「2015.11.6 黒田総裁の内外情勢調査会での講演を鑑賞した件その2」 | 素人日銀ウオッチャーの日銀考

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日銀の金融政策について日々感じたこと・考えたこと(実態はツッコミ)を、マーケット関係者・エコノミスト・経済学者でない素人の立場で綴っていきます。メインメニューは金融政策決定会合議事要旨や政策委員の講演・記者会見テキストの鑑賞およびそれに対するツッコミです。

昨日更新する予定でしたが遅れてしまいましてすいませんm(_ _)m


黒田総裁の講演の続きです。


http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151106a1.pdf


4.経済・物価の先行きに関するリスク要因 のパート(7~9ページ)から再開します。


『ここまでは、経済・物価の先行きに関して最も蓋然性の高いと考えられるシナリオについてご説明しました。しかし、実際の経済には様々な不確定要素がありますので、ここからは、先行きの経済・物価情勢に影響を与える可能性のあるリスク要因について述べたいと思います。』


言い訳モード突入か??


『経済の先行きに関するリスク要因として最も重要と考えられるのは、中国をはじめとする新興国経済の減速の影響です。中国経済は現在、投資主導の高成長から消費主導の安定成長への移行過程にあり、それに伴って、産業構造も製造業から非製造業へと重心が移りつつあります。』


ということでリスク要因として一番に挙げているのが中国です。このあと中国の話が続きますが一部飛ばします。


『新興国経済の減速がある程度の範囲に止まるのであれば、わが国経済は、内需がもともと堅調であることと、エネルギー価格の低下が実質所得の下支えになることもあって、経済全体としてはその影響を乗り越えて成長を続けると思っています。』


ふむ。


『しかし、新興国経済が非常に大きく下振れたり、減速が長く続くような場合には、わが国経済への影響はより大きくなる惧れもあります。その際、重要なポイントとなるのは、わが国企業のコンフィデンスです。企業が、新興国経済の動向をみて先行きに強い懸念を持ち、設備投資の見送りや賃上げ幅の縮小などを行うようなことになれば、堅調な内需の先行きにも影響を及ぼすことになります。現時点においては、リスク要因という位置付けですが、意識しておく必要があると思っています。』


確かにこの点は留意すべき部分ですね。


『この点に関して、物価への影響という意味では、来年度にかけての賃上げの動向に注目しています。』


これ頼みの綱ですからね。


家計が実質的な賃金や所得を維持するためには、足もとの表面的な消費者物価上昇率の低下にかかわらず、こうした基調的な物価上昇率が賃上げに反映されていくことが重要であり、蓋然性の高いシナリオでは、相応の賃上げが行われると考えています。』


まあせいぜいゼロ%台後半でしょうがないよりはマシといったところで。


『もっとも、新興国を中心とする海外経済の動向によっては、企業が不透明感を強く意識して、賃上げに対しても慎重になるリスクが考えられます。』


さっきの話ですね。


『また、賃金上昇率が十分に高まらない場合には、消費者の物価上昇に対する抵抗感が強まり、物価の上昇ペースが下振れることになるリスクがあると考えられます。』


まさかこういうのが黒田総裁の口から出てくるとは思いもしませんでしたが、ピーターパンの話は一体どこへ行ってしまったのか問い詰めてみたいものです。


ここからは5.デフレからの脱却に向けた課題 のパート(9~10ページ)を見ていきますが、ここでも「2%の物価目標の達成に向けた課題」ちゃうんかいと一言ツッコミを入れておきます。


『繰り返しになりますが、現在、企業は過去最高水準の収益を上げており、労働市場は完全雇用の状態にあります。経済のメカニズムからすれば、こうしたもとでは、企業は将来に向けた設備投資を行うとともに、更なる生産活動を行うための労働力を確保するべく、賃金の引き上げを行うことが期待されます。実際、企業は前向きな設備投資スタンスを示しているほか、賃金についても、ベースアップの実現もあり、緩やかに上昇しています。』


本来ならば仰るような展開になるはずなんですがね。


『しかし、程度の問題として、企業収益が歴史的な高水準となっていることと対比してみた場合、これまでのデータで確認される設備投資や賃金の伸びがやや鈍いという印象は否めません。企業が高水準の収益を獲得しながらも、なお支出活動に慎重さを残していることは、企業の現預金の保有がこのところ一段と高い水準に積み上がっていることからも確認できます(図表16)。』


あとは、ここまで非正規雇用が定着している状況なんかも要因の一つに挙げられるのかもしれません。


『企業が高水準の収益を、設備投資や賃金支払いなどの支出に必ずしも十分振り向けず、その多くを手許の現預金として保有していることの背景には、現状においても、広い意味での「デフレマインド」が必ずしも払拭されていないということがあると思います。別の見方をすれば、企業が現在の高収益を一時的な追い風によるwindfall profit であると捉えており、なかなか積極的な活用に踏み出せないでいるということかと思われます。』


現代はリーマンみたいなことが起きるサイクルが短くなってますから、企業がそういったことに対して過敏になるのも無理はありません。


『このような状態から抜け出し、企業がこれまでのマインドセットを大きく転換することは、デフレだった期間の長さを考えれば、もちろん簡単なことではありません。しかし、やるべき方向性は明確です。』


教えてくださいな。


『要は、「日本経済はデフレから脱却しつつある」という見通しを踏まえ、ポストデフレ時代の新たな経営戦略をしっかり立ててもらうことです。』


はぁ?


『こうした見通しを持った企業にとっては、デフレのもとでは報われなかった「前向きの行動」が全く違ったものに見えるはずです。そうした行動なしには、将来の収益を生み出し、現在の企業価値を高めることは難しいと認識されるでしょう。全ての企業が一度に変わる必要はありません。そうした見通しを持つ企業の数が増えるに従って、経済は活性化していきます。そして、この流れは積極的な企業を中心に既に進行していますし、これが定着すれば先に流れに乗った企業が勝ちます。』


出ましたね「信じる者は救われる」方式。


『日本銀行は、そのための役割を果たします。この2年半、2%の「物価安定の目標」の実現を明確に約束し、「量的・質的金融緩和」を進めてきました。日本経済は着実に改善し、その実現に向かっています。日本銀行は、引き続き、2%を目指し、過去に例を見ないこの大規模な金融緩和を続けていきます。本日お話してきた通り、現時点で、日本銀行は、現行の政策を継続することで、2%を達成できると考えています。ただ、同時に、新興国経済の減速の影響など、経済・物価の下振れ要因も認識し、注意深く点検を続けています。今後とも、毎回の金融政策決定会合において、経済・物価の現状と先行き、様々なリスク要因、金融資本市場の動向などを十分吟味し、政策判断を下していきます。そして、2%の早期実現のために必要と判断すれば、躊躇なく対応します。』


という締めくくりになってますけども、黒田総裁の本音としては「こっちはやることやってんだからお前らもいい加減行動起こせよ」という感じなんだろうと思います。まあ確かに政府・日銀・企業の中で言うと一番行動を起こしてるのは日銀ということになるんでしょうが、そもそも論として、「2年程度」という期限を区切った上で2年半もこの政策やってるのに一向にゴールが見えてこないんですから、政策変更する方向での「行動を起こすこと」を検討すべきなんじゃあないんでしょうかねぇ。