49.別れさせてあげる
仕事を終わらせ、男の車に乗り込む。
時刻は大体夜の9時頃だろうか。
疲れた、眠い、お腹すいた、そんな事ばかりを考え、「疲れた」「眠い」「お腹すいた」とそのまま口にした。
「じゃ、どこか食べに行きましょうか?姫?」
「姫はやめて、前の男がそう読んでたから」
「じゃぁ、せのり」
「お腹すいた」
「はいはい」
和食やで食事をし、何も言わず男は車を走らせている。
この道も覚えた。
もう直ぐ彼の家につく。
携帯がなった。
彼からだ。
<今、何してる?>
私は、人と会っている時は絶対に携帯を弄りたくない。
隣にいる男は・・・人?
<彼氏の車乗ってる>
<こんな時間に何処いくの?>
<知らない、彼氏ん家じゃないの?!>
<へ~、デート中お邪魔かな?>
<そんなことないよ>
メールは続く。
どんどん続く。
車のエンジンが切れ、駐車していることにも気付かなかった。
「ねぇ、とりあえず車降りてよ」
男が不満そうに私に言った。
「あぁ、言えばいいのに」
「誰?」
「知ってどうすんの?」
「俺いるじゃん」
「だったら最初からそう言えばいいでしょ?」
「もう終わる?」
「知らない」
私は男の部屋へメールを打ちながら向かった。
男は本を読んだり、パソコンを弄ったり、映画を見ているようだった。
何も話しかけてはこない。
私はずっと返事を返してくる彼のメールに夢中だ。
<彼氏、今何してんの?>
<知らないよ>
<いいの?メールしてて>
<いいんじゃない?何もいわないもん>
<俺としてはもう少し話したいが、明日仕事なもんで、寝ます>
彼とメールを終わらせた。
時計は日付を変えてた。
楽しかった。
このまま眠りたい。
携帯を鞄にしまうのを目で追う男の視線が気になった。
男は直ぐに私押し倒した。
涙が出そうだ。
そこへ男の携帯がなる。
女からだった。
男はその場を離れず、私に聞かせるかのように話している。
別れ話を始める男。
多分、女に心の準備はなかったはずだ。
突然過ぎる話は、当然長引いた。
このままだと、こいつらは別れてしまう。
でも・・・両方失うのもいいかもしれない。
私は男にキスをした。
わざと音を立ててキスをした。
電話の向こうで女が疑惑の声を上げている。
男は私がいると言った。
女の声が聞こえてくる。
大きな声だ。
私は男の首を舐め、上から下へと体中を舐めまくった。
男の息があらくなる。
男は電話を切り、私の体を舐めまくった。
汚らしい。
男の携帯がなる。
「出なよ」
「出ない」
「出なよ」
「いいよ、もう我慢できない」
「へー、二股かけながら抱くんだ」
男は渋々電話を受けた。
女の声は聞こえない。
女が諦めた。
「別れたよ。もうせのりだけだ」
「私だけ?」
「そう、俺が好きなのはせのりだけだ」
「私もあなたが好きよ」
私は男に抱かれた。
不思議に濡れた。
朝日が窓から差し込んでくる。
ぐっすりと眠れた。