未だに軍の関与はなかったとか虚言を弄するネトウヨに騙されないために | 誰かの妄想

未だに軍の関与はなかったとか虚言を弄するネトウヨに騙されないために

ネトウヨは3行以上の文章を理解できないので資料を読み取る能力が著しく低いのですが、ネトウヨ以外の人(注:自分も含む)のために、実際の資料から何が読み取れるか考えてみましょう。


お題は、
「政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成1 警察庁関係公表資料・外務省関係公表資料」
(財)女性のためのアジア平和国民基金編、龍渓書舎
から。
このPDFファイルは以下からダウンロードできます。龍渓書舎さん太っ腹。
http://www.awf.or.jp/index.html



従軍慰安婦関連資料集成1
P163
PDF P188/581
9-1.南洋方面占領地に於ける慰安所開設に関する件[台湾総督府外事部長](昭17・1・10)


昭和17 九六四 略 台北  1月10日後発  南米
          本省   10日後着

 東郷外務大臣           蜂谷外事部長

第10号
(南方占領地に於ける慰安所開設に関する件)
南洋方面占領地に於て軍側の要求に依り慰安所開設の為渡航せんとする者(従業者を含む)の取扱振りに関し何分の御指示相煩度し(了)


P165
PDF P189/581
9-1.南洋方面占領地に於ける慰安所開設に関する件[外務大臣](昭17・1・14)

主管 亜米利加局長  主任 第三課長  昭和十六年一月十三日起草

電送第1545号
昭和17年1月14日前後5時35分発(※前後のチェック判別できず)
宛 台湾総督府 蜂谷外事部長 発 外務大臣
件名 南方方面占領地に対し慰安婦渡航の件

略 第六号 「(印)外機密」

貴電第10号に関し
此の種渡航者に対し(※(以下削除部分)「旅券を発給することは面白からざるに付」)(※以下追記部分)「ては」軍の証明書に依り(※(以下削除部分)軍用船にて)渡航せしめられ度し



これは、1942年1月10日に台湾総督府外事部から外務省本省に出された電報とそれに対する外務省本省の1月14日付け回答です。
簡単に言うと、植民地台湾の外務省(台湾総督府外事部)が、軍の要求による慰安所開設の為に台湾から南方に渡航しようとする慰安婦や女衒がいるんだけど、どうすりゃいいの?と本国外務省に問い合わせ。それに対して、本国外務省は慰安婦や女衒なんかに旅券を発給するのは面白くない、と本音を漏らしつつ、(旅券じゃなく)軍の証明書と軍用船で渡航させればいい、と答えてます。


ポイント


1.明白な軍の関与を示している・・・「軍側の要求に依り慰安所開設の為渡航せんとする

2.売春目的での海外渡航の取扱に台湾外事部が困っている・・・「御指示相煩度し」
(売春目的での渡航は「醜業を行わしむる為の婦女売買禁止に関する国際条約」第二条に抵触する恐れがある。)

醜業を行わしむる為の婦女売買禁止に関する国際条約(1910年)
第二条
何人たるを問わず他人の欲情を満足せしむる為醜業を目的として詐欺に依り又は暴行、脅迫、権力乱用其の他一切の強制手段を以て成年の婦女を勧誘し誘引し拐去したる者は又右犯罪の構成要素たる各行為が異なりたる国に亘りて遂行せられたるときと雖罰せらるべし

http://d.hatena.ne.jp/yamaki622/20070526/p1

争点は「軍の要求による慰安所開設」が「権力乱用其の他一切の強制手段」にあたるかどうか(間に業者を挟んでいるとしても)であるが、戦時中の1942年時点での「軍の要求」が強制手段にあたらないと考える人はそうはいないだろう。


3.売春目的渡航者に旅券を発給することが不適切であることを外務省が認識している・・・「此の種渡航者に対し旅券を発給することは面白からざる」


4.外務省は売春目的渡航の責任を回避した・・・「軍の証明書に依り軍用船にて渡航せしめられ度し」


5.慰安婦が民間人としてではなく軍関係者として渡航したことが示唆されている・・・「軍の証明書に依り軍用船にて渡航せしめられ度し」
(現在でも日本に出入国するには基本的に旅券が必要だが、在日米軍や自衛隊が任務により出入国する場合は不要)


以上のポイントから、慰安所の開設は軍の要求により、かつ移送に際し慰安婦は民間人ではなく軍関係者として扱われ、さらにこういったことを取り締まるべき外務省は責任を放棄していたことがわかります。

まあ、電報のやり取りだけで実際の運用は違っていた可能性もありますが(ほとんどないでしょうけど)、少なくとも日本外務省が慰安婦をどう見ていたかはよくわかりますね。