機会ととらえている可能性がある。

ストが起きた台湾系工場は、米国に本社を置く台湾系のKOKが1993年に設立した書元機械。従業員側は手当て支給などを要求、生産ラインはほぼストップ状態にある。

また、香港からの報道によると、広東省仏山市でホンダの中国国内の完成車工場向けに部品を供給している地場資本のメーカー、豊富汽配の工場で、従業員ら約250人が7日からストに入った。

さらに、同省恵州市の韓国系電子機器工場でも従業員約2千人が7日からスト。多数の従業員が周辺の道路を封鎖、警官隊とにらみ合っているという。深セン市の台湾系電子機器メーカー、美律電子でも6日から7日にかけて数千人のストが発生した。湖北省随州市では紡績工場で大量解雇に対する抗議行動が起きたという。

中国では年内にも、「同一労働、同一賃金」といった計画経済時代への逆戻りのような賃金体系を経営側に求める「賃金法」が成立するとの見通しもある。

これを見越して、労組側がストを巻き起こしたとの指摘もあり、「事態がエスカレートすれば、ベトナムなどへの工場移転も検討せざるを得ない」(日系機械メーカー幹部)と懸念する声が出始めている。



■ 従業員自殺対策 富士康10月に再賃上げ 台湾電子メーカー

【台北=山本勲】世界最大のEMS(電子製品の受託製造)メーカー、鴻海精密工業(台湾)子会社の富士康科技(フォックスコン)は6日、中国広東省・深セン工場の基本給を10月から2000元(約2万7000円)に引き上げると発表した。同社では今年に入り従業員の自殺が相次ぎ、6月から賃上げ(900元を1200元)を実施したばかり。わずか半年で2倍への賃上げの衝撃は大きく、台湾電子メーカーの東南アジアなどへの工場移転が本格化しそうだ。

富士康は中国全土で80万人の従業員を抱え、うち約45万人が広東省深セン特区の工場に集中している。年初来、従業員の自殺が12人にのぼり、中国内でも大きな社会問題になっている。

このため従業員対策の一環として、6月から深セン市の最低賃金と同じ900元だった基本賃金を1200元に引き上げたばかり。これをさらに10月から2000元へ引き上げる。「従業員の尊厳を守り、生活のために無理をして超過勤務をしなくても暮らせるよう配慮した」(富士康)という。
台湾の工商時報紙報道(7日付)によると、2段階の賃上げで鴻海グループの利益は約3分の1減少するという。

最大手、鴻海グループの大幅賃上げが他の外資企業、特に台湾電子メーカーに及ぼす衝撃は甚大だ。EMS企業の利益率は5%前後と低いだけに、中規模以下の企業は中国内陸部や他の途上国への生産移転が避けられなくなる。

7日の台湾紙、経済日報は1面トップで台湾のメーカー団体、台湾区電機電子工業同業公会が「東南アジアなどへの南進戦略を推進する」と報じた。

「すでに中国の低労賃時代は終わり、工場を内陸部へ移転しても3~5年で限界に直面する」(焦佑鈞理事長)からで、インドやインドネシア、ベトナムなどが候補にあがっている。




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