税務調査の撃退法・4.税務調査における攻撃手段・心得 | 税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

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今回は、前回の⑤で記載した項目についての具体的な攻撃手段、及び心得について記載します。



【攻撃手段】


攻撃方針についての手段を記載したいと思います。




Ⅰ.刑事告訴


⇒名前は聞いたことがあるかもしれませんが、他者を犯罪者であると捜査機関に告げる行為です。




対象はもちろん、担当調査官とその上司であり、間違っても税務署や国といった組織を告訴することは止めてください。(告訴の信用性が逆に下がります)




そして、今までの録音は全て客観的な物的証拠になりますので、ここで生きてきます




告訴状に特別な様式はありませんので、ネットからダウンロードでOKですが、捜査機関である警察の手間を省いてあげることを考え、事実と違反事項を詳細に記載し、そのまま報告書になるように作成することがポイントです。




通達違反は法律違反ではないので警察の捜査対象外ですが、「間接事実」として参考情報として記載しても良いでしょう。




以下、調査官に該当しそうな罪を列挙します。

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<罰則のあるもの>


刑法103条:犯人蔵匿等罪
刑法104条:証拠隠滅等罪
刑法156条:虚偽公文書作成等罪
刑法158条:同行使罪
刑法193条:公務員職権濫用罪
刑法234条:威力業務妨害罪
刑事訴訟法239条第2項:公務員の告発義務違反の罪
国家公務員法100条第1項:秘密を守る義務違反の罪
国税通則法126条:秘密漏えいの罪




<罰則の無いもの>


国家公務員法第82条第1項第2号(職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合)
国家公務員法第82条第1項第3号(国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合)
国家公務員法第96条1項(服務の根本基準)
国家公務員法第98条1項(法令及び上司の命令に従う義務)
国家公務員法第99条(信用失墜行為の禁止)
国家公務員法第101条1項(職務に専念する義務)
日本国憲法第29条(財産権の不可侵)
日本国憲法第31条(人身自由の手続的保障)
日本国憲法第35条2項(令状による捜査)
日本国憲法第84条(租税法律主義)




そして、告訴を行うメリットは大きく2つあります。




一つは、費用や手間がかからないことです。




事実の調査・逮捕・起訴は警察や検察がやってくれますので、告訴者は協力すればいいだけです。




もう一つは、社会的影響が大きいという事です。




小職が知る限り、これまで調査官が違法な税務調査を行って違法な理由で更正処分を下した、という事件や、税務職員が証拠をでっち上げて架空の証拠に基づいて更正処分を下した、という事件が刑事事件になったことはありません




従い、違法な税務調査であるとして刑事告訴をして起訴まで行くと、これは日本の税務行政史上初の大事態となり、担当調査官だけでなくその税務署、国税局、財務省を巻き込んだ大問題に発展します




また、昨今は税務職員による不祥事が相次いでおり、社会の目も厳しく、不祥事の際の処分も厳しくなっています。




調査官の気持ちを想像してみてください。




・税務署に警察官が大挙して押し寄せ、あなたが逮捕されて連行される。


・自分の机や部署のロッカーを引っかき回され、書類を押収される。


・そして、その一部始終を上司・同僚・部下すべてに見られている。


・マスコミも駆けつける。




出世が無くなるどころの騒ぎではないでしょう。




ちなみに、過去に警察が証拠をでっち上げた刑事事件がありますが、ご興味があればお調べください(城東署覚醒剤所持捏造事件)。




Ⅱ.請願による担当調査官の罷免・懲戒請求



⇒あまり聞きなれないと思いますが、日本国憲法16条に記載された国民の権利です。




そして、(ある意味恐ろしい規定ですが)日本国憲法15条1項で、全ての国民には公務員の罷免を請求する権利があります




刑事告訴ほど効果はありませんが、請願が適式に提出された場合、国は対応せざるを得ません。(対応義務が請願法5条に記載されている。)




これは税務署長宛に出すことになりますが、Ⅰの刑事告訴や、Ⅴの関係各所への告発と併せても有効です。




具体的には、担当調査官の違法行為の指摘、担当調査官とその上司の罷免請求を記載することになります。




調査官の気持ちを想像してみてください。




あなたの上司や部門長宛に、あなたの犯した数々の違法行為が証拠と共に記載された、クビを求める文書が提出された時、どう思いますか?




