僕はなんであんなことを言ってしまったんだ。

わからない…しかし、無意識に出た言葉…

あれは、僕の意思…なのだろう…な。

なにか気持ちが高ぶっている。

当分…どのくらいなのだろうか。

姉さんがそう言ってくれたのはとても嬉しかったが、

当分という時間が…やけに短く感じられた。



学校へ向かう途中ずっと考える。

一つ気づいたことがあった。

そう、また距離感の話になってしまうが、

さっき言ったことは…あれは僕の意思…。

あの言葉により、姉さんが離れていくのを

とどめられたような気がする。

ということは、あれは、僕だけの意思ではなく、

姉さんの意思でもあるのだろうか…。

もし仮に、姉さんも離れたくないと思っていたら

…もし、そう思っていたら…

これほど嬉しいことは無い。



おそらく、この感情は家族的な、

親と子の感情に違いない…当然のことだ。

親は子から、子は親から離れたくないのだ。

でも、社会がある、

社会はその関係を否応無しに離れさせる。

社会に出れば、忙しさに翻弄させられ、

親子関係も薄くなってくる…。

僕は、社会が憎らしくなってきた。

少し違うのは、それが姉と弟というところであって、

親というよりは、育ての親なところである。

だから、そこに道義心が生まれる。

育ててくれた感謝の気持ち。

だから、僕は姉さんに尽くす…尽くしてきた。

姉さんはそれで喜んでくれた。

で、今、姉さんが社会にでたことにより、

お互いが離れつつある…。

どうしても離れたくない…話は戻るが

これは親子の感情……である。

これは当然じゃないか!それ以上もそれ以下もない。

そう思い、僕はどこか安心した。



で、もう一つパターンがあって、

そう、あれは僕の姉さんへの意思だった。

なので、僕が姉さんに近づいたから、

離れていないように感じたのである。

ということは…、考えていて今気づいたのだが、

社会にでるとか、そんな回りくどいことをしなくても、

僕が姉さんへの積極的な意思を持てば、

姉さんとは離れない…寧ろ近づいていくのだ。

その積極的な意思…それは、道義心か?

わからないな…。



電車に乗った。

ゆらゆら揺らされる。

姉さんも毎日、

こんな混んだ電車に乗っているのだろう。

それは、仕事のためである。

僕なんかは気楽なものだな…そう思うと、

早く社会に出たいような気持ちになった。

そうすれば、姉さんに近づけるんだ…。



電車が降りる駅についた。

降りて改札を出ると、そこには不破がいた。




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