「次世代の知日派」育成急げ―米国 | 世界日報サポートセンター

「次世代の知日派」育成急げ―米国

NPOが就職支援を展開
日本の大学が“予備軍”受け入れ

 中国の台頭や日本経済の長期低迷によって、米国の知識層の間で日本に対する関心が低下し、「知日派」の数が減少し始めている。これに危機感を持った日本人の有志がワシントンにNPO(民間非営利団体)を立ち上げ、若手知日派の育成事業をスタートさせた。活動に賛同する日本の大学が、“知日派予備軍”の米国の若者を受け入れるケースも出ており、次第に広がりを見せている。

(ワシントン・早川俊行)



 現在の日米関係は、小泉・ブッシュ両首脳の親密な関係もあり、「過去最良」といわれることが多い。だが、貿易摩擦で火花を散らした時代に比べ、懸案事項が減った分、日本に対する関心度が大幅に低下し、シンクタンクなど米国の研究機関は、アジア研究の重心を日本から中国にシフトさせている。


 大学・大学院でも同様の現象が起きており、中国研究を専攻する学生が増える一方、日本専攻の学生は減っている。この状況が続けば、日米のパイプ役となる知日派が減少していくのは火を見るより明らかだ。


 米国で進む「日本離れ」に歯止めを掛けようと、昨年五月にワシントンに設立されたNPOが、「センター・フォー・プロフェッショナル・エクスチェンジ(CEPEX)」だ。総合商社・双日ワシントン事務所長の多田幸雄氏が理事長を務める。


 発足からまだ一年足らずだが、最も力を入れているのが、日本に関心を持つ若者の就職支援だ。日本にかかわる職場が見つからなければ、せっかくの知日派予備軍も埋もれてしまうからだ。


 実際、米国のシンクタンクでは日本専門家のポストが相次いで減らされており、「日本関連ではメシを食えない」という状況が現実問題として生じている。就職支援活動には、将来の展望を示すことで、日本専門家を志す若者に希望を持ってもらう狙いがある。


 多田理事長は「教育交流や文化交流など単発的な事業はたくさんあるが、それをいくら繰り返しても、将来性や生活の糧は見えてこない。だから、われわれは就職支援にこだわっている」と語る。


 広報担当の松山幸子理事も「私たちの活動を一言でいえば、『国際ハローワーク』。育成から専門的職業に就職するまで、十年プランですべて面倒を見ていく」と強調する。


 CEPEXにとって最初の事業となったのが、帝京大学と共同で行うフェローシップだ。このプログラムは、米国人を大学院修士課程か博士課程に学費、生活費、保険料免除で受け入れる一方、大学で英語教育アシスタントして働いてもらうというもの。米国の若者に日本で修士号・博士号を取得させると同時に、就業体験もさせるという“一挙両得”の作戦だ。帝京大のほかにも、複数の学校法人が今年九月から同様のフェローシップを実施することを検討している。


 このフェローシップの特徴は、日本政府が実施している「JETプログラム」(語学指導等を行う外国青年招致事業)の修了者を主な対象としているのが点だ。同プログラムを通じて、日本で滞在した経験を持つ外国人は三万五千人を超える。だが、その後のサポートが行き届いていないため、日本とかかわりのない職業に就いているケースが多い。このため、CEPEXの就職支援は、彼らの「受け皿」をつくる意味合いもある。


 フェローシップ「第一号」として今年四月から帝京大大学院に通うハワイ出身のウォルター津島さん(26)も、JET修了者の一人。石川県輪島市で三年間、英語の指導助手として働いたことが人生の転機になった。「輪島の皆さんに温かく受け入れてもらい、心が落ち着いた。将来も日本にかかわる仕事をしたい」と抱負を語る。


 知日派の育成は政府も民間も必要性を感じながら、これまで総合的な取り組みを展開することができていなかった。だが、今回、知日派育成を専門とするCEPEXが発足したことで、「官・民・学・NPOの四者が一体」(松山理事)となった動きが広がっていきそうな気配だ。フェローシップの応募・選考では、ワシントンの日本大使館や在日米大使館が協力をしている。


 CEPEXの活動が具体的な成果となって表れるのは、早くて五―十年後。松山理事は「フェローシップ修了者たちには、次世代の知日派となってワシントンに戻ってきてほしい。そして、米政府や国際機関の重要ポストで働ける人物になってもらいたいというのが私たちの願い」と、夢を描いている。

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