EARTHで掃除をした。
私物入れの中を整理していると、
ファイルの中から
ぼろぼろの作文用紙が出て来た。
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タイトル 「帰り」 「楽しい事」
名前 二年D組十六番 深瀬慧
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深瀬が中学二年生の時に書いた作文、二作品である。
「あのさー今日本棚の中からこんなの出て来たんだよ」
「え? 何それ」
「中学の時に書いた作文。」
「えーみたいみたい!!」
半年前にみんなでワイワイ話す為に深瀬が持って来て、
私が私物入れに入れっぱなしにしていたのだ。
久しぶりに読んでみると、何だかとても心がアツくなった。
移動教室や二年生になって、というような
中学生の時に誰もが書く「感想文」
深瀬らしい言葉で綴った、ひらがなの多い、
そして葛藤の多い、文字たち。
折角なので
みんなの出会った事のない深瀬の「過去」を、お裾分け。
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【帰り】
帰り、なんだかみんなくらい。
朝食の時、目がはれている人もいた。
大掃除、いつものように鈴木は、はりきっていた。
きっとあいつは何もなかったのだろう。
僕はいろいろあった。
はっきり言ってつかれた。
何だか僕に怒っている人がいるらしい。
何で怒っているのかわからない。
たぶん自分が気づかぬうちに、人をきずつけたのだろう。
やはり帰りのバスも、のりが悪い。
僕もうたえる気分ではなかった。
ご飯を食べる所についた。
やはり僕のことをにらみつける人がいる。
おいしいアイスもおいしく感じなかった。
宿舎についた。
あつかった。ハハハ。
昼食、公園についた。
おれに怒っている人に、わけをきいた。
やはり僕の思っていたとおりだったが、よくわからない。
人の心はむつかしい。どうしたらいいのか分からない。
しかし、僕は最後の最後にみんなのいどうきょうしつをだめにしてしまった。
先生に怒られたときも、すなおにあやまればよかった。
ぼくはとりかえしのつかないことをしてしまった。
なんだか心がむずむずしている。
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友達がご飯を食べたり枕を投げたり歌ったりしている間ずうっと
「みんなが怒っている理由」について考え、葛藤している中学生の深瀬が
たまらなく可愛くて、愛しくなる一作目(笑)
彼がバンドに「世界の終わり」ってつけた理由が何となく分かるでしょ?
移動教室の感想文を「帰り」から始めるんだから。
さて、期待の二作目は私のお気に入り。
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【楽しい事】
「さみー、おい、ちょっとだれかライターかして、
あと、みんななんかもえるもの」
火がついた。
だれかが紙を入れたようで、灰が空を飛ぶ。
死んだようにうごかないやつら。
木だけがパチパチと音をたててもえる。
もえつきた。
みんなが立つ。
そして、さおを持ってルアーをきたない川になげた。
まださむいのか、あいつはライターをポケットに入れて木をはこんでいる。
「今何時?」
おれはさおを立てかけて、手をこすりながら言った。
あいつが時計を見せてきた。
「六時?もうそんな時間か。
せっかく朝おきて、釣りにきてもさむくて、みんなやんないよね。」
やはり、春とはいえ、朝の多摩川はさむい。
「あついー。こんなきてくるんじゃなかった。」
かえり道は午前十一時、はげしい温度変化だ。
家につく。なんだかほっとする。
しかし、俺はまたでかける。
これが俺の春休みだった。
はっきり言ってあまりたのしくない。
いやそれとも、人間にとってこれが「楽しい」なのか。
こう思ったのもなにか理由があるのだろう。
しかし、その理由はわからない。
前やっておもしろかったことをやっても、おもしろくない。
どうして今は何をやっても楽しくないのだろう。
こうしていろいろなぞをかかえて生きている。
はたして、これらは二年生になって、解決するのだろうか。
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この作品では今を楽しめない理由について
「わからない」と記述しているが、現在の深瀬の言葉では、
死の魔法という曲の最後で「Hello 今 あなたは僕なんでしょ」と
答えを見いだしているので、その経緯に心がアツくなる二作目(笑)
それにしても、素直に面白いと思う。
中学二年生の作文が
「帰り、なんだかみんな暗い」から始まれば
先生はおろか父兄や大人達はみんな大注目せざるをえないし
二作目の冒頭台詞から始まるのも退屈しないし、
「ライター」という言葉が混じるのも大変過激でよい。
「いいね、エンターテイナーだねー」
「そうかな?そうかな!」
ねえねえ、これ面白いよ、と言うと
褒められて伸びるタイプの深瀬は
嬉しそうに、満足そうに出かけて行った。
