「禁断の恋ってやつだな」


「不破!!」


「ずいぶんと面白い話になってきてるじゃないか。

そろそろ、俺も混ぜてほしいな」


「今ね、社会を捨てろっていう話をしていたのよ」


「そうだろうね、結局、榎木大先生には、この社会は会わない

ってことですなぁ」


「大げさにいってるけど、用は常識に囚われるなってことよ。

本来なら、姉と弟で恋愛なんてしちゃいけないわ。

社会がそれを認めないんですもの。

でもね、そんなのいちいち全部チェックしてるわけでもないでしょ。

今よくある、籍をいれない結婚みたいなものよ。

それが、恋人か姉弟か、見てわかる人なんていないでしょ。

それで、ずっと二人一緒に暮らしていっても問題ないじゃない」


「たしかに…」


「でも、間違いだけは起こすなよ。それは、問題だからな」


「間違い?…・……わかってるって」


僕は顔を赤く染めてそういった。


「じゃあ、榎くんの目標は、お姉さんをおとすことね」


「こりゃぁ、難しいぜ!!難攻不落の城を攻めるようなものだ」


「私、あなたのお姉さんに会ってみたくなっちゃったわ」


「えっ!?」


「会えば、何かわかるかもしれないじゃない」


「確か、新宿のアクセサリーショップだったな?」


「そう」


「じゃあ、今度そこへ行こう。そのとき、ついでに令奈の

指輪も買ってあげようじゃないか」


「私はついでなの?」


「あぁ、ごめんごめん、そっちが本命さ」


そういって、みんな笑った。


そのときだった、僕はなんとなく外を眺めようとしたのだが、

その視界に知っている人が目に入った…。


今井加代子!


まさか、ここで目にするとは思ってなかったのでビックリした。

彼女は友人と食事しているようだった。

まぁ、しかし、学食はここともう1箇所しか無いので

学食で食事するのであれば、会う可能性は高いのである。

彼女を含めて3人いる。

不破と令奈さんの斜め後ろの方のテーブルになるので

二人とも気づいていない。

また、彼女も僕のことに気づいていない…と思う。

ふと、話が聞かれてたらどうしようと、不安になった。

別に、彼女に聞かれても問題ないのだが…何故か

心配になってきた。何故だかはわからない…。

すると、彼女の方から話し声が聞こえてきた。

人間意識すると、その音が聞こえてくるというのはほんとだ…。

でも、逆に気づかれていたら、こっちの話し声も聞こえていたことになる…。

とにかく、今は向こうの話に集中することにした。


「将来さ~、何になるとか考えてる~?」


「私は、アパレル関係に行きたいかな~って」


どうやら、就職の話をしているようだった。

彼女は、何になりたいんだ、何故かきになった。


「おい!榎!どうした?」


「ん!あぁ!ごめん、ボーっとしてた」


「おいおい、君の話をしてるんだぜ」


「すまん」


「でもさ~、完全に社会を捨てるなんてできるかなぁ」


「ん、それは難しいな、俺も完全に捨てるとなると

どうすればいいのか思いつかない。

結局、この世界にいる以上はなにかしら、

社会に縛られていかないといけないからな。

ほら…金銭面のこととか…まてよ、

でも、社会とのつながりって結局金じゃないのか?

税金を払わなければ、もう、それでお払い箱だ。

金の切れ目が縁の切れ目なんていうが、

それは、個人と社会のこと言ってたりしてな…。

榎どう思う?これから、社会から少し離れようとする

君の意見を聞きたいものだ」


「あぁ、僕もどう意見さ。

結局、どんなに社会から遠ざかろうとしても、

金や土地がある限り、社会とのつながりがある。

それを断ち切るには、

家も金も財産すべてすてなきゃいけないのかもな。

う~ん、出家とか…」


「出家!いいね、確かに宗教的なことは

脱社会的なことに思える。

でも、俺には無理だな。禁欲の世界なんて…」


「いや、まて!どちらにしろ君には無理だよ」


「おっ、なんでだ?」


「女遊びする以上は社会とのつながりがないと無理だ」


「フフッ、そうね、榎くんの言うとおりだわ」


「皮肉か、榎」


また、笑い声が響く



「ねぇ、加代子は何になりたいの?」


「えっ、私!?」


「あっ、それ気になる~!加代子は頭いいから、

理想たかそうだよね~」


「私は……」


どうやら、いい具合のところで向こうの話を聞くことができたようだった。