税務調査の撃退法・4-1.刑事告訴における補足 | 税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

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今回は、前回記事で記載した「Ⅰ.刑事告訴」について補足いたします。



<告訴・告発権者>


まず、刑事告訴及び告発については、親告罪とされるもの以外については誰でも他人を被害者とする犯罪を告発することができます。



従いまして、もし税務調査の過程において、被調査者であるあなたに物件の提出を求めることで、第三者が被害をこうむった場合でも告発をすることが可能となります。



具体的な例としては、調査官Aが被調査者Bに対し、「あなたの勤務先C社が保有する物件Dの情報が印字された書類を提出しなさい。出さないなら反面調査に行く」と言った時になります。

実際にこんな依頼があるのか、と疑問を持たれるかもしれませんが、サラリーマン兼個人事業主が税務調査で最も困るのは勤務先に情報が漏れることです。

そして、このことは税務署も理解していますので、表向きは税額の確定という目的にしておき、真実は嫌がらせ目的で勤務先の情報を出せと迫ってくることはよくあります



上記の例が具体的に刑法の何罪に触れるか、という点については敢えて割愛させていただきますが、上記の場合は、勤務先C社を被害者とする犯罪を告発する、という方法で対応可能です。




<刑事告訴をすることは脅迫か?>


過去の判例において、以下のような事例がありました。


「Bに対してAが、本来は何らの罪や債務不履行等が無いのに罪や債務があるように告訴状を偽装し、虚偽告訴をした。これを知ったBがAに対して、『虚偽告訴を取り下げろ。さもなくば、虚偽告訴罪で訴えるぞ』と伝えた。ただし、Bは内心において真実は訴えるつもりは全く無かった。」


さて、この事例でBは脅迫罪に当たるのでしょうか?



実は、この事例では「(その気が無いのに)告訴する。」と伝えることは脅迫罪になるという判例が出ています。ただし、この判例には批判が多く、それらのエッセンスをまとめると以下のようになります。



・告訴する気が全くないのであれば、告訴すると伝えることは脅迫になりうる。

・ただし、告訴する気が少しでもあるのであれば、告訴すると伝えても脅迫にはならない。



内心の問題なので難しいところですが、少なくとも、税務調査で被害を受け、その被害救済のために告訴をする気を少しでも有している状態であれば、「告訴する」と調査官に伝えたとしても、脅迫罪にはならないのではないかと予想しています。(※あくまで私見です。)



<刑事告訴・告発後の対応>


刑事告訴・告発を行った後ですが、検察・警察による捜査が行われ、最終的には以下4つの結果が告訴・告発者に通知されます。


①起訴する

②起訴猶予として起訴しない

③嫌疑不十分として起訴しない

④嫌疑なしとして起訴しない


①は良いとして、②から④を簡単に説明します。


起訴猶予は、捜査の結果、刑事裁判において裁判官を説得して犯罪の立証ができると判断したが、罪が軽いとか示談が成立したとかの諸般の事情を考慮して、起訴しないことにしました、という判断です。


嫌疑不十分は、捜査の結果、一応は犯罪が行われたとは予想しているが、刑事裁判において裁判官を説得して犯罪の立証ができるほどの証拠が出せないと思われるため、起訴しないことにしました、という判断です。


嫌疑なしは、捜査の結果、犯罪が行われた事実が認められないので、起訴しないことにしました、という判断です。



通常の告訴においては、①以外は告訴・告発者の負けとも言えますが、税務調査における調査官の犯罪であれば、①と②は実質的に完勝、③が今後の勝負の分かれ目、④は負け、という事になります。



起訴猶予まで行けば、犯罪自体は捜査で立証されたわけですから、この結果を税務署に対して提供し、「おたくの調査官が税務調査で犯罪行為を行ったことは検察・警察により立証された。同じ行政機関が犯罪ありと判断した調査に基づいてなした更正処分を、それでも正当な調査だったと強弁するのか?」と押せば、通常は更正処分を取り消すでしょう。


もし取り消さなければ、マスコミへのリークも相当強力な手段となりますし、その後の税務訴訟でも起訴猶予になったという事実は税務署側に相当不利ですから、税務訴訟に持ち込んでも勝てる可能性は格段に上がるでしょう。




ただし、相手が公務員であるため起訴猶予まで持って行くには相当強力な証拠が必要です。

依頼者の方や相談者の方には口酸っぱく言っていますが、税務調査の録音が最も強力な証拠になりますので、臨場調査だけでなく、電話でのやり取りも録音した方が良いですね。



税務調査で困ったら:税務調査の撃退法

 

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