私物入れの中を整理していると、
ファイルの中から
ぼろぼろの作文用紙が出て来た。
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タイトル 「帰り」 「楽しい事」
名前 二年D組十六番 深瀬慧
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深瀬が中学二年生の時に書いた作文、二作品である。
「あのさー今日本棚の中からこんなの出て来たんだよ」
「え? 何それ」
「中学の時に書いた作文。」
「えーみたいみたい!!」
半年前にみんなでワイワイ話す為に深瀬が持って来て、
私が私物入れに入れっぱなしにしていたのだ。
久しぶりに読んでみると、何だかとても心がアツくなった。
移動教室や二年生になって、というような
中学生の時に誰もが書く「感想文」
深瀬らしい言葉で綴った、ひらがなの多い、
そして葛藤の多い、文字たち。
折角なので
みんなの出会った事のない深瀬の「過去」を、お裾分け。
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【帰り】
帰り、なんだかみんなくらい。
朝食の時、目がはれている人もいた。
大掃除、いつものように鈴木は、はりきっていた。
きっとあいつは何もなかったのだろう。
僕はいろいろあった。
はっきり言ってつかれた。
何だか僕に怒っている人がいるらしい。
何で怒っているのかわからない。
たぶん自分が気づかぬうちに、人をきずつけたのだろう。
やはり帰りのバスも、のりが悪い。
僕もうたえる気分ではなかった。
ご飯を食べる所についた。
やはり僕のことをにらみつける人がいる。
おいしいアイスもおいしく感じなかった。
宿舎についた。
あつかった。ハハハ。
昼食、公園についた。
おれに怒っている人に、わけをきいた。
やはり僕の思っていたとおりだったが、よくわからない。
人の心はむつかしい。どうしたらいいのか分からない。
しかし、僕は最後の最後にみんなのいどうきょうしつをだめにしてしまった。
先生に怒られたときも、すなおにあやまればよかった。
ぼくはとりかえしのつかないことをしてしまった。
なんだか心がむずむずしている。
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友達がご飯を食べたり枕を投げたり歌ったりしている間ずうっと
「みんなが怒っている理由」について考え、葛藤している中学生の深瀬が
たまらなく可愛くて、愛しくなる一作目(笑)
彼がバンドに「世界の終わり」ってつけた理由が何となく分かるでしょ?
移動教室の感想文を「帰り」から始めるんだから。
さて、期待の二作目は私のお気に入り。
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【楽しい事】
「さみー、おい、ちょっとだれかライターかして、
あと、みんななんかもえるもの」
火がついた。
だれかが紙を入れたようで、灰が空を飛ぶ。
死んだようにうごかないやつら。
木だけがパチパチと音をたててもえる。
もえつきた。
みんなが立つ。
そして、さおを持ってルアーをきたない川になげた。
まださむいのか、あいつはライターをポケットに入れて木をはこんでいる。
「今何時?」
おれはさおを立てかけて、手をこすりながら言った。
あいつが時計を見せてきた。
「六時?もうそんな時間か。
せっかく朝おきて、釣りにきてもさむくて、みんなやんないよね。」
やはり、春とはいえ、朝の多摩川はさむい。
「あついー。こんなきてくるんじゃなかった。」
かえり道は午前十一時、はげしい温度変化だ。
家につく。なんだかほっとする。
しかし、俺はまたでかける。
これが俺の春休みだった。
はっきり言ってあまりたのしくない。
いやそれとも、人間にとってこれが「楽しい」なのか。
こう思ったのもなにか理由があるのだろう。
しかし、その理由はわからない。
前やっておもしろかったことをやっても、おもしろくない。
どうして今は何をやっても楽しくないのだろう。
こうしていろいろなぞをかかえて生きている。
はたして、これらは二年生になって、解決するのだろうか。
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この作品では今を楽しめない理由について
「わからない」と記述しているが、現在の深瀬の言葉では、
死の魔法という曲の最後で「Hello 今 あなたは僕なんでしょ」と
答えを見いだしているので、その経緯に心がアツくなる二作目(笑)
それにしても、素直に面白いと思う。
中学二年生の作文が
「帰り、なんだかみんな暗い」から始まれば
先生はおろか父兄や大人達はみんな大注目せざるをえないし
二作目の冒頭台詞から始まるのも退屈しないし、
「ライター」という言葉が混じるのも大変過激でよい。
「いいね、エンターテイナーだねー」
「そうかな?そうかな!」
ねえねえ、これ面白いよ、と言うと
褒められて伸びるタイプの深瀬は
嬉しそうに、満足そうに出かけて行った。