その後に待つのは低い人事評価と左遷です。




Ⅴ.関係各所への告発


⇒刑事告訴だけでは気がおさまらない、というときは、関係各所へ告発できます




これは刑事告訴との同時進行が有効です。




刑事告訴したことを明記しつつ、担当調査官の罷免を求め、請願書として、内容証明で出す方法が最も有効です。




関係各所としては、以下があります。




・税務署長


・国税局(税務署を統括する上位組織)


・人事院(公務員の人事権を握っており、問題があれば公務員を召喚して説明させる権限をもつ)


・財務省の監察官室(税務職員の違法行為を調査・摘発する権限をもつ)


・担当調査官と上司自身((写)として出し、刑事告訴を始めとした関係各所へ、同内容の文書が提出されていることを認識させる意味において効果があります。)


・担当調査官の同僚(おたくの同僚にはこんな違法行為を働く者がいるので、貴殿はそのようなことが無いように願う、というような手紙で構いません。職場の人間関係がギクシャクし、間接的に調査官にプレッシャーを与えられます。)


 ⇒税務署職員の名簿は公表されています。近くの税理士会や民商等に行けば、無料で閲覧できるかもしれません。無理な時は「税経」ホームページで無料で閲覧できます。


・マスコミ(税務行政始まって以来の事件ですが、取り合ってくれるかはわかりませんが、効果があるかもしれません。)


・ネットでの担当調査官の実名告発(公務員が公務として行う行為は自由な批判にさらされるべき、という考え方があり、刑法においても、公務員の行う公務、違法行為、等を実名でさらすことは、公益に資するものとして名誉棄損や侮辱罪には当たりません。)




以上が攻撃手段となります。




刑事告訴して調査官が起訴された場合、日本では有罪がほぼ確定ですので、起訴の事実をもって国家賠償を起こしてもいいです。




後は煮るなり焼くなり好きにしてください。




【攻撃の際の心得】


ここでは、攻撃に際しての心得を記載します。



①情けは捨てる


⇒調査官も人間です。配偶者、年老いた両親、小さい子供もいるかもしれません。




そして、攻撃の最終目標は「違法な税務調査による調査自体の無効主張」ですが、性質上、違法な税務調査が独立して存在することは無く、副次的に担当調査官の違法行為追及となります




従いまして、結果として担当調査官のクビを求めることになります。




その際に相手に情けをかけることは、必ず自らの首を絞めますので止めましょう。




相手が可哀そうだとか、職を失って路頭に迷ったらどうなるかとか、両親の介護や子供の世話はどうなるかとか、刑務所に収監されると家族が離散するとか、憐みの念を少しでも持つようであれば素直に否認に従う事を強く勧めます。




