前回の姿勢制御のメカニズムその4で

 

体性感覚②の続きの

 

一次体性感覚野とは?

 

からになります

 

 

一次体性感覚野(S1)とは

 

大脳皮質の一部であり

 

感覚刺激を知覚する

 

大脳皮質の領域のことをいい

 

触覚、痛み、温度などの

 

表在感覚(皮膚感覚)や

 

筋肉・関節などの

 

深部感覚 (固有感覚)などの

 

感覚情報を

 

体性感覚伝導路を介して

 

末梢の感覚器・受容器から

 

直接的に投射を受けている

 

領域になります

 

一次体性感覚野は

 

末梢からの体性感覚情報を処理し

 

二次体性感覚野、頭頂連合野、

 

運動野等に対象物の触識別や

 

運動制御に必要な体性感覚情報を

 

出力する非常に重要な

 

大脳皮質の領域になります

 

 

この一次体性感覚野は

 

脳の番地を示した

 

ブロードマンの地図でいう

 

3野(3a・3b野)、1野、2野の

 

領域にあたります

(図を参照) 

 

この一次体性感覚野の3野は

 

体性感覚皮質の主要な領域

 

として考えられており

 

視床中継核を経由して

 

入力される 末梢からの

 

体性感覚情報の大部分を

 

直接受け取ります

 

受け取った体性感覚情報の

 

最初の処理はここで行われ

 

・3野の3a野は

 

深部感覚からの情報に反応し

(筋や関節の受容器(固有受容器))

 

 ・3野の3b野は

 

触覚・皮膚感覚の情報に反応します

 

また 3b 野は

 

1野と2野と密に接続されており

 

3b 野の触覚・皮膚感覚の情報は

 

さらに複雑な処理のために

 

1野と2野にも送信され

 

3b野から1野への投射は

 

3b 野より広範囲の皮膚からの情報

 

主に物の表面の質感・手触りなどの

 

情報を受けとります

 

2野への投射は

 

1野より広範囲の皮膚からの情報

 

主に大きさや形状に関する情報と

 

関節、運動方向など

 

固有受容器からの

 

情報を受けとります

 

この1野と2野は

 

3野と違い

 

・3野の3a 野は 深部感覚(固有受容器)

 

 ・3野の3b 野は 触覚・皮膚感覚の情報

 

というように受容器(情報)が

 

限局されておらず

 

複数の異なる受容器の情報を

 

複合的に受けとっており

 

3野の情報は 1野、2野で

 

より情報の認識が細かくなっていきます

 

そのため1野と2野は 3野よりも

 

高次な情報処理をしている

 

といわれております

 

また 1野、2野は

 

その複合的機能から

 

感覚に注意や意識を向けることで

 

より入ってくる感覚情報の

 

識別に関わるといわれています

 

このように 3野→1野→2野と

 

情報が進むことで

 

さまざまな感覚が統合され

 

複合的な情報へと処理されます

 

このように処理された情報は 

 

頭頂連合野へと送られます

(頭頂連合野 = 外界に関する情報を集める領域で、体性感覚、視覚、聴覚、平衡感覚など空間、運動知覚や認識と運動の制御などに関わっています。)

(図を参照) 

 

また 一次体性感覚野の

 

主に3野にあたる部位の底部 には

 

ペンフィールドマップという

 

身体の各部位からの入力が

 

感覚皮質のどの部分に

 

投射されているかを

 

示したものが あります

(図を参照) 

 

このペンフィールドマップは

 

感覚野( 一次体性感覚野)と

 

体を動かすための指令を出す部分

 

運動野(一次運動野)の

 

脳領域にあります

 

今回は 感覚野( 一次体性感覚野)の

 

ペンフィールドマップに関してですが

 

一次体性感覚野のペンフィールドマップには

 

主に深部感覚(固有受容器)の

 

情報が 投射されていると

 

いわれております

 

因みに 表在 (皮膚) 感覚の情報は

 

主に一次体性感覚野3野・1野・2野の

 

表層部で 処理されていると

 

いわれています

 

 

この大脳における感覚野の地図

 

一次体性感覚野のペンフィールドマップは

 

身体の各部位から入力された情報の

 

大脳皮質での投射部位を

 

示し描かれています

 

各部位の大きさは

 

大脳皮質の表面積の比率にしたがって

 

体の大きさを変形して表した図になり

 

体の各部位の機能を受け持つ範囲が

 

大脳でどのくらいの割合を

 

占めているかを示しています

 

特長として手や顔面の領域は

 

