・読み終わった日:2010年2月12日
・人物:
椎名源六(33歳)、小森鯤太郎(コンタロウ、琵琶師)、上島佐一(商事会社社員、小森の弟子)、トキ子(椎名の愛人、21歳)、半田鉄五郎(代議士)
・ストーリー:
椎名源六は愛人のトキ子と住むために家を探していた。
あるとき安く貸してくれる家を紹介され見学に行ったが古くて立て付けが悪く、がま蛙がいたり庭の手入れも全然していなかった。
隣に住んでいる家主の小森鯤太郎を訪ねるが先ほどから琵琶の音が聞こえていたのは小森が弾いていたのだった。
ちょうど唯一の弟子の上島佐一がいて小森の替わりに家の説明を受ける。
実は小森は琵琶の師匠でかつては弟子が沢山いたが今は上島一人となってしまったという。
奥さんもいたが亡くなり家をすぐにでも売るなどをして故郷の鹿児島に帰りたいということで始め聞いていた値段より格安で借りられることになる。
椎名と愛人が移り住んでから隣に住んでいる小森の琵琶の音が聞こえてくるが、ある日、上島が椎名の家を訪ねてきる。
そして上島の先輩の父親が半田鉄五郎という代議士であり本を出したいので出版社を紹介して欲しく、又その人に是非あってほしいと言われる。
それを聞いた椎名は適当に誤魔化すが数日後、上島はその男と現れ、そしてやはり本を出したいと言う。
半田は最初は丁寧な態度だったがだんだん横柄に言うようになり椎名はやんわり断る。
そして半田は外を見て小森の家を上島が買ってアパートにして家賃収入を得たらいいのではと勝手に提案する。
半田は小森に会いそのことを提案したが当然のごとく却下される。
その後、上島が椎名の家を訪れ近いうちに会社を辞め半田の紹介の雑誌社の社長となり、そのために出資し半田がその編集にあたるという。
椎名は止めたほうがいいのではと言うが上島は聞く耳を持たなかった。
やはりその後、上島は半田に騙され金だけを持ち逃げされていた。
以前から酒浸りになっていた小森はだんだん琵琶を弾く日数が減ってきた。
ある日、小森が椎名の家を突然訪れ一杯一緒に飲まないかと誘う。
小森によると今日を最後に電気が切れそして近いうちに郷里に帰るという。
そのため蝋燭がともされていた。
翌日、上島と椎名と愛人、その弟、椎名の友達を目の前にして最後の琵琶を演奏する。
そして翌日小森は郷里に帰り椎名は郊外へ引越した。
半月後椎名の新居に小森から手紙が来る。
・感想:
何と言っていいのか分からない作品。
読んでため息が出てしまい読後感はよくない。
男の淋しい末路だが最後の頼るところは郷里しかないのだろう。
騙すのが一番悪いが騙されるほうもそれなりに悪いと思うし、それだけ知恵というか思慮が足りなかったのも問題だと思う。
人生の風前の灯を蝋燭に例える。
ダメ男を「濡れ落葉」と揶揄されるが言い得ている。
そういう男にならないように努力しなければならない。