32.ちょっとそこのインドまで | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

32.ちょっとそこのインドまで

自転車を走らせ、近くのホームセンターへ向かった。

こういう時の行動力のすごさに、やっぱり自分でも驚く。


買うものは決まっていた。

決まっていたと言っても、2時間近くホームセンターをうろつき回ったのだけど。

まずは耐久性の強いリュックを選んだ。

それから、使い捨てではない長持ちしそうなお泊りセットと日焼け止め、それから蚊取り線香に薄手の毛布に懐中電灯、それから本屋に行って地球の歩き方を買った。

帰りにインド行きのビザを申請しに行く。


気が変わらない内に、そんな事私は思っていたのかな。


インド行き荷物 ビザが通るまでに、私は荷物をリュックに詰めた。

旅行気分じゃなかった。

だから、ワクワクとアレコレ詰める物はなかった。

着替えもいれていない。

洗えば済むし、たりなければ向こうで買おうなんて投げやりな気分。

ホテルの予約もしていない。

生まれ変わりたかったから。

そこへポッと降り立つのだ。

そこからスタートさせる。

リュックを背負ってみたらとても軽かった。

これくらい軽い気持ちで生きたい。


ビザ発行の届けが来る。

直ぐに飛行機のチケットを購入した。

シーズンオフで直ぐに手に入れる事が出来る。

私は旅立つ。


朝早く、リュックを背負って私は玄関に座り込む。

心臓が慌しかった。

此処までスムーズに準備をしてきたけれど、ここでつまずくとは。

靴を履く動作がやけに難しく感じた。


「どこか行くの?」

祖母が声を掛ける。

「うん、ちょっとインドまで」

「あんた!何考えてんの?」

「うーん、何も考えてないかも」

「どれくらいで帰ってくるの?」

「解からない。帰りのチケットも持ってるし、お金がなくなったら帰ってくる」


私はそう言って、出かけた。

コンビニへ行く感覚で出かけた。

空港で貯金全てを下ろして、トラベラーズチェックに替えた。

心臓はまだ早い。

だけど、何も考えず飛行機の搭乗時間をまった。


携帯がなる。

親友からだった。


「あんた、ホンマに行くんやね」

「うん、また帰ったら連絡するよ」

「うん」

「とりあえず、連絡あってよかったかも」

「ん?」

「うち、メモリー全て削除してん」

「そうなんや・・・」

「これで、あんたには帰ったら連絡できそう」

「気をつけてな」

「うん」

「いってらっしゃい」


飛行機に乗り込むと、もうそこは日本ではかった。

言葉がまったく通じない。

自慢ではないが私は英語で自分の名前くらいしか言えない。

そこから始めよう。

私の名前はせのりです。


インド人の客室乗務員にお茶が欲しいと訴える。

「烏龍茶ください」

「烏龍茶ください」

「烏龍茶ください」

私は日本語で訴えた。

私のテーブルの上に置かれたウォッカ。

空の旅 烏龍茶、うーろんちゃ、うぉーろんちゃ、ウォッロンチャ、ウォッカドンチャ、ウォッカドリンク・・・厳しい。

何故だ・・・。

でもいい、これでいい。

いつか、通ずる時がくるだろう。


10時間の空のたび、中国上空、烏龍茶を飲めたことに感動する。



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