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最初は前後篇というので

二の足を踏んでいたけれど

映画としてもそうする意味があり

前篇「動機」~ 後篇「行動」

と別のサブタイトルをつけていいほど

わかりやすく物語に引き込まれて行ったのです。


宮部みゆきさんのベストセラーを

「八日目の?」で

日本アカデミー賞など多数の映画賞を受賞した

成島出監督が映画化した

「ソロモンの偽証」


前篇3・7 後篇4・11 公開


雪深い朝

中学校の裏庭でひとりの男子生徒の死体が見つかる。


自殺とみなされたのち、殺人を目撃したという

匿名の告発状が数名のところへ届く。


告発状が届く主人公、藤野涼子は、刑事の娘。


父親譲りからか、正義感に溢れているものの

いじめを目撃しても自分がいじめられる考え

仲裁に入れずに、結果、心を痛める繊細な感情の持ち主。


容疑者になっている少年は

学校一のワルで、父親は地元の権力者で横暴な男。


この作品の興味深いところは

子供達の性格を表現する手法として

しっかりとそれぞれの家庭環境を

親との関係で見せていくところ。


なぜ、この子がこんなにまで真実を求めるのか?


なぜ、この子がこんなに暴力的なのか?


なぜ、この子がこんなに卑屈なのか?


なぜ、この子がこんなに優しすぎるのか?


そこから、学校内裁判を生徒たちが立ち上げ

事件の真相が明らかになってくる。


いじめっ子、いじめられっ子

見て見ないふりをする子、かばおうとする子。


それぞれの精神状態が

あまりにリアルで、時に身の毛もよだつほどで

時に涙を誘うものになっているのです。


当時

心理カウンセリング学校での研修時

子供の「いじめ」の心理を学びながら

アメリカで実際に虐待された子供達の施設へ

行ったことがありました。


愛されたくて、守って欲しくて

子供はいろんなアクションを起こす。


大人に暴力を振るわれたから

暴力で気を引いてしまう子。


友達を傷つける言葉をわざと吐いたり

友達を困らせたりする裏側に

実はどこまで自分を愛しているか試してしまう子。


自分のコンプレックスである部分の

反対である憧れの子と友達になれたから

その子の悪いところに蓋をして

”愛したい” ”近くにいられるなら”

と全てを許してしまう子。


こんな人の弱さを見抜いて物語にした

宮部みゆきさんであり、

それを演出で

見事なまでに表情や言葉、態度で表現した

成島出監督は

なにかしらの過去の経験で感じ取ったものがない限り

この映画がここまで心臓を貫く作品にはならなかったと

思うのです。


あるシーンで

「これはお互いにとって重要なゲーム」

という言葉が、ひとりの中学生の口から出てきます。


人は、人間関係の中で

ゲームを仕掛ける側と仕掛けられる側が

生まれてしまう交流関係もある。


人の弱さが生んだ、強者に立ちたい心理。


オーディションで選ばれた中学生役33名の目も

それこそ、どこかに潜む”弱い自分”に気づき始めた

リアル世代だからこその力強さな気がしました。


そして未来に光があるから見て欲しい作品。