昨日で舞鶴市議会3月議会が閉会しました。私は市民病院関連予算に以下の総括討論を行った上で賛成いたしました。長くなりますが、市民病院の関連箇所を以下ご紹介します。


ポイントは以下の5点です。

①意思決定の手法と市民病院の信用失墜は大変遺憾

②医療を取り巻く環境等を勘案すると今回の経営方針転換は一定理解できる

③16億円の経営支援は可能な限り圧縮し、産婦人科・救急医療を行う市内の他病院に直接支援する等効果的な税金の使い方を検討すべき

④民間委託が本年度中に上手くいかなければ、関係者の意見をじっくり聞いて方針を再検討してほしい

⑤医師を確保するためには労働基準法を守り医師を大事にする病院だというメッセージを打ち出して再起に向けてリスタートしてみてはどうか


【総括討論】

(前略) 市民病院は昨年度を「再建元年」と位置づけ、権限・責任を負う事業管理者の設置、機構改革や委託業務の見直し等の経営再建策を策定され、年度当初は市当局の再建に向けての強い意気込みを感じ、その成果に大きな期待を寄せました。しかしながら、再建元年中に二年目を迎えることなく急性期病院としての経営を断念されるという1月の突然の方針変更には戸惑いを隠せませんでした。昨年11月には念願だった内科医二名の赴任が決まりつつあったにもかかわらず、それを断ってまで慢性期・回復期医療への特化と京都武田病院への民間委託の方針を固められたとのご説明ですが、その直後の12月議会や地元医師会等に対して充分な情報提供や意見聴取もされておらず、説明責任は充分に果たされていなかったと言わざるを得ません。そのことが、2月の京都武田病院からの委託延期の申し出の一因となっているのではないでしょうか。昭和22年から60年もの歴史を持つ市民病院の重大な方針決定にかける時間としては、あまりにも短かったと思います。平成2年には全国自治体立病院優良病院として自治大臣表彰を受けたこともある本市の誇る市民病院の信頼が失墜してしまったことを大変遺憾に感じております。 

 一方、医療を取り巻く外部環境については、医療制度改革の流れの中、病床数の削減、医療費抑制、診療報酬の改定により、全国的に小児科、産婦人科、救急医療を行う医師、病院の数が急減しており、全国の自治体においても、財政健全化に向けての不採算事業からの撤退により、この5年間で約300の自治体病院が統廃合・民間委託等によりなくなっております。儲からない小児科や産科、救急医療からどんどん医師が離れ、更に追い討ちをかけるような研修医制度の変更によって地方には医師が集まらず閉鎖を余儀なくされる病院も数多く出てきております。病院事業は国の医療行政に振り回されながら、生き残りをかけた大競争時代に入り、その多くが大変厳しい経営環境に晒され、従来行われていた世界に誇れる高度な医療サービスを安価かつ身近で維持することが難しくなってきています。

 そこで、日経メディカル2004年3月号に寄せられている市民病院の前副院長である松村理司(ただし)氏の辞職直後のコメントをご紹介させて頂きます。「東舞鶴地区は5万5千人の人口の中に、国立舞鶴病院、舞鶴共済病院、そして舞鶴市民病院の主な3病院だけでも合わせて1000床を超えるベッドがひしめく医療供給過剰地域です。病々連携などを模索することもなく、どこが落ちていくかと眺めている姿勢に、病院の先行きへの危機をいだきました。また、雇用を守る必要もあったのでしょうが、急性期病院として存続しようとするスタンスに不安を感じました。」との話をされています。20年以上に渡り市民病院に「大リーガー医制度」を導入して多くの研修医を集めるなど、多大な貢献をされた松村前副院長が、辞職当時から過当競争に巻き込まれた市民病院の危機的将来を悲観されています。また、昨年2月の日本総研による市民病院のコンサル結果において同規模の病院と比べると、コスト面では職員数が過剰で人件費が高く、診療収入も2割程度低く患者の求心力に問題があり、早急に改善するべきとの調査結果が出されています。医療機関と民間企業を同列に考える訳ではありませんが、本市における金融機関の例を挙げるまでもなく、民間企業は限られたマーケットの中で熾烈な競争を続ければ消耗戦は避けられず、最終的には統廃合を行い経営の効率性を上げることによって、収益が出る体制にして経営再建を行います。松村前副院長のコメントやコンサルのアウトプットを見れば、市内で不足している回復期・慢性期医療に特化して、過当競争を緩和して他の総合病院と機能分担・連携を行い、経営ノウハウを持つ民間医療法人に業務委託して経営効率を上げるという市の方針は一定理解できます。その前提でいくつかの提言をさせて頂きます。

