前回、皮膚の幹細胞についてお話しましたが
植物の幹細胞という言葉も化粧品の分野でよく聞くようになりました。

植物の場合は、動物の幹細胞とは少し異なります。

もともと植物の分化は動物ほど厳密ではなく
動物では一度分化した細胞は、
未分化の細胞に戻る(脱分化)ことはありませんが
植物細胞は一度分化した細胞でも
脱分化して再度増殖させて細分化させることが可能です。

挿し木などが良い例ですが、
植物バイオの世界では
植物の細胞をとってきて
脱分化させてカルスという増殖する細胞の塊をつくったり
細胞を多量に培養する技術があります。
また、増殖した細胞を再び植物の個体に細分化させることも可能です。

葉や茎、根など、どの部分からとってきた細胞でも
脱分化させて増殖させることは可能です。
しかし、植物には生長点というとても盛んに分裂している組織があります。
そこの細胞を使うとウイルスフリーの細胞を得ることができるので
しばしば生長点からとった細胞が使われます。

このようにして得られた植物細胞が幹細胞と呼ばれます。

はじめはスイスの腐らないリンゴの幹細胞(培養細胞)
から得られたエキスが化粧品に用いられ話題になりました。

今では、コンフリー、アルガン、ブドウ、アルペンローゼ、
クチナシ、エーデルワイスなど様々な植物から幹細胞エキスが
開発されてきており、その種類はどんどん増えています。

これらの植物幹細胞(培養細胞)から得られたエキスは
それぞれ特徴的な効果が確認されています。

例えば、初めのリンゴの幹細胞エキスの場合は
表皮の幹細胞にはたらきかけ、
幹細胞を活性化して若々しい表皮を維持するために効果があります。

植物の幹細胞が、皮膚の幹細胞に働きかける!
というので「幹細胞」「幹細胞」でややこしくなってしまい
植物の幹細胞が皮膚の内部で皮膚の幹細胞として働くのではないかと
勘違いしていらっしゃる方も多いかもしれませんね。
そういうことではありませんので、念のため。

アルガンの幹細胞エキスは真皮の幹細胞にはたらきかけて活性化するそうですし
クチナシやエーデルワイスはコラーゲンの保護や再構築に効果があるそうです。
長寿遺伝子にはたらきかけるというものも発表されています。

普通の植物エキス(植物体から得られる)との違いは
培養細胞から得られるので、農薬を使わないで得られる、
天候や産地などに左右されないで一定の品質のものが得られる、
希少な植物種(大量に栽培できない)のエキスでも大量に得ることができる。
などの利点があるそうです。

間違いなく、これらの植物幹細胞エキスは
アンチエイジングに効果的な成分として
化粧品のトレンドになっていくものだと思います。

ずいぶんご無沙汰をしてしまいました。

この1年、子供が生まれたり、妻が病気で入院したり
色々とバタバタした1年でした。
(ご無沙汰してしまった言い訳です。。。)

さて、近頃「幹細胞」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。

幹細胞は、様々な系統の細胞に分化できる能力と
細胞分裂を繰り返しても文化する能力を維持できる能力(自己複製能)を
あわせもつ細胞のことです。

ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授のiPS細胞は有名ですが
これも幹細胞のひとつで、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力と
ほぼ無限に増殖する能力をもちます。

本来は1個の細胞から何にでも分化し、増殖できる細胞は
受精卵しかないのですが、これに近い幹細胞を人工的に
体細胞を変化させる(リプログラミングする)ことで作った
技術がきわめて素晴らしく、ノーベル賞に輝いたわけです。

1個の細胞から何にでも分化できる細胞は受精卵だけと言いましたが
もっと限定された数種類の細胞種にだけ
分化することのできる幹細胞というのは
普通に私たちの体の中には存在しています。

皮膚にも幹細胞が存在し、表皮には表皮幹細胞が、
真皮には真皮幹細胞が存在します。

皮膚の幹細胞が発見されたのは2001年のことで
比較的新しい知見であると言えます。

皮膚の幹細胞は、通常は休止した状態で待機していますが
皮膚の細胞が死滅するなどして減少すると
分裂して分化することで新しい皮膚の細胞を供給(補給)
する働きがあります。

そのため皮膚の再生力に大きくかかわっており
若々しい肌を保つためには
この幹細胞の数と活性を維持することが大切です。

年齢とともに幹細胞の数は減少し、
細胞の活性も衰えてきます。

したがって、幹細胞から供給される
若々しい細胞の数が減っていくので
エイジングケアにはとても重要な細胞です。

(次回につづく)

前回オススメ書籍としてご紹介した吉木伸子先生著の

「スキンケア美容医学事典」ですが

ちょっと、「ん?」という記述がありました。


それは、セラミド美容液の選び方で、

「本当のセラミドを見分けるには」ということで

「『セラミド2』のようにうしろに数字がついているものを選ぶのが正解です

(2,3,10の3タイプが通常化粧品に使われているセラミドです)。」

という記述があります。


確かに選び方や本当のセラミドの見分け方は正しいのですが

通常化粧品に使用されているセラミドは、1,2,3,6IIです。


セラミド10というのは存在しないわけではありませんが

とてもレアなケースです。私は見たことがありません。


また私の製品では上記の1,2,3,6IIを使用していますが

セラミド1も高価なので、あまり使用されていないかもしれません。


また、セラミドを販売している原料メーカーさんの中には

セラミド4,5や7などを開発して販売を開始しているところがあるようです。

使ってみたいと思うのですが、まだまだお値段や供給体制や

プレミクスチャーの形で作られている場合の他の成分など

満足いくものがないので、私自身はまだ使用には至っていません。


また、セラミドの脂肪酸部分が短くて生理活性をもったものもあります。

これは表記はセラミドのあとに数字ではなく、

セラミドのあとにNS、EOSなどのアルファベット2文字または3文字で表記されています。


話を戻しますと、吉木先生ともあろうお方がなぜ

このような間違いを書いているかわかりませんが

岡部美代治さんと書かれた「正しいスキンケア事典」では、

セラミド1,2,3が大切と書いておられるので不思議です。


しかし、もっとびっくりしたのは、

ネットで検索すると、セラミド2,3,10が

化粧品で一般的に使用されているセラミドであるとの記述をしている

ウェブサイトがあったのです。

吉木先生の本を読んで書いたのかどうかわかりませんが

そうだとしたら、間違っているかどうか判断せずに

そのまま記述を転記したことになります。


専門家でない人がウェブサイトで情報を載せる場合に

情報元の間違った記述をそのまま載せてしまう危険があります。


インターネットで得られる情報は便利ですが

常に正しいかどうかは疑問です。

皆さんも気をつけて下さいね。


さて、もう1冊オススメの本をご紹介します。


トコトンやさしい 化粧品の本 福井寛著 日刊工業社


この本は、資生堂の研究員をされていた方が書いた本ですが

内容は決して「トコトンやさしい」とはいかないと思います。

でも、とても真面目に、詳しく広範囲に化粧品のことが書かれた本です。

ちょっと難しいけれどもとても参考になるのではないでしょうか。