第9話
「ただ…」神妙な面持ちを崩さないままハインは言う。
「願いを叶えると…世界が不幸になります」ごくごく真面目な顔で言葉をしめた。
「ねぇ…アイダ…を生きかえらせようよ…」ユミは引きつった笑いと涙を浮かべながら呟いた。
「なぁ…あんたさっきからなんだ??誰がそんなぶっ飛んだ話を信じるってんだ??俺達はそんな子供だましを信じるような…」
ケンジの言葉を遮ってイシが一歩前に出る。そして、
「世界が不幸になるって具体的には何が起こるんだい?」ハインの小さな肩をがばっと掴んだ。
「具体的に…と言われましても…ねぇ…そこはルールなのでお答えできません」きっぱりといった感じである。
ケンジは、「ふぅ…」と深いため息を吐くと胸ポケットに忍ばせていたラッキーストライクを一本取り出してくわえる。
カチッ!!カチッ!!!湿り気が酷くライターは使い物にならない。
その様子を見たイシは自分の持ってきていたターボライターを貸した。
シュボ…『まぐれ当たり』という名の煙草が赤い蛍のようにチカチカと光る。
「ふぅ…」先ほどのため息よりもさらに深いため息を吐きながら煙を燻らせるケンジの姿が妙に様になっていた。
自分を落ち着けたケンジが立ち上がった。
「何があろうと生き返らせる、それが俺の結論だ…」語気が強い。
「勿論じゃない…そんなの当たり前よ…」ユミの目にも光が戻ってきている。
ややあって、
「フフ…あいつがいないと確かに寂しいからね…」薄い笑いをイシが浮かべる。
「それでは、皆さん…ハザマツヨシサンを甦らせるという願いでよろしいんですね?」ハインが念を押すと皆こくりと頷く。
「どうやればいいんだ?」ケンジはくわえていた煙草を携帯灰皿にいれながら願いの叶え方を聞いた。
「その玉を握りながら『われ願う~』と願いを言ってください」真剣な表情でハインが答える。
間を取り、ユミと目を合わせるとどちらからと無く頷きあう。
イシとも目をあわせるとイシは少しおどけて、肩に力が入ったケンジにリラックスを促す。
いよいよ、願いを叶える空気になり、
「われ願うハザマツヨシを…」迄ケンジが言った時…突如として、
「あっ…あっ…!!ちょっと…ちょっと待ってください」と何か重要な事を思い出したかの様にハインがケンジを止めた。
ハインの顔は大慌てのどじっこのようである。