授業も終わり、サークルへ行こうとしたが、

彼女とあれだけの話をした後だ…気まずいから帰ることにした。



確かに、彼女の言うことは一般的であり、常識的。

だけど、まぁ、僕は、世の中というものをまだまだ知らないが、

そんな常識や一般論だけで生きていける世の中でもないだろ。

特に人の感情なんて常識じゃだけでどうこうできるものじゃないし、

それだけに当てはまるものでもない…。

僕みたいに、家族が好きになる人間だって

沢山いるはず…それが、妹だったり、兄、弟かもしれないし、

もしかしたら、母親、父親だっているかもしれない。

僕が姉さんを好きになったってだけさ……。



でも、確かに姉さんからすれば、どうなんだろう。

彼女に言われるまで、あまり意識しなかったことだ。

でも、キスまでしてくれた……姉さんが、

好きでもないのにキスなんてするはずがない…。

なら僕のことが好きである。

じゃあ、その好きっていうのは…家族的なものなのか、

恋愛的なものなのか…。

はぁ、嫌になるね、家族…これさえ取っ払えば…。

姉さんがこの一線を越えてくれればいいのに…。



そして、それは訪れた。



その夜、姉さんの帰りが遅かった。

いつもなら7から、遅くても8時過ぎになるのだが、

その時刻になっても帰ってこなかった。

それは、心配になる。

事故や事件に巻き込まれたんじゃないのか?

珍しく、母さんと話した…なんだか皮肉。

そして、姉さんが帰ってきた。


「姉さん!?」


「ただいま圭君…私、酔ってるみたい」


どうやら、仕事の飲み会があったようだった。

僕はホッとした…、確かに事件、事故というのも

懸念したが、それよりも、まさか姉さんに


……好きな人でもできて……


ということが頭をよぎったんだ。

それからの僕はそわそわしっぱなしだった。

けど、飲み会…あぁ、良かった。



「ねぇ、姉さんを部屋まで連れてってくれるかな、

ふらふらしちゃって歩けないわ」


「あぁ、いいよ…そんな、無理して飲むから」


「私、もう少しお酒に強いかなって思ったのよ」


「僕、姉さんが酒のんでるの、見たことないけど」


「そうなのよ…私、あまり、飲んだことなかったの」


僕は姉さんと肩を組んで、部屋までおくる。


「ハハハハッ、何それ?」


「なんとなく、飲めるような気がしたのね、

全然だめだったわ」


「ば~か」


「ひど~い。でもよかったじゃない、

お姉さんとこんな接近できて」


「えっ?」


部屋に入ると、そう言われて僕ははっとなった。

すると、姉さんが急に腕に力を入れて、僕はなすがままになり、

上向きに押し倒された。

姉さんが覆いかぶさるように倒れてきた。

一瞬のことで何が起こったか理解できない。

姉さんが僕の上にいる。

目が合う……僕は緊張して、横を向いて逸らした。


「ねぇ、こっち見てよ」


そう言われて顔をもどすと

姉さんの顔がすぐそこにあり、

唇が重なる……。

一瞬?数秒?わからないけど、

随分と長いような短いような時間が過ぎる。

あっ……姉さんが



泣いていた。



「ば~か」



姉さんはそういって眠ってしまった。


……はぁ、酒のせいで、

ヘリオトロープの香水が台無しだ。


僕は、姉さんをベッドの上に寝かせて、

部屋をでる…頭がボーっとする。

僕も酔ったかな?

何に?……姉さんの唇に。

そんな気障なことを考えて僕も寝た。

心地よい眠りにつけた。