・読み終わった日:2010年2月17日
・人物:美濃部達吉(東大教授)、上杉慎吉(元東大教授、美濃部の同僚)
・ストーリー:
太平洋戦争に向かっているさなか軍はどんどん影響力を増していた。
明治憲法は議会は天皇を中心とした機関であるという国体明朝問題としていたが東大法学部教授の美濃部が天皇は他の帰還と同様その一部に過ぎないという「天皇機関説」を発表し問題になる。
軍は美濃部に変更するように圧力をかけるが、それに応じないため不敬罪などチラつかせるがそれでも応じなかった。
天皇自身も軍の行動に不快感をあ現すことがあったと官庁とのやり取りが記録として残っていた。
軍は天皇の意思を無視し国体説を前面に出すと宣言し、かたや司法は二つに分かれており、もう一つは上杉慎吉博士の神権説だった。
上杉は既に死んでいたが支持する人は上杉の人間の魅力に惹かれ支持するという側面が大きかった。
二人の意見は対立していたがもともと二人は仲がよかった。
それは二人ともドイツの大学で留学した仲間だったからだ。
二人とも同時に留学、帰国、教授になる。
二人がドイツで師事した教授は自由法曹だったが帰国したときの東大は保積八束博士の神権説が主流であった。
そのためか上杉が神権説に傾き保積八束博士の後継者とされたが保積は上杉の魅力に惚れたことも後継理由の一つだった。
検察は美濃部を取り調べるがその取調官も美濃部の門下生だった。
一日だけ取り調べがあり告発状の不敬罪は当然認められなかった。
しかしこれに対し陸軍が圧力をかける。
そこで政府は美濃部暗殺があるのではないか警戒をする。
天皇も長官を通し機関説を受け入れるように伝えるがそれが政府陸軍に伝わっているかは定かではない。
一方軍も武闘派と非暴力派とに別れていて対立していた。
その後、美濃部は衆議院を辞職するが新聞のインタビューで自説を曲げるための辞職ではないと言った為かえって陸軍を怒らせることになる。
それにより美濃部の自宅には護衛の巡査が張り付くようになるが本人は気にしてない。
ある日馴染みの古い芸者が美濃部の家を訪ねる。
その後、息子から号外の新聞受け取り美濃部が学者もクビになることを知りショックを受ける。
しかしこれは終わりではなく始まりだと心を入れ替える。
国体論争も兼ねた総選挙尾が行われたが美濃部は好きな相撲を見に出かける。
いつもの席に土方博士もいたが何とVIP席に陸軍大将もいてこっちを見ていたので緊張感が走るがまもなく大将たちは帰る。
美濃部暗殺があちこちで計画されているという情報が警察に入り対策におわれていた。
美濃部宅にも脅迫状がいつも届いていたが一方で特高と憲兵も民間人の逮捕するかどうかという名目の縄張り争いをしていた。
総選挙は与党が勝ったところある日、倉坂鉄也と名乗る男が突然訪れる。
基本的に来客を理由をつけて帰すのは失礼と考える美濃部は居間へ通す。
倉坂はかつて美濃部の授業を受けたことがあるが家庭の都合で中退したといい原稿をみてもらいたいと言う。
しかし原稿らしきものを持っていない様子に不審に思いよく見ると右手にピストルを持っていることに気づく。
美濃部は外の人に「お帰りだよ」と言って部屋から逃げようとする。
すると倉坂はピストルを発砲し音を聞いた護衛官が駆けつけ押さえられる。
美濃部はふくらはぎを負傷し極秘に入院する。
・感想:
よくここまで綿密に調べたと思う。
全体を通して尾崎の幅の広さを思い知らされる。
余談だが明治時代は民間人でもピストルを持っていることがわかる。
今の感覚と基準だと現実離れしてピンとこない話だ。
学者といえども東大法学部教授となると法律の頂点に立つ人だから発言は日本の行く末を左右するといっても言い。
それだけ大変責任があることだから命を削るようなプレッシャーがあったのだろう。