スペインの局面は激しい? | 聰志日記

スペインの局面は激しい?

こんにちは。


先日まで、静岡県のクラブユース選抜U-15という中学生のチームが、バルセロナに遠征にきていました。

そして、そのチームがエスパニョールのU-15、U-14と試合をしたので、見に行ってきたときの感想です。


日本からバルセロナに来て、何度日本のチーム対バルセロナのチームの試合を見たでしょうか。。

それは数えられるくらい少ないもので、僕は実際に日本でも指導はしていたものの、バルセロナのチームと日本のチームを単純に比べることは、実際に戦っている試合を見ないことにはできないことでした。


今回その試合を見ることができて、また新たに気づいたことや、考えることがありました。

僕も今まで、周りでもよく言われるように、

”スペインの育成年代のボール際での局面の激しさは、日本のそれよりもはるかに厳しい”、”スペインの子供はボールに行く”

といった見方は変わりませんでした。

練習から本当に激しくぶつかり合い、ボールを奪うことに関しては、非常にアグレッシブだと。

静岡との試合、静岡の選手は個人でのボール運びや、フリーの時に出すパス、そういった個人の技術は十分に高いなと思いました。

そこで、スペインのプレッシングです。

僕がこの試合で見た感想の1つに、日本の選手のほうがアプローチのタイミング、相手にボールが渡るときにはきちっと守備の準備ができている、そんな印象を持ちました。

逆にスペインの選手は、アプローチへのスタートが遅い分、どうしても、静岡の選手が持ったあとに相手に到着するイメージでした。

結果、スペインの選手が一歩不利な状況になるわけで、相手はもう仕掛けに掛かっている状況、何とかして足を出してぶつかってでも止めなければ、そんな状況になることがあるんです。

もちろん、その局面がすべてではありませんが、そんな状況が目立って見られたように感じました。

そうなると、やはり激しく見えます、スライディングしてでも止めに掛かるシーンも出てきます。

それが”激しい”と評価されているとしたら、”激しくなる”原因がそれだったら、本当にその”激しさ”は正しいのかと考えてしまいます。


ただ、それとは別の観点で、プレッシャーの中での技術に関しては、大きな差を感じました。

例えば、静岡の選手にきちっとプレスが掛かったとき、ボールを保持することはできることがあっても、そこから先に生まれるプレーには、アタックに大きな印象与えるものはありませんでした。

逆に、エスパニョールの選手に静岡の選手がプレスをかけた時は、相手のプレスを感じて、背負いながらもゲームの展開を変えるプレーができたり、体を預けながらでも決定的なパスが出てきたり、そこに大きな差は感じました。


この僕が感じた2つの点に関しては、どちらが良いのかとは言えないとは思います。

育っている環境の違いが、もろに試合に出てしまった結果でしょう。

1つ1つ的確な指導を受け、正しいプレーを個人個人が心がける日本の選手。

ただ、相手からのプレッシャーの中で、今どういうプレーをすることが1番”試合”を動かせるか、というプレーが出てきませんでした。

しかし、その中でも、相手が困るだけの正しいプレッシングなど、1vs1などの小さな局面でのプレーには攻守において光るものがありました。

そして常にサッカー全体の中で、正しさや細かさよりもまず”試合”を覚えていくスペイン。

プレスが遅れてアフター気味のプレーも多いことながら、危険な状況は何が何でも止めたり、相手のプレッシングがかかる中でも冷静に1番有効な所へと運ぼうとするプレーが目立っていました。

”試合中”に今何をしなくてはならないのかが分かっているように感じました。


どちらの、良さも悪さもわかりやすく引き立っていた試合になったように、僕には思えました。

何を優先順位の先頭において指導するのが1番なのかは、両者を見ている僕にはわかりません。

結果は2試合ともエスパニョールの勝利でしたが、内容をみると、光っている部分、改善しなくてはいけない部分は両者に十分あるわけです。

もしも、日本の選手がこの試合の中で、エスパニョールの4-2-3-1相手に、4-4-2で接した時にどうウィークポイントが出てしまうとか、どうしたら人を引きずり出されずに済むかなどのアイデアがあったら、より拮抗した結果が見れたかもしれません。

中盤でエスパニョールが数的優位を作って、完全に支配した時間帯はそう思わざるを得ませんでした。

逆に静岡の選手が瞬発的なターンで相手を完全に突破した時、エスパニョールの選手がきちっと相手について行けるだけの準備やステップが踏めたら、より楽な試合になっただろうとも思いました。


結果ほどの歴然とした差ではありませんでした。

ただ、両者の違いは極端で、本当に興味深い試合になったと思います。

今、僕はこの地で”サッカー”を学んでいます。

今、僕はいつ日本に帰っても”サッカー”を指導できたら最高だと思っています。

自分が住んで、学んでいることで、何が良いというよりも、新しい日本にいた頃の自分にはなかったものをぶつけてみたい感情はあります。

正しいかどうかはわかりません。

しかし、11vs11の中に本当に”サッカー”はあるんだと、今は思っています。

11人で戦う僕たちに対して、目の前には相手も11人いるんです。

それがサッカーなのかなって今は思っています。


何が正しいかはわかりません。

でも、今の僕の中での”サッカー”はそれが1番です。


本当は何なんでしょう?

こんなことを考えるきっかけになった素晴らしい試合に感謝したいと思います。