昨日の棋聖戦挑戦者決定戦の振り返りです。
 
戦型は横歩取り。佐々木勇気愛用の▲6八玉形。先手の飛車が従来形に比べると中段にいるので効いているような感じもあるが、的になりそうでもあり、アマが指しこなすのは大変そう。
 
※ 私は2000年代、横歩取りをこよなく好んで指していたが、最近はついていくのがしんどい。この前、ある大会に出場した際、他の人達の戦型を眺めていたが、横歩取りは1局もなかった。むしろ自由度の高い角換わりの方が多くなっていたように感じた。
 
 さて、馬ができて、これがどれくらい効いているか。手数をかけて製造した以上、自陣で安定勢力になってくれればと思うところだが、この戦型だと歩の散兵線の後ろに引き上げるのが難しく、馬への当たりが直ぐに発生してしまいがちである。本局でも△7六飛と馬に狙いをつけられる。
 
 
普通なら金を▲3四歩で追い払って馬を逃がすのだろうが、なぜか糸谷は▲3四桂。玉に逃げられたところで直ぐに銀を取らず(取れず)▲5五馬。これでは桂馬が無駄打ちになるのだが、銀を取ると飛車で馬を取られて△7五角くらいでもちそうもない。▲3四歩△4四金なら▲2三歩成で軽い攻めになるから、様子が違っていたはず。後手陣は飛車への耐性があり、飛車と馬の交換なら大歓迎。今更、馬を逃げようとはしてみたものの、△4四金と標的だった金に当たりを食らい、先手苦戦。
 
7六飛は大きな顔をしながら居残り、先手左翼への玉の逃亡は不可能。かつ右翼もボロボロ。これは直ぐにかたがつくな、と思ったのだが、そうでもなかった。齊藤が飛車を見捨てたため、抑えの駒が消えたのである。飛車を引いておけば7七に脱出口が開くこともなく、攻めやすかったはずなのに。。。本人も「飛車を取らせる人はいませんでしたね」と後悔していたが、らしくない判断ミスであった。
 
 
その後も斎藤に小ミスが続く。△6三銀打では△3七歩成で後手が勝ちだろう。▲6八玉に△5七桂成があるので捕まっていると思う。その他もいくつかあるようだ。(今、確認したところ千田も同じことを言っていた)
 
 
 
ここからは大乱闘。糸谷がうまく抜け出したかと思ったのだが、△9八銀を見舞われる。下への逃げ道を潰されると9四への効きがないこともあり、先手玉が危ないのか・・・と思いきや銀を不成であっても後手の勝ちというのだから、よく分からない。そもそも▲8五香と詰めろを防ぐのが第一勘だが、ダメなのだろうか。毎年、棋聖戦挑戦者決定戦は将棋世界ではろくな解説がつかないので、真相は不明なままだろうか。 
 
 
いかにも本格派の齊藤。佇まいが非常にいい青年であり、以前から注目していた。順位戦以外では爆発的に勝たなかったことすら、効率的に順位戦での昇級と同義である。何となく天辺まで一直線に乗ったような雰囲気がある。電王戦の時の戦いぶりも期待を裏切らなかった。あっさり羽生を倒してしまっても驚かないかな。言い換えると接戦になると羽生に一日以上の長があると思う。羽生も藤井登場で意欲が掻き立てられていることだろう。好勝負だと羽生、圧勝なら齊藤、と予想しておきます。