高野孟のブログが読めるのは《ざ・こもんず》だけ!!


参院選告示を目前にして、今日の午前中のTVは各局とも7党の党首対決。支持率低下に苦しむ安倍晋三首相は、TVに出まくってしゃべりまくって反転攻勢をかけようという作戦のようで、サンプロでもまあ饒舌に、「総理がそんな細かいことまで言わなくていいんじゃないか」と思うほど、とにかく口数だけは多くて、相変わらずムスッとして聞かれたことだけ答える小沢一郎民主党代表とは好対照をなした。


ビックリしたのは、安倍にSPやお付きがぞろぞろ付いてくるのは当然として、メイクさんやらスタイリストやらが2台の車に乗って4人も随行して来て、テレ朝の美粧室を1列占領して何やかやと念入りに世話を焼き、最後は頭にサーッとスプレーをかけて、全員で拍手とともに「いってらっしゃあい」と声を揃えて送り出したことだ。サンプロを20年近くもやっていて、メイク&スタイリストを4人も連れ歩く総理はもちろん政治家は初めて見た。TVを通じての復活に賭ける安倍の意気込みを垣間見た思いである。


しかし、現実は厳しい。久間章生防衛大臣の爆死の次には、今度は赤城徳彦農水相の事務所費疑惑が浮上、昨日の『夕刊フジ』のトップ見出しは早くも「赤城農相、辞任必至」である。前任の松岡利勝大臣が「ナントカ還元水」で火だるまになって自殺までして、その後釜に据えるのに「赤城の事務所費は大丈夫なのか」くらい調べなかったのか。危機管理能力の甘さなどと新聞は指摘するが、それ以前に、政権として最低限のチェック機能も働いていないことを示す失態である。


赤城の就任初日から暴露され始めた資金疑惑を列記すれば……、


(1)松岡前農相が絡んだ官製談合疑惑で捜査を受けてきた「緑資源機構」の工事受注業者らが作る政治団体「特森懇話会」が、赤城の資金管理団体「徳友会」のパーティ券を03年から3年間に計26万円購入していた。


(2)「徳友会」が林業土木関連業界の政治団体「林土連懇話会」から03年から3年間に計40万円の寄付を受けたのに政治資金報告書に記載していなかった。


(3)また、農協など国から補助金を受け取っていて政治献金が禁じられている2つの法人からも、計30万円の寄付を受けており、赤城側は、うち20万円は個人献金だったとして報告書を訂正、残り10万円は返却した。


(4)そこへ、今回のほとんど使っていない政治団体事務所に10年間に約9000万円の人件費、事務所費、光熱水費など経常経費を計上していたという疑惑の浮上である。


こんな人を松岡の後に据えるかねえ。安倍は、前国会で政治資金規正法改正案を成立させて透明化に努めていると言うが、この改正では、政治家が1つだけ持つことが出来る「政治資金管理団体」について「5万円以上」の支出は領収書の添付を義務づけるというだけのもので、当時から「なぜ5万円なのか」という疑問が噴出、野党は「1万円以上」を主張し、小沢は「1円からすべて公開すべき」と言っていたが、与党はこれを強行採決で押し通した。おまけに、これは政治資金管理団体に限っての話なので、今回の赤城のケースのように、それ以外の政治団体や政党支部の経費に関しては対象外で、野党はそれについても「尻抜けだ」と批判してきた。早くも、法改正の無意味さを立証した形である。


結局、佐田玄一郎をクビにし、松岡を自殺に追い込んだ政治資金疑惑を、法改正で乗り切ろうとした安倍の思惑は赤城の問題で早々と覆された訳で、安倍がいくら多弁を費やしても国民の不信は一層深まるばかりである。


※この記事は7月8日に《ざ・こもんず》 で掲載されたものです