フリークス~第1話~ | ラクロス部の部ログ

フリークス~第1話~

僕は五十嵐良平、ラクロッサー。

一球大学(ひとつだま・だいがく)の4年生だ。


季節はもう8月。

気づけば、学生最後のリーグ戦が近づいていた。


練習ばかりしてきた毎日を振り返ってみると、初めてラクロスに出会った頃を思い出す。

今でも、鮮明に浮かび上がってくる、あの頃の衝撃。




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3年前の、4月も終わりの頃。
当時の僕は大学に入学したばかりのごく普通の1年生だ。
しいて人と違うところを挙げるとすれば、まだ所属サークルが決まってないってことかな。


そんな僕は学校に向かうためにちょっと急いでいた。

その日は1限から授業があったのだ。


ふと見ると、通り道のグラウンドで変な球技をやっていた。
アメフトでもホッケーでもない。なんだろう。

ヘルメットを被って、変な棒を振り回している。


立ち止まってなんとなく眺めていると、一人の男が近づいてきた。



「(ウホッ、いい男)」



するとその男はおもむろにメットを脱ぎはじめた。




「や ら な い か」



(写真はイメージです)





「え?」


「君、見たところうちの大学の新入生だろう?ラクロスやらないか」



ラクロス?なんだそれは。
一瞬わけがわからなかった。
興味ありそうに見えたんだろうか。


「いえ、僕はまだサークル選びの最中でして・・・」

「そうか、ならなおさらいい。体験していかないか?」


彼、名前を阿部武と言った。
新勧活動もやりなれてるらしく、
僕はグラウンドを通りかかるなり強引に勧誘されてしまったのだ。



「せっかくですが、授業に行かなければいけないので・・・」

「そうか、まあよければまた来てくれ。いつでも大歓迎だよ」




爽やかな人だった。

しかし、ラクロスってどんな競技なんだろう。

気にはなりつつも、授業に向かった。




「なあ勝、ラクロスって知ってるか?」

二宮勝、高校からの友人だ。

「ああ、なんか網のついた棒もってやる女の子のスポーツだろ」

「いや、男もやってるみたいだぞ。しかもなんか、アメフトみたいな格好でやるみたいだ」

「へえ。それは知らなかったな。男もやるんだなあ。それがどうかしたのか?」

「いや、別に・・・ところでお前サークル考えた?」

「や、どこも迷っちゃってな。。とりあえず部活やれればいいんだけど。」

「そうだな、高校まで野球やってきて今更テニスだとかって感じではないけどな。。」


そんなことを話していると、授業が始まった。





大学の授業も終わり、
勝と同じ方向なので、一緒に帰り道を歩いていると、
子犬が道路に飛び出していた。









するとそこに軽自動車がやってきた。


「あ、あぶない!!!」




子犬がひかれてしまう・・・!








ドガッ!!!






次の瞬間、僕らは目を疑った。









「く、車が・・・」
「まさか、車を体当たりで止めるなんて・・・」





(写真はイメージです)







「ふう、あぶなかったな」



なんと、いきなり現れたその人は、体当たりで車を止めたのだ。


子犬は無事だった。




「あ、あの、、、」

「ん?」


「だ、大丈夫なんですか?」

「ああ、いつもやっていることを応用しただけだ。大したことはないよ」

「いつもやってる???アメフトやってるんですか?」


「いや、ラクロスだ」



!!!!!!!!


ラクロス!?




「ええ?ラクロスって、こんなことやってるんですか!?」


「ああ、今のはマンと言ってな、ラクロスのグラウンドボール(GB)やディフェンスにおける重要な技術だ。」



衝撃だった。

ラクロスというものを、このとき知った。

そのときの僕は、どんな顔をしていただろう。

体をはって子犬を助けたこの人と、ラクロスという競技に対する興味が、
体の底から湧き上がってきていた。


すでに散り終えた桜の木の風鳴りが、あたりにひびいていた。




(つづく)





この話はフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係ありません





作:マンダウン三浦





あとがき:

・・・とうとう始まってしまいました、『フリークス~楽球狂想曲~』。

元は、GREEというSNSで、冬オフ中の暇つぶしと、ラクロスにかける情愛が絡まって生まれた、

ごく私的な気持ちから出た企画でした。

「ラクロス漫画があればもっとラクロスが普及するのに!」

そんな気持ちを行動に移してみたのです。

全15話完結という要求、月曜だけみんな読み飛ばすんじゃないかという不安と戦いながら、

これから毎週月曜にアップしていきます。請うご期待。