46.マメな男の疑わしき行動 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

46.マメな男の疑わしき行動

男の家から仕事場へ出勤する。

これに関しては新鮮さなどはなかった。

今まで浮気相手ばかりの恋愛だったけれど、同棲していたこともある。

そんな恋愛ゲームもある。

浮気相手を自分の家に隠しながら、外で彼女と遊ぶ男。

行動パターンで真剣さなどは伝わらない。

同棲したって浮気相手の場合もある。

行動じゃ、解からないもの・・・。


休憩時間に携帯を開くと必ず男からの未読メールアイコンが表示されていた。

返事をすると必ず即行でまたメールが送られてくる。

普通、喜ぶべきことなのだろうか。

マメな男だ。

私にあまり好きという感情がないからそう思うのだろうか。

ウザかった。


朝と夜、一括の返信を送る。

<ごめんなさい、メールを打つ時間がなくて>

そんな言葉を付け加えて。


何故私はこんなことをしているのだろうか。

面倒ならやめればいい。

彼女というものに私は何故こんなにも執着しているんだろうか。

やっぱり解からなかった。

普通なら多分こんな風にするのだろうな・・・そんな事を思いながらの私の言動。

それに気付かない男も、本当に私が好きなのかと疑わしい。


ある日、仕事場の上司が言葉を選びながら話しかけてきた。

「お前、彼氏できたん?」

「何でですか?」

「いや、ちょっと噂で聞いて」

「あぁ、うん、出来たよ」

「俺、知ってる?」

「あぁもぅ、何か辛気臭い!はっきり言ってもいいっすよ」

「山田(仮名)と付き合ってる?」

「はい」

「何であいつなん?」

「変ですか?告白されたから」

「でもさ、お前何人も告白されてて何であいつなん?」

「なんででしょう?」

「あいつ、この会社に女おるぞ!」

「マジで!?」

「あぁ、やめとけよ」

意外にショックだった。

いや、違うな。

またかという自分の馬鹿さ加減にショックだった。

私は見る目ないな・・・。


ふぅ、どうしたもんか・・・。


週末、私は働いていたのだけれど、休みだった男からの誘いがまたきた。

毎週毎週は本当疲れるよ。

それにもうこの男とも終わりだし。

女が居る男はもういらない。

たとえ彼女という恋愛ゲームでも、もういらない。

実験材料にはならない。

<ごめん帰るわ>

私は、断りのメールを入れる。

が、男は仕事場の近くまで既に迎えに来ていた。

強制ですか・・・。

<迎えに来てても帰るから>

再度断った。

<解かった。家まで送ってくよ>

そう言われ、ほっとして職場を出るが男の車が見つからない。

「もしもし、何処?」

「仕事場からちょっと離れたとこにいる」

「なんで、わざわざそんな所へ移動したわけ?歩けって?」

「ちょっとだよ、此処まで来て」

「歩くなら電車乗って帰るからいい」

「わ、解かった近くまで行くから直ぐに乗ってね」

「何で?」

「ほら、あれ、社内恋愛とかバレたらあれだし」

「もう既に噂の的ですけど・・・」

「嘘・・・」

「都合悪いの?」

「いや、それならいいんだけど」

迎えに来たりマメなことをする男だけれど、全て計画された行動のように思える。

計画が崩れだした男の焦りに見えてくる。

その焦り、地獄に変えてあげましょうか。


車に乗り込み家まで送ってもらう。

「女いるんやって?」

「え、何で?いないよ」

「しかもあの会社にいるそうね」

「噂やろ」

「噂ね・・・どっから沸いたんだろうね?」

「あ、あれだ!俺、会社の子に言い寄られてて断ってもしつこくてさ。で、何かその子すごい彼女ノリで困ってるんよ」

「ふ~ん」

この言動、怪しすぎる。

これで吐いたら恋愛ゲームは終わりだ。

理由を考えずに楽にフレる。


タイミングが良いというかなんというか、そんな話の最中に例の子からメールが入る。

男はきっと遊びなれている。

こんな状況に、女を落ち着かせる術を知っていた。

「メールなんて書いてあるか読んで?」

「自分でみなよ」

「運転してるし、読んで」

私はメールを読み上げた。

こいつ黒だ。

さ、どんな行動を起こす?

男は知ってたはずだ、どんなメールがくるかくらい。

「な、彼女ノリだろ?」

「彼女そのものって感じね」

「適当に返事しといてよ」

「解かった」

私はこの女に対して別れろなんて事は打たなかった。

彼が打つだろう文面を真似て打ち込んだ。

男に打ったメール内容を教えてやる。

もう関わるなとか打ってもいいと言っていたが、男はホッとしたような顔を見せた。

きっとやりなれている。

あとで「俺が打ったんじゃない」と言えば取持てる自信もあっただろう。

が、私はそんなに馬鹿じゃない。

この男と女に別れてもらっては困るのだから。


家に着き、男は寂しそうに私を引き止めた。

「本当に帰るの?」

「帰る、疲れた」

「解かった、でも少しでも会えて嬉しかったよ」

何も感じなかった。

私は彼の愛よりもやはり彼女というものだけに喜びを感じていたのだ。


胸が痛い。

苦しい。

今になってバーテンダーの彼に助けを求めるなんて図々しいだろうか。

必要とされたい。

そう思うといつも彼が頭に浮かんだ。

彼女がいるけれど、彼が私を必要としてくれてるというのは何となく感じている。

それは恋愛なんかじゃない。

私は彼を好きで、彼も好きじゃなきゃ駄目、そんな気持ちがストップをかける。

友達・・・。

私は彼と友達になりきれない。

でも、今はそれでもいい。

浮気相手とか何番目とかもううんざりなんだ。

彼ならきっと疑惑なく、私を私として必要としてくれる。

会いたい、彼に会いたい。



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