産経症・2005年に人身売買禁止議定書を承認した国 | 誰かの妄想

産経症・2005年に人身売買禁止議定書を承認した国

日本は2005年に刑法226条に追加条項を加え、人身売買禁止議定書を承認しました。

追加条項とは、人身売買禁止の条項です。

言い換えれば、2005年まで人身売買を直接裁く法律はなかったわけです。


もともと、刑法226条は、いわゆる「からゆきさん」(日本人女性の海外への人身売買)対策を外国から求められた結果として1907年に制定されたものです。しかし、このとき禁止されたのは、国外移送のみでした。


(所在国外移送目的略取及び誘拐)
第二百二十六条 所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。

要するに国内での人身売買は野放しにされたのです。

一方で1900年の大審院判決により、娼妓契約が民法90条(公序良俗)に反するとして無効となりましたが、娼妓契約に伴う金銭貸借契約は有効であるとされたため、返済手段をもたない女性は娼妓にならざるを得ず、実質的に管理売春が続くことになります。


こういった人権感覚が、軍が従軍慰安婦を募集するといった事態を生み出したといえるでしょう。


「買春して何が悪い」という感覚は戦後も続き、高度経済成長を経て「じゃぱゆきさん」(外国人女性の日本への人身売買)が誕生します。これは国際的な批判を浴びて、日本の国会は2005年、ようやく人身売買禁止議定書を承認することになります。

言うまでもありませんが、この人身売買には、性奴隷としての女性の売買が含まれており、強制連行のような”いわゆる”狭義の強制以外に、詐欺や前借金契約などによる強制(じゃぱゆきさんなどはこれにあたる)も含んでいます。


よく金をもらっていたんだから、性奴隷ではなく商売だ、と主張する方がいますが、それはあまりにも労働問題について無知といわざるを得ません。報酬を得ている奴隷だって存在しますし、何より19世紀20世紀における低賃金労働者の悲惨な状況をしらなすぎです。

他に仕事がなく、収入を当てにできる家族のない状況で、それをいいことに時給200円で1日16時間1ヶ月30日勤務が嫌なら会社を辞めろ、と言われることを想像してほしいものです。これでも1ヶ月9万円程度にはなりますから地方なら何とか生きてはいけるでしょう。しかし、これを正当な労働報酬などと思う人がいるのでしょうか?

このような労働は人権を損なうとの考えから、最低賃金や就業時間などの労働法が出来て労働者が不当な搾取されないように法規制されているわけです。そして、これらは、ネトウヨや産経・自民党が毛嫌いする労働組合などが長い年月を経て獲得してきた権利です。


話を戻して、2005年の人身売買禁止議定書と刑法226条の追加条項によって強制連行のような”いわゆる”狭義の強制以外に、詐欺や前借金契約などによる広義の強制による売春が明確に禁止され、日本は「じゃぱゆきさん」の汚名を返上できるかに思われました。

ところが、2006年に下村官房長官が、2007年に安倍総理大臣が、第二次大戦における性的人身売買である従軍慰安婦問題について、「狭義の強制はなかった」などと発言します。当然ながら、わざわざそれに言及する以上、それを聞いた人は「狭義の強制がなければ問題ではない」という解釈します。


これをかつて「じゃぱゆきさん」問題で日本を非難していた諸外国が見たらどう受け止めるかは容易に想像できます。世界の認識では、強制連行であろうが、詐欺や借金であろうが人身売買であるのに、日本はいまだに半世紀前の倫理しか持ち合わせていない、と受け止めることでしょう。


小泉といい、安部といい、どれだけ日本の外交を損ねれば気がすむのか、日本を自分たちのおもちゃか何かと勘違いしているようにしか思えません。


では、産経新聞の正論(笑)を見てみましょう。


(引用)

【正論】現代史家・秦郁彦 米下院の慰安婦決議阻止の妙案 (2007/3/11)

