56.思わせぶりな | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

56.思わせぶりな

とても緊張する。

隣で運転する彼に心臓がリンチにあってる。

鼻息がピーって鳴りそう。

助けてー。

鼻息?それとも心臓?私をなんとかして・・・。


「ちょっと顔見せて」

赤信号に車を止まらせ彼が祭り真っ最中の私言う。

「何で!?」

アゴを持たれ彼の顔が近づく。

私は目線をそらすのに精一杯だ。

「うん、可愛くしてきたやん」

顔をマジマジと見ながら彼は私を褒めちぎった。

「な、何よ?!」

真っ赤になって私は顔をそむけた。

急に何を言い出すんだ。

その気になってしまう。

その気って何の気なんだよ。

「お前はほんま、昔から褒めると直ぐ照れるよな」

「からかってんの?」

「いいや、ほんまに可愛ぇよ」

彼が解からなかった。

私は内心ウキウキ気分できたけれど、友達だと言い聞かせてきた。

1年以上も前に、お互い告白しあったと言っても過去だもの。

それに彼には彼女がいる。

私は無理やり彼氏を頭に浮かべた。

急に気が滅入った。


小さなとてもオシャレなレストランにつく。

こんな可愛いお店が田舎にあったんだな・・・。

「ちょっと待っててくれる?」

「いっぱいなの?」

「まぁな、多分席が開くのはむずかしいかも」

彼が店の中に消えてった。

私はしばらく駐車場の車の中で彼を待った。

遅いな・・・。

コツコツと窓をたたく音に目を向けると、彼が「おいで」という口をした。

車から降り、彼について店にはいる。

とても綺麗なレストランだった。

硬くもなくくだけてもなく、雰囲気のいいレストラン。

薄暗い照明に少しホッとした。

何だか彼の顔を見る事ができなかったから。


「ちょっと狭い席になったけどごめんな」

「うぅん、別に大丈夫だよ」

「そう言ってもらわな怒るけどな」

「怖っ!」

「お前が遅いからやぞ、ちゃんと予約してたのに」

「予約?!」

「あぁ。待つの嫌いやからやで」

「ごめんなさい」

「この店いいやろ?気に入った?」

「うん」


彼がますます解からなくなった。

1年前はそんな予約なんてせずにファミレスだったじゃん。

私、レストラン予約されたのなんて初めてだよ。

少し私は挙動不振だったかもしれない。


「ねぇ、煙草すっていい?」

「俺もちょうだい」

私は彼よりも大分先に吸い終わった。

料理をオーダーしてまだ1品も運ばれないうちに私は2本目に火をつける。

「お前吸いすぎやぞ」

冷静ではいられない。

友達・・・。

だめだ、私は彼が好きだ。

こんなことされたら、私は泣いてしまう。

このまま緊張がとけませんように。



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