~第十八章 育まれる愛⑨~




あれからまた時間が過ぎ

冬の足音が聞こえ始める頃

ウンジェの中の新しい命は

臨月を迎えようとしていた



もうすぐ・・会えるという期待

ずっとお腹にいる愛する子供に

早く会いたかった



初めての経験の恐怖

想像がつかない出産

不安で勉強すればするほど

恐怖も大きくなっていった



そして

親になるための心の準備



何もかもはじめての二人には

このお腹が大きくなると同時に

さまざまな想いが胸中にうずまいていた

それでも

1番に願うのは無事に生まれてきてくれること

それだけ

シヌは不規則な仕事にも関わらず

まめに連絡をとっては

ウンジェの体調を気遣っていた



それなのに



「え・・・?入院した?」



それはミニョからの電話だった

動転していた気持ちを落ち着かせようにも

方法が見当たらない

シヌは大きくなる声をテギョンに注意されながら

ミニョからの返事を急いだ



「どこ?

 わかった、すぐいく」


「どうした?」


「テギョン・・・

 ウンジェが破水したって

 陣痛がはじまってるって・・・」



予想していたよりも早い段階だったため

シヌは動揺を隠せないようだった

先生の予想とも・・育児雑誌とも違う

こういうときは怖いほど

自分の思考回路がマイナスへと進んでいく

その様子を見て

テギョンは大きくため息をつくと

メンバーを呼び寄せた



「ん?ひょん、どうしたの?」


「子供が生まれそう・・らしい」


「よし!!皆で行こう!!」


「おい・・・ジェルミ

 収録を皆ですっぽかすのかよ」



ミナムが大きくため息をつくと

だって!!赤ちゃん生まれるのに!!

と大きな声で言いかけたところで

テギョンに口を押さえられた



「このバカ!!」


「ごめん・・・」


「俺達は残って

 ラジオの収録するから

 お前は言って来い

 責任はすべて俺が取ってやる」


「わるい・・・」


「勘違いするな

 お前のためじゃない・・・子供のためだ」



テギョンはそういうと

シヌの背中を押して楽屋を出て行った

まったく素直じゃないな・・

ミナムもそういって背中を押すと

テギョンの後に続いて楽屋を出る



「ひょん・・・

 頑張って来てね!!」


「オレが・・か?」


「だって、子供は二人で育てるんだもん

 生む時も

 二人で頑張らないとでしょ?

 ちゃんと、ヌナのサポートしなきゃ!

 あーーーんなに勉強してたじゃん!w」



ジェルミはそう言って

ぎゅーーーっと抱きつくと

ばいばーい!といって楽屋を出て行った



「ありがとう・・」



シヌは急いで身支度を整えて

楽屋を後にする

あせる気持ちが足を動かし

どんどんとスピードを上げて

駐車場へと向かう

エレベーターを待ってる時間も惜しくて

階段を駆け下りていった



***




「いたい・・・っく」


「頑張ってください!!

 赤ちゃんもこんなに頑張ってます!!」



ウンジェに付っきりのミニョ

彼女の腰をさすりつつ

シヌの到着を待っていた



夜・・・1人でウンジェの赤ちゃんにと

帽子を編んでいたときに

携帯が震えた

何か・・嫌な予感がして

すぐに電話を取ると

ウンジェの震える声が聞こえた

破水しちゃった・・と

ミニョはマンションを飛び出した

電話でソンジェを呼び出して

彼女の元へと向かった


真っ暗な宿舎

リビングのソファーに横たわるウンジェ

ミニョはバスタオルを準備して

ウンジェの用意していた

入院のためのセットを持ち

ソンジェが来るのを待つ

大丈夫・・今来ますからね

安心させるように声をかけ続けた



「こんなに早いだなんて・・・

 どうしよう・・・」


「赤ちゃんはきっと

 ママと早く会いたかったんですよ 

 大丈夫です・・あ、ソンジェさん」



慌てた様子のソンジェ

そして隣には頼もしいコーディー

バンの後部座席にタオルを敷くと

ウンジェを寝かせ

車は発進した



病院に着くなり点滴をされ

子宮口の開き具合をチェックされる

まだ少しだね、と先生は言うと

また後で来ますからと部屋を出て行った



この日は満月



月の満ち欠けと連動している

とは良く言われるが

この日もお産が多いようで

先生・看護師共に忙しそうだった



その自然の力に導かれるように

ウンジェの体にも変化が訪れる

鈍い痛みを腰に感じてきた



「オンニ・・・辛いかもしれませんが

 しっかり息を吸ってください

 赤ちゃんが苦しくなっちゃいますからね」


「いっ・・・」


「はい・・吸ってください・・・今度は吐いて」



鈍い痛みが終わると

すっと体から力が抜ける

また痛みが腰を襲って

時間が経つとそれが無くなる

ゆっくりと繰り返す波

引いては押し寄せる海のように

自然の営みとリンクしてくる



「また来た・・・っく・・・・」


「はい!頑張ってください

 力まないで

 大きく呼吸をしてください!!」



ウンジェのためにと

辛い事のはずなのに

育児情報誌に目を通していたミニョ

きっとA.N.JELLの皆は

仕事の時間帯かもしれないと

両親もすぐにはこれない場合もある

自分が一番側に入れる分

彼女の力になりたいと・・・そう思っていた



「オンニ!!リラックスです!!

 息を吐いて・・・吸って・・・」


「はぁ・・・くっ・・・はぁ・・・・」



ガラッ



「ウンジェ!!」


「シヌひょん・・・

 オンニ、シヌひょんきましたよ!!」



いつもとは違う顔

苦痛に顔を歪めて・・額には汗をかき

懸命に痛みを逃がしている

駆け寄ったものの

どうしたらいいのか分からないシヌ

こういったときほど

男は無力なんだと痛感してしまった



「シヌひょん!!

 ぼっとしていないで

 ほら!!オンニの手を握ってあげてください」


「あ・・うん」


「今力んじゃダメなんです

 できるだけ

 リラックスさせてあげてください」


「わかった・・」


「シヌひょん!!

 何弱気になってるんですか!!

 もーーーダメですよ!!」



ミニョがぷんぷん怒っているのを

不思議な感じで見上げていたが

握られた手に急に力が入り

シヌは慌てて握り返した



「いたい・・・っ」


「ウンジェ・・頑張れ・・・」



月並みの言葉しかかけてやれず

その額の汗を拭うのみ

合間に水を飲ませ

痛みが来た時には腰をさする

それの繰り返ししかできない自分



それでもミニョは

うれしそうにその様子を眺めていた



「大丈夫そうですね

 私は廊下にいますから

 何かあったら呼んでくださいね」


「ミニョ・・」


「シヌひょんとウンジェオンニなら

 大丈夫ですよ♪

 では、オンニのご両親にも

 連絡しておきますので・・・あっ!!」



ミニョは思い出したかのように

ウンジェの方に駆け寄って

お腹にそっと触れた



「皆待ってるから 

 元気に出てきてね・・待ってるからね」



その慈しみに満ちた声

ウンジェはありがとうと告げると

目じりに涙を浮かべた



満月の夜

新しい命と出会うまでもう少し・・・




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