北朝鮮のミサイル・インドのミサイル・そしてパトリオット | 誰かの妄想

北朝鮮のミサイル・インドのミサイル・そしてパトリオット

「日本は騒ぎ過ぎ」 ミサイル発射で韓国大統領府HP (朝日新聞2006年07月10日)

えー、確かに騒ぎすぎだと思います。

日本上空を通過したわけでもないのに。


ま、確かに飛行中の航空機に当たる「可能性」はあるわな。でも、航行中に急速浮上してくる潜水艦に衝突される可能性よりは低いんじゃない?(あの時の自民党総裁は、ゴルフを続けてたのに、今回はこの「大騒ぎ」、なんだかねえ。)


そもそも、ミサイル燃料の注入の情報が事実だと認定したのなら、その時点でいつかは撃つのはほぼ確実(一度燃料を注入したら戻すのが難しいのは指摘されていたはず)なので、発射自体は別に驚くべきことでもない。それどころか日本海の日本側からはるかに離れたロシア沿岸に着弾したこと自体、北朝鮮側の譲歩とも取れるのだが、そんな論調は少なくとも日本では見かけない。(北朝鮮が「拉致」の事実を認めたことも、それ自体譲歩だったはずなのに、日本の論調はほとんど認めていなかったように思う。瀬戸際外交に追い込んでいるのは一体誰なのだろう・・・)


さてこういった状況になると、9条のある現憲法下でもこういう発言が出てくるわけだ・・・


安倍長官、敵基地攻撃「検討研究必要」 (朝日新聞2006年07月10日)

(戦後の流れ)

1.自衛権は放棄していない→自衛隊の保持
2.平和維持活動→東南アジア自衛隊派遣
3.後方活動→アフガン攻撃の米軍補給
4.非戦闘地域→イラク派兵
(・・・どこが平和国家?)というより、憲法守る気あるんかい?


で、統一協会に祝電を打つような安倍官房長官の発言だが、「明らかに日本を攻撃する意図があり、他に手段がないと認められる限り、敵基地攻撃は可能」って、おい。

・「明らかに日本を攻撃する意図が」あるのかどうか、を判断するのも
・「他に手段がないと認め」るかどうかも
両方とも政府でしょ。

しかも、「意図」なんて事後検証でも立証困難だし、「他の手段」も大幅な情報公開でもしない限り、ないなんて立証できない。結局、言ったもん勝ち。戦争を起こすには、現状、既にほとんどフリーハンドだと言える。
そもそも、9条の制約は、日本国民から日本政府に課せられたもので、北朝鮮に課せられたものではない。政府に対し、戦争という安直な(同時に指導した側は常に安全な場所にいながら国民を危険にさらすことになる最悪の)手段に訴えることなく、外交努力によって解決することを求めるための制約である。


お玉さん ところのコメントで、9条でミサイル発射を防げなかった、といった発言があったが、今回の件は、9条を云々する話じゃないんだよな。


ところで、今回の北朝鮮制裁決議案は、国連憲章第7章に言及しているそうで。
これは、軍事行動の根拠となりえる条文だが、報道では「制裁」という表現が目立つような気がする。無論、経済制裁も含むのだから間違いではないが、第7章には、以下のような第42条があることは、平和国家を標榜する日本なら知っておくべきことであろう。

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第42条〔軍事的措置〕
安全保障理事会は、第41条に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。
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さて、この決議案が採択された場合、そして軍事的措置が選択された場合、日本はどういう立場になるのだろうか?
(今回の決議案だけで武力制裁が可能になるかどうかは、決議案本文を見つけられなかったので何とも言えない。ただし、日本政府はイラク戦争において、武力制裁を認めているとは言えない決議を理由にアメリカの攻撃を支持している。)


ます、米国を中心とする国連軍あるいは多国籍軍が編成されはするだろう。問題はその中の自衛隊(以後日本軍と呼ぶ)の位置づけである。まさか、アフガンのように後方支援のみでは済むまい。


・戦闘地域は日本から目と鼻の先にある
・日本はアジア最大の軍事力を保有している
・日本は本決議案の中心的提出国である


国際的な常識として考えるなら、少なくとも日本は米国に次ぐ兵力を出さざるを得ないだろう。


北朝鮮制裁案、採決向け中ロ説得 麻生外相ら (朝日新聞2006年07月10日)

日本の力強い(皮肉)仲間たち
安保理15か国中の共同提案国:米国・英国・フランス・デンマーク・ギリシャ・スロバキア・ペルー


(その他の理事国:ロシア・中国・アルゼンチン・コンゴ共和国・ガーナ・カタール・タンザニア)


イラクよりも遠い北朝鮮に派兵することになる英国・フランス・デンマーク・ギリシャ・スロバキアはどの程度の軍を出すだろうか?まかり間違っても日本軍より多くなることはないだろう。ペルーと日本はフジモリがらみでもめているが、ひょっとしたら数百人規模くらいは派遣するかもしれない。


まともに極東に兵力展開できそうな国は米国ぐらいだが、これとて韓国との連携が出来なければ躊躇するだろう。

韓国は、もし武力制裁となれば最大の被害を受けるのが容易に予想できる。果たして協力するだろうか?
中国は、この決議案が採択されているとすれば、おそらく棄権しているだろう。棄権である以上武力制裁に協力する根拠はない。基地使用も認めないだろう。
ロシアも、
制裁決議に当初から否定的。武力制裁に参加はしないだろうが、ひょっとすると基地使用は許可するかもしれない。


さあ、どうする!日本。ほとんど単独での武力行使だ。


と言っても、武力行使までは当面行わないだろう(米国が本腰を入れるまでは)。しかし、この状況は、9条改憲に向けての大きな援護射撃にはなる。

繰り返しだが、
・戦闘地域は日本から目と鼻の先にある
・日本はアジア最大の軍事力を保有している
・日本は本決議案の中心的提出国である
と言う状況下(日本政府自ら主体的に作った状況だが)で「海外派兵の出来ない現憲法では国際貢献できない」という主張は非常にやりやすい。ましてイラク戦争と違って国連決議が武力行使を認めていればなおさらだ。

(なので、今回の騒ぎっぷりはどうも国内政治を誘導するためのパフォーマンスに見えなくもない。事実インドのミサイル実験には無茶苦茶寛容だし・・・


そしてこのまま行くと、米国の自由になる米国に忠良な日本軍が誕生することになる。かつて中東でフセインが担った役割を、今度は極東で日本が負うことになるかもしれない。やれやれ。


決議案が採択された場合、
下手すれば、60年間の平和をぶち壊す武力紛争、上手くいっても、自衛隊の米国傭兵化と属国化の進行。
そろそろ後戻りできない状況になりつつある(ひょっとしたら既になってるかも)。


権力は必ず腐敗し暴走する。腐敗した権力を浄化するシステムとして民主主義が生まれ、権力が暴走しないための枷として憲法が生まれた。どちらも国民を守るために存在する。

今、その枷を国民自らが解こうとしている。1933年のドイツと同じ道を歩まない保証はない。


あと、どさくさにまぎれて、パレスチナではこんなこと(イスラエル軍、ガザ東部に侵攻 武装集団と交戦) に。北朝鮮のミサイルなんて大したもんに見えないよな。これに比べると。