中東民主化/改革推進へ相互理解深めよ | 世界日報サポートセンター

中東民主化/改革推進へ相互理解深めよ


 パレスチナ情勢は、二月のイスラエル・パレスチナ首脳会談での停戦合意後、落ち着いていた。だが、このところ再び、イスラム根本主義組織によるテロが発生するなど、先行きに不透明感を増している。


ガザ撤退確認した両首脳


 そうした中、シャロン・イスラエル首相とアッバス・パレスチナ自治政府議長が、エルサレムで会談した。しかし、八月に実施される予定の「ガザ撤退」を協調して進めることを確認した程度だった。予定されていた共同記者会見も実施されないなど、成功とは言えないものだった。


 だが、アッバス議長の就任で、ようやくイスラエル・パレスチナ間の交渉が再開された。再び激しい暴力の応酬に戻ることのないよう、両者は粘り強い交渉を行うことが必要だ。


 イラクではイラク人による選挙が実施され、移行政権が誕生した。しかし、各勢力間の利害の衝突、相次ぐテロなどから、民主化に停滞感が漂っている。


 サウジアラビアなど湾岸諸国では、民主化要求を受ける形で、議会選が実施されるなど、一定の改革は進んでいるかに見えるが、根本的な変革につながっていない。


 エジプトでは、憲法が改正され、大統領選に複数の候補が立候補できる道が開かれた。だが、与党以外の候補者が立候補するのは事実上不可能というのが実態。「改革圧力をかわすための見せ掛け」との批判が内外から上がっている。


 シャロン・アッバス会談の直前に中東を歴訪したライス米国務長官は、こうした民主化の停滞感の払拭(ふっしょく)を狙った。ライス長官はエジプトのカイロで、「自由な選択に懸念があるからといって、自由の否定を正当化することはできない」と、中東諸国に民主化の推進を強く求めた。また、長官は「誰もが求める普遍的な価値観と自由」の実現を訴えた。


 しかし、現地での反応は冷ややかだったことが伝えられている。米国は、中東諸国の指導者、国民が納得できる方法で民主改革を推進できる道を、模索していくべきだろう。それには、相互理解をいっそう深めることが肝要だ。


 なかでも、パレスチナ問題は中東諸国による対米不信の大きな原因となっている。イスラエル、パレスチナで双方の首脳と会談したライス長官は、シャロン・イスラエル首相が進める「ガザ撤退」を双方の協調の下で進めることで一致、米国も撤退実施へ支援を続けることを強調した。


 一方、ライス長官はアッバス議長との会談では、米国が治安対策で全面協力することなどを約束した。だが、囚人釈放、ガザ地区の空港、港の再開などで進展がなかったことから、パレスチナ側に不満が残ったもようだ。


 イスラエルは、ヨルダン川西岸で入植地の拡大を進めている。「占領地奪取への既成事実の積み上げ」ととられかねない入植活動の停止を明確にするなど、信頼確立への努力が必要だ。


 またパレスチナ囚人の釈放、検問所の撤去など、住民の生活と直結し、早期の解決が望まれる問題について、率直な話し合いが行われるべきだろう。


協調と信頼関係強化を


 「ガザ撤退」がパレスチナ情勢にとって大きな転機となるのは間違いない。そのためには、協調と信頼関係の強化が欠かせない。パレスチナ情勢の安定は、中東全体の安定に貢献するだけでなく、世界の安定にも資する重要な課題だけに、国際社会はさらに総力で支援をしていくべきである。


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