 ■日米両国を非難決議の対象にしては

 ≪噴火を再開した休火山≫

 平成3年の大爆発から数年、日本の内外をにぎわせた慰安婦騒動も、河野洋平官房長官談話(5年)やアジア女性基金による「償い金」の支給事業で沈静したかにみえた。しかし人々の関心が薄れかけると、この休火山は噴火を再開するくせがあるらしい。


★「強制ではなかった」とか「商売だった」とか言うからですよ。学習能力ないなあ。


 昭和天皇を慰安婦問題で有罪と宣告した女性国際戦犯法廷(12年)、その番組制作をめぐるNHK対朝日新聞の紛争(17年)につづいて、こんどは米国下院に上程された「慰安婦決議」案の行方が注目されている。すでに何度か提出され、そのつど廃案になったものだが、本年1月末マイク・ホンダ下院議員らが提出した新たな決議案は「日本帝国軍隊が第二次大戦期に若い女性たちを慰安婦として強制的に性奴隷化したことに対する歴史的責任を明確な形で公式に認め、謝罪する」(第1項)よう日本政府に求めたもの。

 しかも「謝罪は日本の首相が公的資格で声明」(第2項)せよとか、「現在と未来の世代にわたり、このようなおぞましい犯罪があったことを教育せよ」(第4項)とか、「性奴隷がいなかったと主張する言論を禁圧」(第3項)せよといった内政干渉がましい要求までだめ押ししている。


★うーん、それを言ったら、アメリカ国内でどんな決議をしようが、それにあれこれ注文つけるのは内政干渉じゃないの?


 およそ民主主義の総本家と自負するアメリカの議会人とは信じられぬほど品格に欠ける言い回しだが、その勧進元が戦時中に日系人(強制)収容所で暮らした日系3世と聞けば何ともむなしい。

 しかも決議案の背景となった事実認識は「20万人」の慰安婦たちを「20世紀最大の人身売買」(前文)の犠牲者と位置づけ、集団暴行、強制中絶、殺害、手足切断などのめにあわせたときめつける非常識さだから、つける薬は簡単には見つかりそうもない。


★当時人身売買は犯罪ではなかった、とでも言ってはいかが?
★逆に「つける薬は簡単には見つかりそうもない。」と言い返されるのが落ちだと思うけど。


 外務省はこの種の係争では事実関係を争わず、村山富市首相や橋本龍太郎首相のお詫(わ)び文の英訳を届けるたぐいの消極策しかとってこなかった。2月13日付で加藤良三駐米大使が下院にあてた「反論書簡」も、歴代首相が謝罪を重ねている、安倍首相も河野談話を受け継ぐと表明している、アジア女性基金が「償い金」を払った式の釈明に終始している。

 ≪鈍い決議阻止への動き≫

 さすがに自民党の中山泰秀議員らが、河野談話の修正に向け動きだしたが、3月5日の参議院での質疑で、首相があらためて「河野談話は基本的に継承していく」と表明したため腰砕け気味になってしまった。では4月末の安倍訪米をにらんで直前の本会議可決をめざしているとされる状況に即効の対応策はあるのか、数案を検討してみよう。

 (1)決議が可決されても法的効果はないので静観する(2)謝罪も償いもすんでいるとくり返し説得する外務省方式の継続(3)河野談話の修正(4)朝鮮戦争、ベトナム戦争でも米軍や韓国軍が類似の慰安所制度を利用していた事実を指摘し、「同罪」だったことを自覚してもらう-の4案である。


★過去の事実を認めたうえで謝罪と償いが行っていることの主張、閣僚や議員の失言に対する謝罪、の2点を行うという選択肢は、そもそもないのね・・・。
★ボク、間違ったことしてないもん!なんて良い年した大人が言っても誰もあやしてくれないですよ。いい加減ひとり立ちしてください。ニートじゃあるまいし。


 (1)と(2)は論外として、(3)河野談話の「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も甘言、強圧など、官憲等が直接これに加担したこともあった」というくだりから、「軍の要請を受けた」を削除、「強圧」を「威迫」に、「直接これに加担した」を「直接間接に関与」か「取り締まる努力を怠った」へ修正するのが私案である。


