村上春樹 「スプートニクの恋人」 | 七転び八転び!? 15分で1冊 

七転び八転び!? 15分で1冊 

人生、いいことの方が少ない。

「薬害エイズ訴訟」の体験とそれまでの過程、読書の感想と要約をを綴ります。

・読み終わった日:2013年11月20日


・人物


僕(小学校教師、すみれの友達)すみれ(無職、小説家志望、「僕」の友達)、ミュウ(39歳、韓国籍、会社経営者)、すみれの父(歯科医)、にんじん(仁村晋一、「僕」の受け持ちクラスの児童)、「ガールフレンド」(にんじんの母親)


・ストーリー


僕は大学の後輩すみれと偶然バス停で会う。

すみれは僕が読んでいる本を見てどうしてそれを読んでいるのか聞く。

すみれは僕が卒業すること大学を中退した。

すみれは作家志望だったが上手く書けずに悩んでいた。

僕は小学校の教師になるが、すみれの深夜の電話に付き合ったりとその後も奇妙な付き合いは続いていた。


あるとき、すみれは親戚の結婚式でミュウという年上で既婚者に出会い激しい恋に落ちる。

その出会いがきっかけですみれはスペイン語が話せるということでミュウの会社で働くことになる。

見た目は飛びぬけているわけではないが僕はすみれに激しい性欲を感じるようになり一方で受け持ちクラスの児童「にんじん」の母親と不倫していた。


すみれの引越しの手伝いをしたあとあとで御礼をするといったあと急にローマからミュウと仕事で海外にいるという手紙を受け取り驚く。

するとその後ミュウから電話がかかってきてギリシャに来てくれといわれる。

行ってみるとミュウの話しでは突然すみれが蒸発したという。

いろいろ探したが見つからなかったがそうしているときミュウから彼女自身の生い立ちを聞かされる。

結局すみれは見つからず僕は帰国するがその後にんじんが万引きで捕まり呼び出され「ガールフレンド」との関係に悩む。。。



・感想


イマイチだなあ。


ストーリー性はあり引き込まれていくものがあるがラストは釈然としないし。

結局何なんだよー!と言いたくなる。

相変らず登場人物のキャラクターはワンパターン。

内容も現実的でないところに引いてしまう。

小学校教師がそう簡単に受け持ちの母親と不倫はできない。

また「勃起」「射精」と性描写が多く「ノルウェイの森」あたりからレズビアンの話しまで出てきて食傷気味。

一服の清涼剤感覚で性描写を挿入しているのかな、と思ってしまう。


太字で「理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない」とあるところからこれがメインのようだ。

う~ん、わかるようなわからないような。。。


今までの一連の作品を読むと「喪失と再生」が底辺のテーマのようだと思っていたがそれと同時に「こちら側」「あちら側」が肝のようだと感じた。


「ノルウェイの森」では「死の一部に生がある」みたいなことをいっていたと思うが本作品も含め死後の世界と現世とが行ったり来たりしているのが特徴というか混乱させられた。

つまり作者は死者と現存の世界は遠くない、と言いたいのか。

となると「天国に召された」というキリスト教ではなく「草葉の陰で見守る」という仏教の方が死者との距離が近いし仏教に感覚は似ているのかと思った。

しかし一連の作品では仏教礼讃は読み取れない。


結局は小生は分からないし、理解できない。

そこで意見が分かれるところだと思うが小生は基本的に主張や訓示をしたいのなら読者に伝わらなければ意味が無いと思っている。


しかし本作品のラストなど読者に下駄を預けた感がある。

それは読者に議論させるために意図的な作為的な感じがするしその人工的なやり方が好きになれない。


ここまでブランドが確立し信者というか中毒者がいると痺れを感じさせるいつものモチーフを提供することが作者の使命になっているのではないか。

作者も読者の迷走振りを楽しんでいるのではと思ってしまう。


もう少し先の作品に作者の明確な主張が見えてくるのかもと期待したい。