怪文書が好きなネトウヨ(アーソン・グレブスト編・その1) | 誰かの妄想

怪文書が好きなネトウヨ(アーソン・グレブスト編・その1)

嫌韓主張によく使われるアーソン・グレブストの「悲劇の朝鮮」からの引用ですが、ちゃんと読んでみると、まあ、嫌韓のひどいトリミング手法がよくわかります。

アーソン・グレブスト本人は、韓国を1904~1905年に訪問していますが、「悲劇の朝鮮」の内容は、全体的に朝鮮人に対して非常に好意的で、いずれ日本に滅ぼされるであろう韓国皇帝や政府に同情的、そして、韓国侵略を進める日本や、日本の手先となっている一進会に対して批判的です。


一言で言えば、内容は嫌韓ネトウヨにとっては都合の悪い内容です。

嫌韓ネトウヨは、トリミングを使って嫌韓的に引用を行い、民族差別を助長する引用を行っています。朝鮮人に対する民族的誹謗であると同時にアーソン・グレブストに対する冒涜であると言えるでしょう。


さて、「悲劇の朝鮮」関連で書きたいことは、ちょっとあまりにも多いので、アーソン・グレブスト関連の記事は分割することにしました。
前半は、嫌韓ネトウヨの恣意的引用に対する指摘からはじめます。


なお、参照したのは「悲劇の朝鮮」アーソン・グレブスト、高演義・河在龍訳、1989年9月5日初版、白帝社、原本は「I KOREA-MINEN OCH STUDIER FRÅN "MORGONSTILLHETENS LAND"」(朝鮮にて-”朝鮮やかなる国”の回想と研究)、G¨OTEBORG, 1912.です。
また、書名で、”朝鮮”と書かれていますが、1905年当時の国号は大韓帝国であるので、基本的に引用以外は韓国と記載します。


さて、まず最初はグレブストが、日本から韓国に到着した時の記載です。時期は1904年12月、日露戦争の取材に日本に来たグレブストでしたが、他の多くの記者と同様、従軍記者を寄せ付けない日本軍の秘密主義によって、記者として朝鮮・満州の戦場には行けず、商人に成りすまして韓国に向い、釜山に上陸します。

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http://mirror.jijisama.org/syokuminti3.htm
「悲劇の朝鮮」アーソン・グレブスト (高演義・河在龍訳 1989年 白帝社)
釜山で朝鮮が私に与えた第一印象は、さほどいいものではなかった。道は狭く不潔で、家屋は低くて見栄えがしなかった。日本のように人
目を引く商店や、古い寺などもない。四方から悪臭が漂い、戸外にはごみが積もり、長い毛をだらりと垂らした犬が集まってきては食べ物をあさっている。あちこちに乾上った下水道があるが、そのべとべとした底ではいろんな汚物が腐りかけている。そしてその中で髪の毛の長い子供たちが遊んでいる。朝鮮の海辺の村落を通り抜け、車夫らは道がより広く比較的きれいな、日本風の市街地へ向かった……
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「悲劇の朝鮮」P17-18の記述です。

日本に比べて、韓国はこんなに不潔だ、とでも言いたいのでしょうね、嫌韓バカは。日本と韓国の差ではなく、近代初期と近世末期の違いでしかないのですが・・・。


ちなみに上記、嫌韓の引用の直後は、こう続きます。



 朝鮮の海辺の村落を通り抜け、車夫らは道がより広く比較的きれいな、日本風の市街地へ向かった。そこはあらゆるものが典型的な日本だ。日本人は自分たちの移住した国に適応しようとしないで、みずからの風俗をそのまま持ちこんで守ろうとするのである。故国のふるさととまったく同じように家を建て、食事をし、飲み、眠る。ことに朝鮮ではこの傾向が顕著だ。
 生活力の強い日本の種族の帝国主義根性は、朝鮮の滅亡をほとんど既成事実化してしまった。内心そんな目的を抱きながら日本は計画的にことを運んでいた。彼らが礎を築いているのは朝鮮の改革された未来のためではなく、自分たちのためなのだ。
 釜山をめぐっている間にいろんな人物を見ることができた。人びとは白い民族衣装のせいか大変善良で優しい印象を与える。なんと履き物まで白なのだ。労働者は服を三~四枚重ねて着こみ、チゲと称する木でできた大きな背負いこのようなものを背負っているが、それは縄で首のあたりで固定されている。
 土埃が目のなかにはいらぬようにと、彼らは頭を白い布切れでぐるっと結んでおり、横広のズボンは膝下までたくしあげてある。彼らは一般に不潔だが、労働者階級に属さない者は非のうちどころのないほど清潔だ。(後略)


日本の風習に従わない在日韓国朝鮮人に対するのと、同様に、移住先でも自分たちの風習に当時の在韓日本人に対して嫌韓ネトウヨはどう思うのでしょうかね。まあ、都合よくスルーしておしまいだろうけど。


グレブストから見れば、日本人は傍若無人に見え、韓国人は善良に見えているようですね。労働者階級は不潔だが、裕福な者は清潔であると、ま、当時の日本の鉱山労働者と資本家や地主と同様と言えるでしょうね。


嫌韓ネトウヨは都合の悪いところは無視して、都合のいいところだけを引用して、嫌韓という民族差別助長の主張をしています。


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