「「軍の要請を受けた」を削除」は問題外。軍の要請があったことは事実でしょ。
「「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も甘言、強圧など、官憲等が直接これに加担したこともあった」というくだり」勝手に改ざんしないで欲しい。河野談話は「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」とある。
★後者の原文の方では、「これに加担」が募集に加担したのか、甘言、強圧に加担したのか、曖昧であるが、前者の秦氏修正引用文では、「これに加担」は、甘言、強圧に加担したとしか取れなくなっている。せめて(中略)とでも書けば誠意を感じられるのだが、なんというか姑息だなあ・・・


 慰安婦募集の実態は拙著『慰安婦と戦場の性』に詳述したが、朝鮮人ブローカーが娘を身売りした親と業者を仲介する合法的な商行為だった。そして業者が戦地に慰安所を開き、軍が性病の検診や輸送の便宜をはかったもので、官憲が「強制連行」に乗り出す必要性はなかったし、裏付けのある証言もみつかっていない。

 ≪ペンタゴンも黙認して…≫

 ベトナム戦争中の米軍慰安所については、スーザン・ブラウンミラー(米人女性ジャーナリスト)の『Against Our Will』(1975年)に詳細なルポがある。一部を紹介すると「鉄条網で囲まれた公認の軍用売春宿では60人のベトナム女性が住み込み…1日に8人から10人をこなす。料金は500ピアストルで、女の手取りは200ピアストル、残りは経営者が取った。彼女たちを集めたのは地方のボスでペンタゴンも黙認、女たちは週ごとに軍医の検診を受け…」といったぐあい。日本軍の慰安所と瓜二つではないか。


★はい、「公認」と「公営」では意味が違うように、売春宿を開きたい、という業者に対し軍や政府が許可を与えるのと、軍が売春宿を開いて欲しい、と業者に要請するのは全く違いますよ。
★ペンタゴンの”黙認”と日本軍の”要請”では、意味が全然違うということを理解して欲しいものです。


 ホンダ議員たちへ対日非難の資格ありやと問うか、決議案の対象を日米両国政府に修正するようかけあってみたらどうだろう。(はた いくひこ)


★後者については、やってみれば良いんじゃない?と思いますけどね。
★前者についてはいただけない。「あいつもやっているじゃないか!」なんて、何の言い訳にもなりません。


(2007/03/11 05:04)

(引用ここまで)

従軍慰安婦問題そのものは結構難しく、民法90条の公序良俗違反以外には法的な根拠を今のところ見出せない。

日本軍による強制連行の有無が問題、という意見もあるが、強制連行自体は従軍慰安婦問題では主眼ではない。

もともと「慰安婦狩り」のようなことについて、出先の下部組織が独自に行うことはあったにしろ司令部レベルで計画を立てたりする可能性はきわめて低い。


戦時性暴力というものを考える場合、その形態は次の3種類ある。(この分類については、おさかなさんのエントリ を参考にしました)

1.強姦

2.拉致・監禁を伴う性暴力

3.管理売春


「2」が従軍慰安婦にあたるかどうかは、疑問の余地もあるが、白馬事件のように「3」の管理売春の形式をとることもあるので大きく従軍慰安婦問題といえば、通常は含んでいると考えてよかろう。

しかし、当時の日本軍・日本政府が組織として直接責任が問われるのは、「3」であろうと考えるのでこれについては別途エントリ立ち上げて述べることにしたい。「2」については、おさかなさんのエントリ で紹介されている他に、主体は日本軍ではなく、米軍になっているが、「2」の形態での戦時性暴力を上手く描写している以下の映画を薦めたい。


カジュアリティーズ アルティメット コレクション
¥3,420

マイケル・J・フォックス主演のベトナム戦争映画で、米兵がベトナム女性に対して行った性暴力をテーマとしている。

アメリカは自国のやったことについてちゃんと向き合えるだけまとも、って気がします。


(2007/3/15文字の色修正)