2005-05-18

8.指輪の行方

テーマ:彼女じゃない恋愛

いつものようにバーのカウンタで暇を潰す夜。


横に座っている親友が、不自然なタイミングでネックレスのトップリングを外し指にはめ始めた。

あまりにも不自然だったので、私は言葉を失いその行動をもれなく見ていた。

女が不自然な行動をとる時、必ずと言っていい、誰かに気付いて欲しい時なんだ。

私は彼女の何に対してコメントすればいい・・・。

言葉を出そうと必死で考える。

口だけがぽかんと開いたままパクつかせ、私は馬鹿丸出しだ。


「やっぱり大きいよね」

「指輪?」

「親指にしか入らない」

「貸して、貸して」

「いいよ」

「ほんとだ!私の親指はスポスポだわ」

「全く使えなくてネックレスにするしかなかってんよ」

「男からもらったん?」

「そう」


自慢したかったのか。

なんだ。

私、こういうの鈍いからな。

と言うか、今までこの子とこんな自慢話とかした事あったかな。

ないな。

違う、まだ何かあるぞ。

自慢したところで、私たちには何の快感もない。

秘密主義者ではないが、私たちはとことん男でしか快感を得ない。

女同士で男の話などしたって何もおもしろいことなんてないもの。

女は自慢話をして快楽を求めているなんて、何処で統計とったんだよ!なんて思うほど詰まらないと思う。

男に物もらって、自慢して喜び得るなんて勿体なくねぇか?!

男の前で喜び絶頂に達した方がどれだけ気持ちがいいか。


彼女を見るとやはりまだ指輪を手の上で転がし、はぁっとため息をついている。

言えよ、言っちゃいなよ。

気分が悪い。

回りくどすぎる。

こうなるとこちらとしても、誰が聞いてやるものかと意固地になるものだ。

あぁ、首筋が痒い。


「これ、やっぱり返そうかな~」

親友が口を開きだした。

何を企んでる?

「何で?」

「うん、別に欲しいわけじゃなかったし、使えないしさ。でもグッチだしね」

「グッチ・・・」

「うん、グッチ」

「グッチやからって事?」

「ま、そんなところじゃない?!何の思い入れもないし」

「ふ~ん」

何が言いたいんだ?

やはり自慢にしか聞こえない。

ま、この子が自慢で喜ぶようになったっていうのなら、付き合ってやるけれども・・・。

慣れてない自慢話はネチっこくて嫌だ。

こう、もっと笑っちゃうくらいドカンと自慢してくれよ。


「それ、使ってんの?」

男友達が厨房から出てきて、親友にそう言った。

「うん、ありがとね~。何か大きいからネックレスにした」

段々、話が読めてきた。

こいつ、何企んでんだ?

「それ、あんたがあげたん?」

「あぁ・・・」

「ちょっと待って、それこの前私が頂戴って言って断ったよね?」

「いや、無理やりとられてん」

「無理やりって、取り返そうと思ったらできるでしょ?」

「何度も言うたよ」

「思い入れあるって言うたよね?それほどのもんやったん?」

「いや、返して欲しいよ」

そう渋々言った後、男友達は仕方なしにといったような顔で親友にこう言った。

「それ、俺気に入ってるし返して~な」

「嫌や、これはもう私のもの~」

「ほらな!」

何が、ほらな!なんだか・・・。

返してもらう気更々なしですか。

それとも親友が超ワガママ娘だとでも思ってるのか。

どっちにしたって、もういい。

いい加減な男。


「返してあげれば」

「向こうも諦めてるみたいやしいいんじゃない」

「お互いそれでいいなら別にいいんやけどね」

「せのりだって、貰おうとしてたんやん」

「思い入れあるものまでとりあげられへんけどね」

「それをくれたんかー。何か重いな」

「そう思うなら返せば」

「でも、グッチやで」

「そ・・・」

「ヤキモチ妬いてる?」

「はぁ?」

「いや、何も言うてないよ」


そうか。

そういうことね。

これは彼女にとっての最高の快楽なのだろう。

私、あなたの事なら全てお見通しよ的な快楽。

きっと、親友は私が男友達に好意を寄せていた時に何らかの形で気付き吐かせようとしている。

だが、それももう過去。

何を最終的に企んでいるのかしらないけど、的がずれすぎて嫌悪感さえ感じる。

解かる。

私もそうだもの。

親友の密かな思いに気付き、それを当てて「実は」と言ってもらえる時こそ女同士の快楽を得る。

最高に気持ちがいい。

だけど、それはもう与えてやれないわ。

だって、私はもう男友達を好きではない。

それに、今日の一件でまた嫌いと言う意識が増えた。


適当な言葉を吐く奴は嫌い。

それが人の心を動かすと判っていて使うような奴はもっと嫌いだ。

指輪がただ気に入ってるだけなら、それだけでも十分じゃないか。

なのに何が「思い入れ」だ。

こんな奴を好きだと思われている事に対しても腹が立つ。


「とりあえず、大切にしたほうがいいんじゃない」


そう彼女に一言言ってこの話は終わった。

彼女もそっと首に付け直し、満足といった顔を振りまいていた。

そして、こちらをじっと見つめている。

視線をギラギラと感じる。

面倒くさいが彼女を見てやると、心の声が聞こえてきそうな程悪魔のような笑みを浮かべていた。


まだ、何か仕掛けてくるつもりらしい。

多分、私が吐くまで続けられるのだろう。

男を好きになって、これだけ後悔したのは始めてだ。

1度でも好きかもなんて思わなければよかった。


なんだか、バーテンダーの彼を好きでいることも申し訳ない気分にさせられる。




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