うーむ、やっぱりみんな一人称。もしくは語り手が前面に出てくる感じの文章だな。僕はずっと三人称で書いていたけれど、それだと面白くないから見直すべきかもしれない。こうなったのも翻訳モノばかり読んでいたせいだ……。


くい

労働

愛して

 

くいを打て!

トンテンカン。

もっと打て!

トンテンカン。

歌とも掛け声ともつかない怒鳴り声が作業場にこだまする。灰色の作業服に身を包んだ作業員たちが、力いっぱいくいを打ちつけている。男らしく持ち上げたハンマーは豪快にくいを打つ。だが、突如声が止み静寂が訪れた。働く男たちの熱気に包まれていた空気まで急に冷え切ったようだった。

「おい、そこ、なにやってる!?」

みんなの仕事ぶりを見ていた監督が一人の男を睨み付けて叫んだ。睨めつけられた男は怒りの叫び声に耳と心をつんざかれたが、もう心を痛めてるほどの力は残っていなかった。よく見るとその男は倒れていた。疲労ですでに立っていられず、目はうつろだった。周囲の仲間に体を支えられてなんとか立たされた男に、監督がつかつかと急ぎ足で詰め寄ってきた。

「いいか、覚えておけ。仲間と一緒に働けない怠け者は、今お前が打ってるくいと同じだ。俺たちは人間だ。人間はみんな平等だ。みんなと同じことができないやつが、不平等を生み出す。お前は迷惑をかけている!」

監督の言葉に男はうつろにうなづき、落ちていたハンマーを握った。そしてまた歌とも掛け声ともつかない怒鳴り声が始まった。作業員みんなが叫んでいた。ハンマーを打ち鳴らして。

俺たちゃ組員、仲間を愛して敵を打つ!

トンテンカン。

さあ打て打て!

トンテンカン。