こういう嘘というか誤解がまかり通るのはどうかと | 誰かの妄想

こういう嘘というか誤解がまかり通るのはどうかと


http://www.ogawashoten.co.jp/comy0625.htm

自分の家に武装集団が攻めてきたらあなたはどうしますか?

「日本国憲法の問題点」小室直樹著(集英社インターナショナル)

質問です。

あなたは日本海に浮かぶある小さな島に住んでいます。

あなたがいつも通り朝食を食べていると、突然武装ヘリコプターが飛来し、自動小銃で武装した男数十人が降りてとなりのあなたの知り合いのうちに入ってゆきました。すぐに銃声が聞こえ、あわてて外をみると武装グループの中心に血だらけのあなたの知り合いがぐったりと動かないまま横たわっています。

しばらくすると、警察と自衛隊が来ましたが銃撃戦の末、島中の警察と自衛隊員が全滅してしまいました。

良く見ると彼等の軍服には某国の国旗が描かれています。

ふと、足元を見るとさっきの戦闘で自衛隊が使っていたと思われる自動小銃が落ちています。あなたは過去に自衛隊に入隊した経験があり、自動小銃の使い方は分かっています。ここから撃てば彼等を今全滅させることも可能でしょう。

辺りは不気味に静まりかえり、殺されたらしいあなたの知り合いの奥さんと子供が泣き叫ぶ声ばかりが聞こえてきます。

さあ、あなたならどうしますか?。
(空白略)

正解は
「自分の家の窓という窓から白い布をたらし抵抗の意思のないことを示す」
です。間違っても撃ったりしてはいけません。
(中略)
ちなみにいわゆる「戦時国際法」では以下の4条件を満たしているときに限っ
て、合法的な「戦闘員」と認めることにしているんだそうです。

(1)部下について責任を持つただ一人のものが指揮していること
(2)遠方から認識することができる固着の特別標章を有すること
(3)公然と武器を携行していること
(4)戦争の法規及び慣例に従って行動していること

と、すると

「上記4項目を満たさずに戦闘行為を行うのが一番まずいんで、やるんならこの
条件を満たしてからやれ!」

ってことですね。



ま、想定している事態そのものが不自然、というつっこみはおくとして(「島中の警察と自衛隊員」を全滅させるほどの規模の敵を「今全滅させることも可能」という状況になりうるか?とか)。


簡単に言うと、一方的に侵略されて隣人が殺されて、自分に反撃の機会があっても、
(1)部下について責任を持つただ一人のものが指揮していること
(2)遠方から認識することができる固着の特別標章を有すること
(3)公然と武器を携行していること
(4)戦争の法規及び慣例に従って行動していること
の4条件を満たしていない場合は国際法違反になるから反撃してはいけない、と。


で、暗に、戦時国際法が不合理であること、国際法を遵守すると書いている日本国憲法が不合理であること、上記理論で南京事件を正当化できること、を主張しているようですが・・・。

戦時国際法の認識を小室直樹氏の本からしか仕入れていないのが問題な気がします。


おおもとの戦時国際法は以下の通り。

ハーグ陸戦条約付属書 陸戦の法規慣例に関する規則

【第一条】(民兵と義勇兵)
 戦争の法規及権利義務は、単に之を軍に適用するのみならす、左の条件を具備する民兵及義勇兵団にも亦之を適用す。
一. 部下の為に責任を負ふ者其の頭に在ること
二. 遠方より認識し得へき固著の特殊徽章を有すること
三. 公然兵器を携帯すること
四. 其の動作に付戦争の法規慣例を遵守すること
民兵又は義勇兵団を以て軍の全部又は一部を組織する国に在ては、之を軍の名称中に包含す。

【第二条】(群民兵)
 占領せられさる地方の人民にして、敵の接近するに当り、第一条に依りて編成を為すの遑なく、侵入軍隊に抗敵する為自ら兵器を操る者か公然兵器を携帯し、且戦争の法規慣例を遵守するときは、之を交戦者と認む。

【第三条】(兵力の構成員)
 交戦当事者の兵力は、戦闘員及非戦闘員を以て之を編成することを得。敵に捕はれたる場合に於ては、二者均しく俘虜の取扱を受くるの権利を有す。


なぜか、このサイト主(多分小室氏の著作も)は第一条しか参照してません。
上記の例で、反撃した場合は、第ニ条が適用されるでしょう。第一条にあるような民兵・義勇兵を編成する暇がなく、侵略軍と戦うために自ら武器をとった者、まさにこの場合でしょう。つまり国際法違反にはなりません


ついでに、記録上は見たことないのですが、1937年の南京攻略にあたって、もし民間人がゲリラ活動を行ったとしても群民兵である限り違法行為にあたりませんね。(違法と呼べるのは、間違いなく中国軍所属と言える者が、意図的に民間人の服を着て戦闘行動をとった場合のみでしょう。)


小室氏の「日本国憲法の問題点」が意図的にこういう誤解を生じさせているとすれば、悪質なアジテーターと言えますがどうでしょうかね。


ちなみに正解は、
「銃を取って戦っても違法とはされないので構わないが、逃げても隠れても降伏しても構わない。自分(と家族)の安全を確保するのに最善と思う行動をとるべし。」
でしょうね。


大体、国や法があって、人がいるわけではなく、人がよりよく生きるために国や法があるわけですから、「自分(と家族)の安全を確保するのに最善と思う行動をとる。」というのが一番重要。


そして、少なくともハーグ陸戦条約は、そのような行動を阻害するような内容ではない、ということ。変に曲解して国家に余計な権限を与えないよう気をつけましょう。