訃報、栗本 薫 | 逍遥録 -衒学城奇譚-

訃報、栗本 薫

栗本 薫が死んだ……

わっちゃ~である。

ウソだろ~である。

最近はさっぱりご無沙汰だったけど、昔はずいぶん読みましたよ。


代表作の『グイン・サーガ』は、本編だけで126巻(外伝は21巻らしい)まで刊行されていて、ひとりの作家が書いた小説としては世界最長のモノらしい(『ぺリー・ローダン』シリィズは複数の作家の連作だから)。

ただしギネス認定はされていない、なぜだ?

日本に異世界譚――ファンタジを定着させた作品と云われているようです(後は半村 良か?)。

しかしあの長ったらしい口調は、どうしてもヒロイックファンタジになじまないようにカンジて、ボクはちょっとあわないなぁって思います。

最近、BSでアニメ化なってたりしてます。

あのキャラクタ(キャラデザは皇なつみらしいが……)や服飾のセンスには閉口しますが、当然ですが今はまだノスフェラスってのも、まぁご愛嬌。

結局、未完で終わってしまいましたが、病気だってわかってるんだから、どーにかして終わらせるべきだったって意見、ネットの中で聞きますが、ボクは未完なら未完でよろしいと思う。

そう云えばいがらしゆみこの作画で、同一世界の漫画があったりもしてますね(ちょっとユリっぽかった)。


『魔界水滸伝』も最後の方は何かグダグダになってしまったようで、よく憶えていませんが、なかなか大胆で挑戦的な(つーかアホな)設定だったと思います。

しかしクトゥルーとホンキでケンカして、人間、勝てるとでも思うのか?


ボクはどちらかと云うと、彼女のSFやファンタジは少々肌があわないカンジがして、どちらかと云うと現代ミステリが好み。

小学生のころ、日本のミステリを読みはじめたのは、(金田一耕介とか明智小五郎とかをのぞいたら)確か彼女の作った探偵伊集院大介あたりが最初だったような気がします。

『弦の聖域』とか『鬼面の研究』とか『優しい密室』とか、彼女が描くミステリは"人”はもちろんですが、とにかく“場”や“世界”による衝動の創出がうまい。

それが複層的に積み重なっているから、ひとつひとつの物語に奥行きがある。

ただまぁ、シリウスがどーちゃらってハナシになったらどうもなぁ……


それから最年少で乱歩賞を獲得した『ぼくらの時代』と、その三部作。

作者と同名の大学生(当時)栗本 薫(オトコ)が探偵役(?)を務めるシリィズですが、いつまでもオトナになりきれない若者の“時代”が、冷ややかに、あるいは白けた逍遥をする。

コレを読んだのはいつのころだったかははっきりと憶えていないけれど、読後の焦燥感は今も記憶にあります。

おそらく栗本 薫の原点はココであり、すでに30年がたっているのだから、今読み返してみるとすっかり古くさくなった風俗、言葉でありながら、一番ヴィヴィットに彼女が表れているようにカンジます。

三作目の『ぼくらの世界』のラストは、泣けるでぇ。

ちなみにカオル君はその後も、着実かどうかはともかく小説家としての階段を登っていくワケですが、栗本作品のアチコチに出没。

『魔境遊撃隊』では、ロストワァルドばりの冒険活劇を……演じてる?


とにかく彼女は筆の早い作家で、その著作はべらぼうなモノです。

書いた彼女自身よく記憶してない作品があったりとかで……

だから単発で出た『グルメを料理する十の方法』なんかは、ソレはソレでなかなかおもしろかったりする。

しかし角川でやたら書いてたあの系統のとか、耽美的なのとかはちょいとねぇ……

何かケチをつけてばかりのような気もしますが、わははは。


しかしまぁ、栗本 薫については、少々しみじみしてしまいますね。

エキセントリックなトコロもあるオバサンでしたが、ボクには思い出深い作家です。

享年56歳。

まだあまりにも早すぎます。

若いころに親しんだ作家がいなくなるってのは、ホント残念。