広くとられており

 

感覚が敏感なことを表わしています

 

 

 

このようにして

 

身体の各それぞれの部分からの

 

感覚情報が 伝えられます

 

この 感覚神経の

 

多くは皮膚上に存在しており

 

全身のあらゆる場所にあります

 

体性感覚は 

 

「身体外」と「身体内」の

 

情報を伝えてくれる

 

とても大切な感覚器官になります

 

 

そして この体性感覚を

 

活性化する方法として

 

体性感覚には

 

神経線維(感覚受容器)の一つに

 

CT線維(C-Tactile/触覚線維)という

 

感情に関わる神経線維が在ります

 

このCT線維は

 

神経線維の末端が 枝分かれし

 

皮膚に入り込むかたちで

 

触覚を直接 知覚している

 

神経線維の束になります

(図を参照) 

 

このCT線維は

 

皮膚に優しく触れたり

 

ゆっくり撫でる無害な刺激に 反応し

 

中枢(視床下部)からオキシトシンという

 

物質を放出します

 

このオキシトシンは

 

ストレスを軽減したり

 

幸福感を感じる神経伝達物質で

 

別名「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」

 

などともいわれています

 

このオキシトシンは

 

快適な触覚刺激が 脳に伝わることで 

 

視床下部の室傍核と視索上核の

 

神経分泌細胞で合成され

 

下垂体後葉から分泌される

 

ホルモンになります

 

オキシトシンが分泌されると

 

副交感神経が優位にはたらくようになり

 

血圧や心拍数などが下がり

 

心身ともにリラックス状態になることで

 

ストレスを軽減させることが

 

できるといわれています

 

また 脳内での オキシトシンは

 

感情のコントロールや

 

神経の安定に深く関わっている

 

脳内の神経伝達物質

 

セロトニンの活動を

 

活性化させる働きもあり

 

不安や興奮した状態から

 

元の安定した心の状態に戻す

 

はたらきにも関与しており

 

特にうつ病の患者では

 

セロトニンの分泌が 少ないと

 

いわれているため

 

セロトニンを増やすことで症状を

 

改善できるともいわれております

 

また オキシトシンの分泌は

 

自閉症の対人関係に関わる症状を

 

軽くし症状を軽減させる効果もあると

 

といわれています

 

そして このオキシトシンの分泌を促す

 

CT線維(C-Tactile/触覚線維)は

 

毛の生えている有毛皮膚には

 

存在しておりますが

 

手のひらや足裏などの

 

毛の生えていない

 

無毛皮膚には存在しておらず

 

その為 オキシトシンの分泌を促すには

 

有毛皮膚に対して軽い圧で優しく触れ

 

ゆっくり撫でる無害な刺激を

 

入れることが 大切になります

 

効率よくオキシトシンを誘発

 

放出させる撫で方としては

 

撫でる速さを

 

1秒間に平均5cmくらいで

(秒速 5 cmのストロークで)

 

手の平全体で 優しく圧をかけ 

 

撫でるのが 良いといわれています

 

そして 触れ始めの身体部位としては

 

普段から人に触れられることが多い

 

肩や背中、腕といった身体の外側の

 

触れられることに抵抗の少ない部位から

 

行うと良いそうです

 

勿論、触れるだけでも

 

オキシトシンは放出されますので

 

上記のような撫で方が 難しければ

 

ただ優しく 愛情を込めて

 

触れたり撫でてあげるだけでも

 

十分に効果がありますので

 

試してみて下さい

 

 

また 体性感覚の

 

姿勢や歩行制御に関わる

 

大切な感覚受容器が 

 

集まっている部位の一つに

 

足底(足裏)があります

 

この足底の皮膚の感覚受容器は

 

身体の位置感覚と

 

支持面に対する情報の提供や

 

姿勢反射などに大きく関与しており

 

立位時では 唯一の支持面である

 

足底内に存在する 感覚受容器から

 

姿勢の変化や地面の状況を感知し

 

素早く姿勢調整を行います

 

その際 足底の皮膚の感覚受容器は

 

体の支持基底面の端に向かって移動する

 

足圧中心の動きを

 

検出できるだけでなく

 

より安定した立位を促すために

 

姿勢反射にも働きかけてくれます

 

[ 備 考 ]

・支持基底面とは

体重を支えるために必要な床面積の事を言います。 これは足の裏が床に接している面積だけではなく、立っている状態であれば、両足の底と、その間の面積が支持基底面となります。この支持基底面は、広いほど物体は安定します。

