61.会いたい?会えない?
3時間程睡眠をとり、出かける支度を始める。
従姉弟と遊ぶ約束をしていたので、昼過ぎ私は家を出て、従姉弟が住む京都へと向かった。
従姉弟の友達の主婦ちゃまさんと合流する。
ちゃまさんとは、従姉弟のサイトで知り合った。
カントリードールを作っているらしく、とても興味があったので無理を言って教わることになったのだ。
ちゃまさんの家は、可愛らしいカントリーハウス。
乙女チックが花開く。
「もう~せのりちゃん会いたかったわ~」「ひぇ~可愛い~」「もう、せのりちゃんの大ファンやからな」と、ちゃまさんはテンション上げて私を褒める。
「ちょっと、ちょっと、何かweb日記読んでたらすごい展開なんやけど、詳しく聞かせてよ」
と、お茶を入れながらちゃまさんが楽しそうに私の話を聞きたがった。
井戸端会議の始まりだ。
カントリーハウスには似つかない話題。
「キャー、チュウしたの!?」
ちゃまさんは嬉しそうだ。
大丈夫、コレを読んでいるきみの想像は間違っていない。
カントリーハウスだとか、まだ24歳だとか思わなくてもいい。
そう、これはハッキリ言っておばさん3人が集まった会話だ。
ドール作り?
そんなもの忘れきっている。
「そろそろ、ドール作る?」
お茶を入れなおすのに立ち上がったちゃまさんが言い出した。
「そういえば、そんな目的があったような・・・」
日はもう傾きかけていた。
先ほどとは打って変わって、静まり返るカントリーハウス。
「痛っ」
慣れないお裁縫に戸惑う。
そこへ、私の携帯が鳴った。
彼からだった。
<眠い!睡眠不足にスポーツはキツイな。終わったら会えへんか?>
そんなメールに私よりもちゃまさんがテンションをあげた。
「どうすんのよ~」
「いや、今から帰っても1時間も会えへんしえぇよ。それに彼女いるしな・・・」
なんとなく、彼女のいる彼への不信感が大きかった。
私は信じてもいいんだろうか。
でも、会いたかった。
嬉しかった。
<今、京都の従姉弟ん家やねん。本当、昨日はドキドキやった。頑張ってね試合>
会えるとも会えないとも言わずで、彼の返事を待った。
日は落ち、ちゃまさんの旦那様が帰宅。
夜ご飯をおよばれすることになった。
そこでも、せのり祭りは開かれる。
「旦那もせのりちゃんが大好きなんよ」「うちのご飯を食べてもらえるなんて嬉しいわ」と、褒め殺しだ。
ご飯を食べた後もドール作りに精を出し、完成させて長居したちゃまさん宅をあとにする。
<そうか、京都か。少しでも会いたくなってさ。今ソフト終わったよ。今から京都じゃ、明日も徹夜になりそうだし・・・残念や。シャワー浴びて大阪に帰ります。俺も昨日はドキドキしたよ。また会ってくれるよね?次会う時までには彼氏の事決着つけるんよ>
ちゃまさん家から従姉弟の家へ戻る途中、彼からメールが来た。
今まで彼を避けていたので、彼はまた私が去ってゆくのかと思ったのだろうか。
彼の気弱なメールが何だか可愛かった。
私、ちゃんと好きでいてもらえてる・・・気がする。
彼女がいても、きっと別れてくれるよね。
<うん、彼とちゃんと話すよ。私も早く会いたい>
彼に返事をした。
私はもう彼から逃げない。
好きって気持ちに負けない。
私には彼が必要なんだ。
彼といる私が好き。
うまく行かない恋でもいい。
自分と向き合って、彼と向き合って、ちゃんと答えを出したい。
彼にフラれるまで、私は逃げない。