甲 | 花守の蛹へ捧ぐ縛と笑み


この壁の内には自由がある

心透く春の風も無く
朝靄の幕引きに立つ芽吹も愛でず
夏のイタヅラな怒号に妬く事も無い

わたしは悟性的に認識する

実りの歓喜を聞くことも無い内
稚拙な卒爾に思慮も解顔も得ない壁
民の集いをあはれあな憂自由

この壁の内には道が在る

時折 蛇口が寝汗をかくものだから
わたしは鏡を覗いて今を拭う

守られた意思に邂逅無く
干上がった川底に墨を走らせるが如く
沈み伏せられた言葉を只
脈々と仕舞う

この壁の内には私がいる

激流傍観する民 清流を選び
荒波を眺め 飛沫を拍子に拭っては
立たぬ風に寄り 今を酔う

障子の向かうは広いのか
守られし意思は 此処に在る

私は自由 壁の中
重なる力の観測者