とは言っても、どうせ後で全部

不破に話されるのだろう…そうわかっているが、

気分的な問題である。



「僕は姉さんと離れたくない。

どうすれば、いいと思う?」


「ずいぶんと率直に言うのね…。

難しいわねぇ、それは。まずは、整理しましょう。

あなたとお姉さんは姉弟であり、親子のようなものであると。

で、ずっと仲良くいままでしてきたと…。

まず、親子の関係で見た場合、

一般的には離れたくないのだろうけど、

自立して一人前になってほしいものだと思うのよ。

あなたの場合、一人前にはなったのだろうけど、

自立という点ではまだまだよね…」


「自立っていうと?」


「そうねぇ、自分でお仕事したり、一人暮らししたり、

社会的に認められるようになることが自立よね」


「実は、僕は早く社会に出たいと思ってるんだ。

まぁ、理由は別にあるんだが。

でも、僕はまだ学生じゃないか…なにか無いかな?」


「う~ん、そうねぇ、アルバイトでもしてみれば?」


「アルバイト?」


「あれって、一種の社会経験みたいなものだから、

お金も稼げるし、いいんじゃないの?」


「あぁ、それはいいかもしれない!ありがとう」


「話は戻るけど、自立して欲しいってことは

離れていって欲しいってことよ。

好きだけど離れていって欲しい…これが

親ってものなのよ。

道義心っていえば、これが親に対しての道義心よね。

そして、自分の稼ぎで親孝行するのよ。」


「なるほど…それは考えたことがなかったな」


「そう自立を促すような話は?」


「まったく」


「なら、まだ心の中にあるのか、

もしくは……離れたくないのかもしれないわねぇ」


「ほんとに!?」


「えぇ…でも、そこはわからないわ…。

で、次は姉弟としての関係ね…どうなのかしら。

仮に私の弟がずっと一緒にいたい…なんて言ったら怒るわ。

なに言ってんの!!って。

どれだけ、仲良くても、やっぱ、あなた自立しなさい!

って言うもの…」


「……そうか。じゃあ、無理なのかな」


「でも、それは私の性格だからよ。

あなたのお姉さんはとても優しいんでしょ。

きっと、あなたが離れたくないのをわかってるのかもしれないわ。

それで……」


そうかもしれなかった。

僕は、姉さんに「当分、ここにいるから」

と言われて浮かれていたが、僕に気を使ってくれて

いたのかもしれない…と思った。


「じゃあ!どうすれば!!」


「いい!まず、この社会だと限界があるのよ。

家族である以上、姉弟である以上、

あなたはお姉さんから離れなくちゃいけないの。

どんなに、道義心を尽くしても、

どんなに、仲良くても、仕様がないのよ」


わかっている…認めたくは無かったが、

いずれ離れないといけない…ということは

わかっているんだ。

でも、ならどうすればいい!

僕は姉さんから離れたくない。

離れてしまったら、僕が失われてしまうんだ!

社会は僕が僕であることを許してくれないのか!

一個人の感情、個性など、

社会は必要としていないということか!

社会は結局、個人に還元されると思っていたが、

それは違ったようだ、結局個人は個人で社会は社会なのだ。

個人個人が社会を作っているのではなく、

社会があって個人があるのだ。

結局、社会なんてものは幻想にすぎないんじゃないか!

ふざけている!僕はどうすればいいんだ


「どうすればいいんですか?」


「そうね…社会を捨てるの」


「えっ!?社会を捨てる?」


「結局いまの関係じゃお姉さんはとどめておけないのよ」


それは、先日理解したことだった


「それでね、お姉さんをとどめておくにはね…」


「とどめておくには…」


「あなたと好きになってもらうのよ」


「どういうこと?」


「だから、おねえさんがあなたに恋すればいいんじゃないの?」


……………それは、今まで考えたことのない結論だった。