ソフトバンク社長・孫正義氏と、佐々木俊尚氏の徹底討論

(書き起こし.comによる文字起こし)
ソフトバンクの「光の道」論に全面反論する
(佐々木氏の記事)

Ustreamで行われた討論、ちょうどタイミングが合って視聴することができました。
時間のない人向けにとても簡潔にまとめをご紹介

孫さん:
光を社会インフラと捉え、5年間で導入しよう
・ 国費に頼らないで出来る
・ 高速インターネットの普及で医療と教育が便利に
・ 全体的に経費を削減出来る
・同じ値段ならADSLより光のほうがいいじゃない

佐々木氏:
インフラも大事だがそれよりも、コンテンツやいかに利用するか(プラットフォーム整備など)が重要で、先にやるべき
・プラットフォームはインフラより重要
・現状でも、光が来てもなおさら、エンドユーザは使いこなせない(デジタルデバイト)
・絡み合った既得権益が邪魔する

結論:
インフラもプラットフォームも大事で、どっちもがんばらなきゃいけないね

まとめると以上。


以下私見。お暇な人、どうぞ


・光の全国展開に関して
孫さんの指摘の核は
「NTTがメタル回線と光回線を同時に敷設していること」
があまりにも不経済だというもの。
これは隙のない意見でした。

孫さんの試算には穴というか、バイアスがありました。
(例:以降後の通信事業者の宣伝費がほとんど0になっていたが、通信事業車間での競争がある以上宣伝費は削減されない・現状の光ファイバーの法定耐用年数は10年で、減価償却期間も同様になるため、現行会計基準では実行耐用年数で勝る光ファイバーの減価償却費がメタル線よりむしろ高くついてしまう→コスト増大する。など)

しかし、大量の法改正を前提にした議論でしたので

・ソフトバンクネット部門が黒字部門である
・ソフトバンクでも2兆円の資金調達が可能だった
の材料から考えても、
国費に頼らないで敷設可能でありペイ出来る
という点は納得の行くプレゼンでした。

さらに光がメタル線に劣る点として上げられる停電・災害時の連絡網の確保についても電池で対応するとのこと(災害時は容量をもう少し上げる必要があるかも)。


国費がかからず、5年と言わず10年でもキャッシュフローでペイ出来るならことならばまずリスクはありません。

同価格で提供出来るなら消費者にとってメリットです。
ノーリスク+リターン これをやらないのは馬鹿だろう
という至極最もな主張です。

佐々木氏の意見:

プラットフォームがインフラに優先するというのは面白い視点です。
しかし土俵が違いました。
これは孫さんに対して言うべきことではなく、(元ネタもそもそも原口氏とかに宛てるべき内容)政府に対して言うべきことです。
容易に分かることとして、(優先順位がどこにあろうと)やれることをやるという孫さんの主張で押し切られます。

私見として、インフラはプラットフォームと比しても相当程度だと思います。
エンドユーザは快適さを求めています。
ネットをよく使う方は分かると思いますがダウンロードしている時間というのは我慢がならないものです。
我が家は光回線ですが、それでも動画サイトなどで(これは主にサイト側の問題ですが)ロードが重かったりします。
これは実にイライラします。
1クラスで数十人の学生がクラウドから一斉に動画を閲覧するとなると、光ですら不十分でしょう。
(もちろんいろいろ解決手段はありますが)
サクサク動く、というのはエンドユーザにとって大きな魅力です。

佐々木氏の言う印刷によるイノベーションの例に触れるならば
その前に、紙という媒体のイノベーションを忘れてはならないでしょう。
印刷によって複製が可能だったとしても、紙媒体という運搬や管理が容易な記録媒体がなくては印刷のメリットは逓減してしまいます。
印刷された石など、重くて運べませんし大量に保存も出来ません。
紙ですら今は邪魔で重たい。

情報を手元に置かないクラウド思想において、高速インターネットは媒体の一部でもあると考えるのが適切ではないでしょうか。

また彼は高速道路を光回線に例えていましたが、高速道路は確かなメリットを持っています。
コストをペイ出来ないのが悪いのです。

ということで光敷設に関してはGO
が僕の結論。
後にも触れる利権などの政治的な話をいかに解決するか、です。




・教育/医療に関して
孫さん
電子教科書やカルテを普及させる論旨も明快でした。
こちらも経営者らしくペイできるか否かをクリアした上で、
以下のようにメリットを打ち出していきます。


教科書
紙の教科書に出来ることはすべて実現出来る
コストを下げられ、かつエコである
クラウド 上の様々なコンテンツ/ネットワークを利用して教育力を上げられる
など

医療
カルテという資産の有効活用と充実により
地方医療格差を解決
医薬品開発を高速、低コスト化
医療費を削減
医療の進展
など

佐々木氏の意見:
デジタルデバイド問題
利権問題
などでエンドユーザにメリットが行き届かない

デジタルデバイドの解決の道筋はiPadにあると思います。
iPhoneを使っている人ならわかるかと思いますが、優れたデザインのUIは、デジタルデバイドを解決しえます。
らくらくフォンをソフト的に実現出来るのがiPhoneやiPadです。

ちょっと料理に例えます。

レバーの匂いが牛乳に浸せば取れるように、優秀な料理人ならば素材のデメリットを排除して
素材の良いところを残すことが出来ます。

同じようにデザインによって先述した高速インターネットにおけるラグの解消や安定したシステム構築などで
機器のもつデメリットを排除し、機器にたいする不安感を解消、良いところを生かすことが出来ます。

それでも、「レバーはにがてだから」と、食べてくれない食わず嫌いの人が存在します。

食わず嫌いの人にどうやっておいしい料理を食べさせるか、

これは美しい盛りつけや芳しい香りを付ける

つまり魅力的なコンテンツ

そして低価格、

それ位です。

このあたりはマーケティングの話ですね。先は割愛しましょう。


最も難しいのが利権の問題です。
NTT 医療関係者 出版関係者 の利権を同解決してあげるかを考えると頭が痛くなります。
「ええかげんにせい」と孫さんは言っていました。
既得権益の保持者に立ち退いてもらうには法的にごり押しするしかないのでしょうか。



総括

孫さんの意見は純粋な意見です。
日本がもし100人の孫さんの村だったら
実行可能ですし、確実に成功するでしょう。
よくも悪くも現実や周囲の細事を無視する彼の視点は、正しく、強いものです。
イノベーションを起こし、世界を変える類いのものです。
ただしそれに周りの人がついてこられるかは別です。


一方佐々木氏の意見は
社会に絶望しかかった大人の意見です。
現実を直視する彼の言葉には出来るか出来ないかの冷静な評価が必ず付帯しています。

討論というスタイルをとっていても、二人の思いは重なっているのです。

旗色が悪く見えたのは、佐々木氏の意見がメタだったからですし
孫さんがかっこ良く見えたのは彼のビジョンがメタだったからです。

二人の意見をまとめた結果が

どっちもがんばらなきゃいけないね

だったのはそういうことでしょう。

いろいろ考えて全体の利益を実現するのは政府の役目です。

でも経営者たる孫さんやジャーナリストたる佐々木氏を含めた
我々大衆が甘んじていては
進歩はありません。

日本人に足りない、政府との戦いの歴史です。

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