子どものセラピ-で、粘土細工があった。


お父さんとお母さんが働いていて、平日は

おばあちゃんが側にいる。


粘土で好きなもの作っていいよ。

言われた女の子は、それは、それは丁寧に

まぁるいピザを作った。


丸まった海老が可愛い。

とろけたチ-ズは難しいと言いながら。


色を塗りあげたピザは、ディスプレイに欲しい

と、お店から言われそうなほど美味しそうだった。


休日に両親と出掛け食事をする。

それが女の子の大好きな時間。


「このピザ、おばあちゃんにあげるの」

自分が楽しかった時間を祖母にもお裾分け。


愛情に満たされているひとは、その愛情を

周りのひとに手渡せる。


親に、家族に愛されていると、すべてを愛さず

にはいられなくなるように。











日々活動的に過ごしているAくんは、

暖色系を好んで使う。


どちらかといえば、ふさぎこみがちな

Bさんの絵は、水色と青が強かった。


二枚は、とても対照的な色彩だった。


そういえば、以前、青い背景、水中に

沈んでいくような白い百合を描いたひ

とがいた。


静的。時間が止まっているような。

そして、寂しげな花だと感じていたの

は私だけだろうか。


決めつけはできないが、男性が描きやすいような気もす

るのが、丸い頭に棒のような身体に手足のスティック人間。


私は、このスティック人間を描かれると、一瞬戸惑う。

人間不信なのか、対人関係で疲れているのか、それとも

特別な意味はないのか。


たいていは、

「絵描くのは苦手なんですよ」

こう言う人が、ちゃっちゃっと簡単にスティク人間を描くだろ

うか。


対人関係を得意とする、集団を統一する役職の男性がこの

人間を描いた時には、

「たくさんのひとをまとめる日常に、ひとりひとりを見つめている

気持ちの余裕がなく、みんなひとくくりで見てしまっているのか

なぁ」

などと思った。





絵を描いている女性から、

「前回描いた絵のことですが、自分なりに

考えて、こんな意味があったのかなと」

描き終えた後でも絵と向き合っていた様子を

伝えてくれるメ-ルをもらった。


嬉しい。


彼女、少しずつ、目標に向かい動き出している。




大学生の青年が、樹木に咲く花を描いた。

「大樹に花が咲いている、いいなぁ」

と見ていた。


そして私は、彼が付き合っている彼女のことを

思った。


付き合って二年、春になれば三年目に入る。


「このあと、ホワイトデ-のお返し買いに行く」

言いながら帰って行った彼は、穏やかで優しい

雰囲気いっぱいだった。


描き方も優しかった。

一色、一色、大切そうに塗っていた。


彼は、彼女との関係を通して、他者に向ける優しさ

をたくさん覚えたようだと、その絵から感じた。


この彼には心理的問題は、いまはない。

大学生活をとても楽しんでいる。


抱えていた問題も、彼女の支えで乗り越えていた。