②覚悟を決める


⇒今回、小職が担当したX氏には何度も確認しましたが、”覚悟”は絶対に必要です。




相手が聞き入れない場合は絶対にやりきる。告訴も辞さない。という強い覚悟です。




途中で止めるという行為は最初から諦めるよりも悪い状況になりますので、少しでも躊躇があれば、素直に否認に従う事を強く勧めます。




③長期戦になるので、体調管理を徹底する。


⇒このような戦い方は、納税者・調査官双方の神経をすり減らす消耗戦になります。




そして、通常は一年以上の長期戦になりますので、体調には気をつけてください。




特に、防御期間においては相手からチクチクと責められますので、不安とともに胃の痛い、場合によっては寝付きの悪い毎日を過ごすことにもなります




運動や胃薬など何でもいいので、ストレス解消や精神を安定させることを定期的にやってください。




④目的と手段を取り違えない。


⇒調査官と戦う目的は、あくまで「こちらの税務処理の是認」であり、公務員いじめではありません。




人は調子に乗ると考えられないミスをするものですので、自分が優位にある時こそ慎重さが求められます。




一気呵成に攻撃を加えるときでも目的を忘れず、慎重かつ大胆に対応することが肝要です。




⑤黒を白にするのは無理。


 ⇒どのような戦い方をしても、黒は白にはなりません。




税法に明記されている処理について、「納得いかないから従わない」という主張は絶対に受け入れられません。




逆にこういう無理筋を通そうとすると、「単なるわがままモンスター」のレッテルを貼られ、戦術全体のマイナス印象につながりますし、場合によっては公務執行妨害・威力業務妨害・強要罪になることもありますので、厳に慎んでください。




⑥面従腹背、慇懃無礼の姿勢で臨み、調査官を乱暴な言葉や高飛車な態度で威圧しない。


 ⇒例えば虎の威を借る狐に対し、兎であるあなたが狼一匹を連れて脅した場合、狐はどのように対応するでしょうか。




おそらく狐は素直に従わないどころか自分を脅そうとした兎に逆上し、虎をけしかけて狼もろとも兎をなぶり殺すでしょう。




これと同じで、国家権力が後ろにいる調査官に対し、机をバンバン叩いたり「訴えるぞ」と言葉で下手に脅したりすることは逆効果です




どんなに理由があったとしても、公務執行妨害や強要罪で逆にやられるリスクが増しますし、刑事告訴したとしても心証が悪いです。




こういう相手には「静」や「柔」の態度が効きます。




あくまでやんわりと違法行為を指摘しつつ、穏やかに説明を求めましょう。




売り言葉に買い言葉となるような喧嘩状態より、こちらの質問の返答に窮し、1分間以上も重い沈黙が続く方が調査官にとっては堪えます




この心得は実際に使いました。




相手が答えにくい質問を小職がした後、腕時計で時間を計り、相手が何か発するまで微動だにしない態度で接しましたが、30秒の沈黙ですら長く感じました。(攻撃側の私が長いと感じたのですから、調査官はもっと長く感じたでしょう。)



まさに、時計の秒針の刻む音が響くほどの静寂に耐えかねて調査官は発言しますが、答えに窮した上でかつ練られていない発言なので、失言が多くなります。




狐の例で言うと、差し詰め、ショットガンとマシンガンを携えて虎と狐の眉間に銃口を突きつけ、「仲良くしましょう」と笑顔で語りかけるようなものでしょうか。



⑦可能な限り衝突は避ける

『孫子』にも戦いの心得として記載がありますが、戦争をするという事は最善策ではありません。そうではなく、説得により戦争をせずに勝つことがベストであると言っています。



これと同様に、税務調査で調査官と本気で戦うことは、可能な限り避けるべきです



相手があまり気にかけていない事項についてこちらが喧嘩腰で臨むと、何かあるのではないかと言う疑念や、反抗的な納税者に灸をすえてやろうという感情が想起され、調査が無駄に長引く可能性があります。



ですので、調査官の要求には可能な限り素直に対応し、絶対に譲れないという場面で、かつ、説得や交渉が無理と考えられる場面のみで戦うべきです。



例えば、サラリーマン個人事業主の事業性の否定のような、すべてを否定しにくる(=最初から、敵を皆殺しにして財産を略奪する目的で攻め込んでくる)場合は、交渉の余地が残されていませんので、権利を護るために全力で戦うべきですが、医療費控除の記載内容の照会については、説明により容認という判断を引き出せる可能性が高いので、戦うべきではありません。



以上が税務署との戦い方の心得になります。




一つ声を大にして言いたいのは、これまでの方針や戦術で実際に勝った。という事実があることです。




百の理論より一の証拠の方が証明力は高いと思いますが、この戦術は万能ではないとはいえ、現実に成果を出しています




では、実際の税務調査においてどのように応用できるのか、次回からは小職が体験した実際の税務調査について記載したいと思います。



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