ヘリオトロープ。
夢中、僕は姉さんに夢中。
姉さんに甘いバニラの香り付けをして、
その甘さに酔いしれたい。
それよりも、僕の姉さんだと…これは顕示欲。
僕は堕ちる…どこまでも堕ちて行く。
「姉さん、香水はつける?」
「私?あまりつけないわ」
「つけてみれば?僕が選ぶよ」
「ほんとに?」
「とっておきのがあるんだ」
「へぇ、それは楽しみね、いったいどんな香りなのかしら?」
店につくといろんな香りにあふれている。
僕の心もこんな風に溢れている。
香水のガラス瓶はキラキラと輝いている。
僕の心も今輝いている。
シトラス、、シプレ、フローラル……
ベルガモット、金木犀、ローズ…あった、あった、ヘリオトロープ。
「ヘリオトロープ」
「まぁ、圭君は読書サークルだったわね」
「さすが姉さん。もうわかっちゃった?」
「当然です」
「この香りはどう?」
「甘い香り…いいわ、これにしましょうか」
「ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ」
姉さんからヘリオトロープの甘い香りが漂ってくる。
僕はもう、その香りに酔いしれた。
姉さんに酔いしれた。
運命は残酷だね。
なんで、僕は僕で、姉さんは僕の姉さんなんだろう。
ちょっと変えれば、もう他人だけど、他人なら縛られることがない。
いや、縛られるとしたら、僕の恋人か。
そう、僕たちは姉弟という、家族という言葉に縛られている。
だれだって、何かに縛られている。
一回縛られたら、なかなか解けるものじゃない。
漢字を読み間違えた人。
秘書が逮捕された人。
年金払ってなかった人。
不適切な発言をした人。
縛られる、縛られる。じゃあ、どうすればいい?
縛られてるのを忘れてしまえばいい。
どっかの総理だって、縛られても囚われてない。
僕だっていいじゃないか、姉弟なんて縛りを忘れてしまおう。
堕ちる、僕はどこまでも堕ちる。
「姉さん」
そう、これで僕は一線を越える。
もう、戻れない。戻りたくない。
姉さんにキスをする。
「だ~め」
こばまれた…。
「その先は……圭君の誕生日かな?」
「焦らすね」
「忘れないで………私たちは姉妹なのよ」
運命は残酷だね