古都ブルンネンシュティグは非常な賑わいにあった。
一晩石畳の上でこわばった体をほぐし、ようやく路地裏から通りに出たツクイミは夜に始めて訪れたときとのあまりに違う光景に圧倒された。
どこもかしこも人、人、人。
それもう溢れんばかりに、いや、実際溢れていた。
主だった通りの両脇は所狭しと露店が立ち並び、その間をわっさわっさと種々様々な人々が行きかっている。
少し狭い通路でさえも、そう。
果ては街に店を構える商店の領域に踏み入り、それでもなおスペースが足りず、街外まで露店がでているのだからすさまじい。
もはやお祭り騒ぎである。
だが、別段古都で祭事が行われているというわけではない。なのに、ここしばらくは連日のごとくこんな騒ぎなのだ。
古都を賑わす人々の大半は街の住人ですらない。
屈強な戦士、しなやかな槍使い、物憂げな魔術師、厳しい顔の聖職者、楽士の如き獣使い、煌びやかな幼姫、妖艶な鞭使いなどなど。
性別も年齢もてんでばらばらな、彼らは、しかし、一つ大きな共通点を持っているのだった。
それは、目的。
まぁ、集まったいくらかの人間はこの騒ぎに乗じてうまい商売にありつこうとしているものもいるようだが。露店を出しているものがいい例だろう。
しかし、それをさしひいてもいずれも武の一芸、魔術技能、支援技能に優れた者たち。そんな彼らが競い合うように求めるものとは何であろう。
そもそも、何故ブルンネンシュティグなのだろうか?
その答えは、空から降ってきた。
幾羽もの灰色の鳥が忙しく飛び回りながら落としていくのは、何かが印刷された上質の封筒。
ひらひらと舞い降りてくる封筒を、待ってましたとばかりに通行人たちが掴み取っていく。着地点では、それをめぐって争いまで起こる有様だ。
ご丁寧に押印のされた封付の封筒を手にしたものは、嬉々として内封の手紙を読み始める。
ツクイミも、ちょうど中央広場を渡っていく最中に現場に出くわし、運よく目の前に来た封書を掠め取るように手に入れ、騒ぐ群衆を横目に噴水の縁に腰掛けて封を開けた。
中に入っていたものは一枚の手紙。
滑らかな上質紙の感触に驚きながらも取り出して読んでみれば、そこにはこんな内容が書かれていた。
“現在、神の御石【RED STONE】の情報を集めている。
そのため、手足となって動いてくれる冒険家を募集している。この手紙を受け取ったものはその資格を得た”
――REDSTONE――
それこそ、まさにツクイミの求めるものであり、街を埋め尽くす冒険形の求めるものに他ならない。
さりげなく目を走らせて見れば、どの冒険家たちも、手紙に通した目をらんらんと輝かせている。おそらく、傍から見れば自分も大差ないに違いない。
噴水に冷やされた通り風を背に受け、心を落ち着かせようと試みる。
どうやら、雇い主はREDSOTNE探しを仕事を名目にしているようだが、怪しいものだ。
だがしかしなんにせよ、REDSTONEを探すのには手掛かりと、足がかりになるものが必要となることには違いない。
組織という後ろ盾を失った自分には代わりが欲しい。
血眼でREDSTONEを探すライバルを出し抜くには、少しでも自分を有利な立場に置かなくては。それは、他のものたちも同様に思っているだろう。
だから、ここに集まっているのだ。
とにもかくにも、少なくとも自分は取っ掛かりとなるものを得る機会を得た。
焦燥感に急く気持ちを抑えるように、ツクイミはぺろりと唇をなめて咳払いを一つ。
封筒を懐にしまいこみ静かに立ち上がると、ツクイミは手紙に書かれた場所、―古都においてひときわ目立つ白い建築物がそうだろう―へと足を向けた。
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およそ一名に好評であったがために、続きを書きました。
正直、先の話だけでは面白みも何もあったものじゃなかったと思いますけどネ!
そんなこんなで、メインクエスト1開始。
って、おい!
ストーリーにそって長々とレッドストーンを語るつもりなのかー!?
(いいえ。
そもそも、続けられるのか。
長々とした文章。どこか強調するかして見やすくしたほうがいいですかね?