45.恋人体験 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

45.恋人体験

恋人、初めての感覚。

私の恋愛暦には何人もの男がいたけれど、私を彼女にしてくれたのはこの男が始めてだ。

恋人。

くすぐったさに気持ちよかった。

恋人。

何度も呟きたい響だ。

少し虚しかったけれど。


男は次の週もデートに誘ってきた。

今まで遊びでしか男と関わった事がなかったので、少しウザったさはあったが受け入れることにした。

もう自分で気付いていた。

これは実験のようなものだと。

罪悪感というものもなかった。

目をつむると、悪魔のような自分の顔が見える。

でも、そいつが偶に天使のような笑顔をみせるのだ。

そんな笑顔から、自分の悪質な行為に「此処から始る恋もある」という逃げ道を作った。


映画を見終わったあと、男は物言わず男のマンションへと車を走らせた。

「降りて」

「此処何処?」

「俺ん家」

ムグーーーーー。

私の心は妙な唸りしか聞こえてこない。

自分は何が言いたいんだ、はっきりしろよ。

鼻から思いっきり息を吐き出して、解からないまま部屋へと向かった。


それから4日間、裸で過ごした。

入れるだけのセックスだ。

遊びの男の方がもっと丁寧にしてくれた。

セックスは痛いが気持ちよさはある。

最高だと思えるからこそ、今まで遊んできた。

痛みがなくなるほどの濡れはないが、体はしっかり反応する。

膣内ではドロドロと溢れているようだ。

外まで濡れない私に男がかきだしておもしろがる。

「不思議な体質だね、濡れるのに直ぐ渇く」

「他の女性は知らないけど・・・」

あなたじゃ濡れないとはいえなかった。

遊びで濡れないと知っても、本当に体質かもしれない。

本当に好きな人とセックスなんてしたことないもの。

濡れなきゃ、もっと前戯に精をだせばいい。


本当に好きな人か・・・。


仕事が入っていて助かったと少し思った。

セックス三昧から抜け出せる。

恋人か・・・。

重いため息をかさねた。

また悪魔の笑顔をみる。

彼女らしいことでもしてみるか。

今までやったことのないような、惚気たメールを男に打つ。

直ぐに返事が返ってくるメールに新鮮な喜びを感じた。

好きというのは、こういうものでもいいのだろうか。


やり方が解からなかった。

恋人って何をする関係なのだ。

よく解からなかった。

自分も解からなかった。

一体何がしたかったんだろう。

浮気相手ばかりしてきて、彼女になりたいと願った。

だけど、その彼女になって何がしたかったんだ?

ズキズキと胸が痛んだ。


何の痛みかなんて解からない。

傷が叫ぶ。

罪悪感でない事は確かだ。

私は自分の事しか考えてなかった。


あの頃、こんな風に悩んだ時はいつも彼が話を聞いてくれたな・・・。

恋愛をしているという感覚が私の心を麻痺させていたのだろうか。

私はふと思い浮かべたバーテンダーの彼をかき消そううなんてことしなかった。

むしろ、心の外側を覆って欲しいと思った。

あの男に私の心なんて視ることはできない。

この男への想いが、彼への想いを越えてくれたらば・・・。



← 44 ]  [ 46 →