・読み終わった日:2009年6月14日
・人物:
渡辺(フリーター、圭子の元カレ)、圭子(渡辺の元カノ、医者志望、韓国籍)、千景・夏生・彩(学生時代の友人)、健吾(税理士事務所勤務、独身、正勝の息子)、正勝(健吾の父、棟梁)、田端(フリーター)、友美(田端の同棲相手)、乃里子(元派遣社員)、恭一(乃里子の同棲相手)、「家出中の兄弟」
・ストーリー:
渡辺は始めに真面目に働いていたが飽きっぽい性格のためフリーターとして職場を転々としていた。
圭子との交際のきっかけは学生時代のナンパに過ぎなかった。
渡辺は圭子は看護婦志望と思っていたが後に医者志望と気付いてから遠い存在のように感じ圭子の積極さが逆に気が引けてしまう。
圭子が医者になった後もだらだらと交際していたがあるとき圭子が韓国人だと分かる。
渡辺は気にはしていないが今度は圭子の方が仕事の忙しさもありよそよそしい関係になりついに自然消滅してしまう。
数年後渡辺の友達が怪我をしたので一緒に病院に付き添ったところ偶然医者の圭子を発見する。
しかし圭子は渡辺のことに気づかず横を通り過ぎる。
千影、彩、夏生は学生時代からの友人で特に彩と千影は仲良しだった。
ところが社会人になったばかりの頃、3人で京都を旅行し3人とも彼氏がいたにもかかわらず一夜限りのアバンチュールを求め夜の街に繰り出す。
そして彩だけが男をゲットすることに成功してが千影を部屋から追い出し男と楽しむ。
しかしそのことをきっかけに二人は仲違いしてしまう。
ところが今度は千影が私生活の不満から仕事帰り一人でバーに行き酔わされ寝ている最中に家の鍵を盗まれ家を荒らされる被害に合い夏生はそれを聞かされ急に怖くなり夜中彼氏の健吾の家に上がりこむ。
健吾は税理士事務所で働く独身で学生時代に付き合っていた彼女と喧嘩したあと彼女が交通事故死してしまうという悲劇を引きずっていた。
そこへ親戚の結婚式という名目で棟梁の健吾の父親・正勝が健吾に会いに来る。
かたや父親も女房をなくし辛い日々を送っていた。
健吾は今まで何となく父親を避けていたが上京してきた父親の淋しそうな姿を見て自分と重ねる。
父親もはっきり言わないが「忘れられないものがある」と遠回しに健吾に言う。
田端は一流大学出身、一流証券会社に就職したが今はフリーター。
女性には困らなかったが明確な目的を持てずにだらだらと生きていた。
証券会社時代の世間知らずのときに人妻と不倫しその人妻に誘われ仙台に駆け落ちしその後捨てられる。
その後パチンコ屋でアルバイトをしそこで女性と知り合い同棲して再び二人で再上京する。
その後バーでアルバイトをしていたが同性愛手に逃げられバーの女性・友美と同棲するという具合だった。
あるときバーのオーナーから共同経営を持ちかけられ乗り気はないが同棲相手の友美にそのことを話す。
ところが彼女はプロの音楽家からブラジルで一緒に仕事がしたいからと言われと言い一緒についてきてほしいと言われる。
田端は友美の一途さに心を打たれ応援するためにサンパウロに行くことにする。
乃里子は恭一と同棲していたがフリーターの恭一はストレスが溜まると乃里子に暴力を振るう。
恭一は別れたくても親に見栄を切った手前行くところがなくダラダラと同棲していた。
一方、乃里子も男に苦労しなかった自信からコツコツ真面目に働いて生きることから逃げてきたツケが回り男から見向きもされないことに気づいたときには35歳になっていた。
そんな頃こっそり聞いたラジオからDV相談室があることを知り相談する。
そこで相談しているうちに気持ちが前向きになり始め恭一と別れる決意ができる。
乃里子が相談所にいるときに二人の小学生くらいの家出中の男の子が保護されていた。
二人は別々に暮らすことになることを察知し逃げようとするところを乃里子は必死に引き止める。
しららくして乃里子は相談所の人から相談員にならないかと誘われる相談員になる。
乃里子は相談員としてやっていくうちに自信と誇りを持ち始め数年後名古屋へ転勤命令が下る。
これを機に名古屋の実家に戻ることになる。
引越しの車に乗っている途中で隣に乗っている運転手が見覚えがあることに気付く。
その運転手は以前相談所で逃亡しようとした兄弟で弟のほうだとわかる。
にこやかに挨拶をし充実したような顔を見て「人生悪いことばかりではない」と乃里子は思うようになる。
・感想:
読みやすくていいと思うしオチも読めるがまあまあいい。
著者の都会に暮らす若者の孤独・不安・焦り・というテーマをオムニバス形式という得意技。
いくつかの川が最後には一つの川に繋がるという話だがこの手法が好きみたいだ。
都会に住む一軒華やかに派手に生きているように見える若者も実はそうではない、悔しいから見栄を張っているんだ、という奥底に潜む語りたくない真理を浮かび上がらせるのは良い。
要は綺麗ごとではないのが良い。
ただ淋しいから、独りになるのは怖いからダラダラと同棲、というのは筋書きとしてはワンパターン化されているのは気になる。
実は小生が通っているジムでアルバイトをしている学生が著者の大ファンで是非読んでほしいと言われ読む。
全体的に村上春樹に似ているらしい。
これからどんどん著者の作品が映画化されると思われる。