 

・圧の中心点とは

身体の重心(立位では骨盤のあたりに、座位では胸骨の裏側あたりに位置するといわれています)から下ろした垂直線と支持基底面との交わる点の事を言います

 

・足圧中心(center of pressure:COP)とは

床反力作用点、圧力中心とも表現され、床と足底との接触面に働く力の分布の中心点の事を言います。

 

 

例えば 人から押されたりして

 

バランスを崩した場合

 

頭を前に倒したり

 

両手を上に上げたりして

 

倒れないように努力します

 

その際 頭や手の重みを

 

前に持っていき

 

重心の落ちる位置

 

すなわち圧中心点が

 

支持基底面から

 

外れないようにします

 

そして この時に

 

より安定した体位を促すために

 

姿勢反射が働きます

(図を参照) 

 

このように足底の皮膚の感覚受容器は

 

日常生活や運動時などでの

 

あらゆる姿勢制御に

 

大きく関与しており

 

足底への体性感覚入力の統合は

 

姿勢や身体バランスなどに

 

とても重要な感覚機能になります

 

そのため 足底の体性感覚機能が

 

低下してしまうと

 

感覚受容器からの

(機械受容器・メカノレセプター )

 

情報が脳にうまく伝わらなくなるため

 

姿勢制御の指令が弱くなり

 

足などの筋肉がうまく使えず

 

転倒するリスクが高くなったり

 

姿勢の調整やバランス・運動能力なども

 

低下してしまいます

 

また 足などの筋肉がうまく使えなくなると

 

足底アーチの変形から膝・股関節、骨盤・背骨、

 

首・肩・腕などと身体に様々な

 

悪影響を引き起こすため

 

慢性肩凝りや腰痛などの症状の

 

要因にもなりますので

 

ても大切な感覚機能になります

 

 

そして この足底にある

 

姿勢調整のための

 

感覚受容器の

(機械受容器・メカノレセプター )

 

分布割合としては

 

1)足 趾(母指以外の指部分)

2)外側アーチ

3)踵(かかと部分)

 

に感覚受容器が とくに多く

 

存在しています

(図を参照) 

 

そして 足底の体性感覚を

 

活性化する方法として

 

この感覚受容器が 

 

多く存在している部位に

 

手で 軽く圧を加えて

 

擦って刺激を入れてあげるだけでも

 

効果的で

 

特に外反母趾や扁平足の方は

 

この3箇所の部位を

 

重点的に刺激を入れてあげると

 

良いかと思います

 

また 手で足の指を

 

内側へ巻き込むようにしながら

 

足の指と踵(かかと)を

 

お互いに近づけるように曲げ

 

足裏に刺激を入れてあげるのも

 

効果的です

(足裏の刺激方法は下図を参照して下さい)

*小さなお子さまの場合は 親御さまが

   お子さまに行ってあげて下さい

(図を参照) 

他の方法としては

 

・裸足でいる時間を多くする

・足裏で色々なものに触れ感じる

・足の指を使ってタオルを引き寄せる

(タオルギャザー)

・足の指と足裏全体を使ってのグー・パー

などがあります

 

このように

 

足裏に刺激を入れてあげることで

 

身体バランスの向上や

 

転倒予防にもなり

 

肩コリや腰痛、膝痛などの

 

予防・改善にも繋がります

 

また 小さなお子さまなどの場合は

 

原始反射や姿勢反射の統合の

 

手助けにもなりますので

 

試してみて下さい^^

 

 

これらの体性感覚は

 

姿勢や歩行制御に関与し

 

感情・ホルモンなどにも

 

関与している大切な感覚になります

 

 

そして これまでお伝えした

 

姿勢制御を行う上で必要な感覚情報

 

「視 覚」「前庭覚」「体性感覚」

 

この主となる感覚神経系の3つのシステムは

 

それぞれ単独で機能しているのではなく

 

視覚・前庭感覚・体性感覚の

 

3つが中枢神経系で

 

統合されることで

 

安定した姿勢や立位と

 

姿勢を保持した歩行や運動が

 

可能になります

 

また この感覚神経系の3つのシステムには

 

姿勢制御を行う上で

 

どの感覚を主とするかの

 

割合があります

 

この割合を「感覚の重みづけ」といいます

 

このつづきは

 

次回投稿予定の「感覚の重みづけ」で

 

詳しく書いていきたいと思っております。

 

皆様のお役に少しでも立てれば幸いです。

 

【お読み頂きまして ありがとうございました】