村上春樹 「ダンス、ダンス、ダンス」 | 七転び八転び!? 15分で1冊 

七転び八転び!? 15分で1冊 

人生、いいことの方が少ない。

「薬害エイズ訴訟」の体験とそれまでの過程、読書の感想と要約をを綴ります。

・読み終わった日:2013年8月20日

・人物:僕、キキ、五反田君、ユキ、アメ、牧村拓、ディック・ノース、メイ、ユミヨシさん、羊男


・ストーリー


元翻訳事務所勤務で現在はフリーライターの僕は何かに呼ばれているような気がし、そのために「いるかホテル」に行く。

そして13歳のユキ、ユキの母でありながら子育てをしない写真家アメ、ユキの父で落ち目の作家牧村拓、アメの恋人で詩人のディック・ノース、同級生で人気俳優の五反田君、ホテル従業員のユミヨシさん、などいろいろな人と出会い翻弄されていくが。。。


・感想


「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」の続編だがそのなかでは一番面白い。

が、みんながいうほどではない。


今までの中では一番ストーリー性があるし「この先どうなる?」みたいな興味をかきたてられた。

しかし何か中途半端でちぐはぐで掘り下げも浅く、論点の深まりも感じられず、すっきりしない。

特にラストが。

急に店仕舞いさせられて、わざわざ来たのになんだよー!という感じ。


例によってお約束の突然自殺やポルノチックな性描写てんこ盛りだし、羊男は何を暗示しているか分からないし、終わり方からするとto be contineu という気がしたが作者曰く続編はないそうだ。

なんとも消化不良の作品だし一部では失敗作といわれているが納得。


芸能界は汚いところ、性が乱れている、などいう人もいるが本作品を読むとその通りなのか。

小生には芸能関係者の知り合いはいないから分からない。


煙草を吸ったり大人びた考えや物言いをする13歳の娘や己の芸術のために子育ての放棄も厭わない母親、というのは現実的ではないがそういった天才肌というか変人はよく探せばいるのかも。

そういった個性的な生活をしている人から話を聞くと刺激を受けるが憧れて真似しようとすれば火傷をするだけだから適当な距離を開けたほうがいいのだろう。


音楽にも思入れがあるようで80年代洋楽の歌やバンド名が出てきて嬉しい。

当時日米とも飛ぶ鳥を落とす勢いでコンサートにも行ったことがあるデュラン・デュランは作者は嫌いなようだ。

今思えば納得だしあんな幼稚な音楽が昔は好きだったんだなあ、とちょっと赤面してしまう。


自分の天性の美貌と肉体を武器にして手っ取り早く金が手に入る売春に身を投じる人に対する作者の抗議の意味の顛末なのか。

額に汗水流す人生がいいのでは、と思うが。


本作品だけ単独で読んでも分からないわけではないが、やはり前三作を読まないと意味がないと思う。

そういったあたりも戦略的に創作させられている気がする。