 まず、1,636百万円にも上る病院事業会計経営支援補助金についてですが、市民の貴重な多額の税金を無期限に投入し続ける訳にはいきません。予算策定の前提である半年後の民間委託に大きな期待を寄せております。しかしながら、本年度中に民間医療機関との合意が難しければ、ゼロベースから市民病院の将来を考えるために、幅広く関係者や市民、市内医療機関の意見を聞く機会を設けて頂きたいと思います。市民病院にかかる今後の重大な方針決定については、地元医師会や患者、職員等関係者や幅広い市民の声をじっくりと時間をかけて地道に吸上げる努力が必要です。そうすることで市民の理解も深まり、関係者の主体性を引き出し、協働による再建につながるのではないでしょうか。長期的な視点で将来像を検討し、具体的なあるべき姿を指し示して、それに向かって市民・職員・行政が一丸となって進んでいかなければなりません。その将来像を考える際には、回復期・慢性期医療の民間委託に拘らず、幅広く将来の可能性を検討すべきだと考えています。その場で市民病院というハードをいかに上手く使って収益を上げていくかについても検討して頂きたいと思います。

 また、市民病院の職員数は予算策定の前提134名から実態は96名まで減少する予定であり、加えて市民病院での自助努力も行えば、経営支援補助金に余剰を生み出すことが可能です。現在の市内の医療環境を見回すと、3月末で舞鶴医療センターでは医師の退職により産婦人科が廃止されますし、救急医療についても市民病院の急性期からの撤退により他の総合病院に大きな負担がかかり、本市の医療サービスの低下が現実のものとなってきています。そのような状況の中で、限られた貴重な税金を最大限に有効活用していくために、補助金の余剰分については市民病院に追加投入するだけでなく、市民にとって必要不可欠な産婦人科・小児科・救急医療等を行う他病院に直接補助することにより、医師・設備の充実を支援するという手法もご検討頂きたいと思います。

 次に、医師確保についてですが、二年を超える長い時間と市長を始め関係者が多大なる労苦を費やされたにもかかわらず、残念ながら再建に必要な内科医の確保は出来ませんでした。言うまでもなく病院は医師がいなければ機能しません。今後の為に、なぜ医師が来てくれなかったのかを分析・検証願います。その点に関し、私のところには「内科医の大量辞職やその後赴任した2名の医師がすぐに退職したことで、医師を大事にしない病院との風評が医師確保を難しくしているのではないか。」という意見が多く寄せられております。そのような風評を払拭して医師を確保するためには、医師の勤務条件を労働基準法に見合った形にして、医師を大事にする病院だという強いメッセージを打ち出してみてはいかがでしょうか。今までのように連日の当直や自宅待機で長時間拘束するような、医師の献身的な努力・使命感に大きく依存した形での医療サービスの提供には自ずと限界があり持続可能なものではありません。待遇に加え労働条件を魅力あるものにすれば、現在でも医師の確保は決して難しくないと考えています。「医師をどこよりも大事にする病院」という生まれ変わったイメージを前面に打ち出すことによって、かつてのように医師が集る病院に戻れば、市民の信頼回復・再起の目も充分出てくると思っております。 (後略)